今どき感が凝縮されたヒロイン
去年の夏、ネットMySpaceからブレイクしたリリー・アレン(21)。アークティック・モンキーズと違って、そこはかとなくマーケティング臭が漂うが、とにかく、シングル「スマイル」は長らく1位を独占していた。日・豪のライブは大成功で、米ツアーも無事終了した。
同曲が収録された「オールライト、スティル」は、こちらのマスコミに言わせれば「10代のロンドン・ライフを歌ったウィットあるスカ調のアルバム」。透明感、脱力感のあるボーカルは耳心地いいが、日本の女性シンガーの方が技術面では上をいく。スカとは違うが、テイ・トウワやピチカート・ファイブを野暮ったくした印象か。初期の東京のクラブでかかっていたような音だ。「リリー・アレン好き」と言っても恥ずかしくない程度に、あざとさ=キャッチーさを控えているが、ガールズアラウドやシュガーベイブとの差は薄皮一枚分。彼氏がどうのこうのといったご託を並べたたわいない詞を、ウィットに富んでいると言われても困る。これじゃあ小学生の作文程度だ。
父はコメディ俳優のキース・アレン、叔父のケビンは映画監督、母アリソン・オーウェンは映画プロデューサー。13歳でクスリを覚え、15でディーラー、鬱病で有名クリニックのプライオリーに入院したのは18の時と、典型的ミドル・クラスの不良娘リリー。ポニーテールにパーカー、プロム・ドレス、スニーカーの現代版グリースな格好がダサかわいい。口の悪さは女ギャラガー並で、ボブ・ゲルドフは「殊勝ぶった間抜け」、Sクラブ7やステップスは「クソ」と身も蓋もない。
先月の「ブリッツ・アワード」では4部門ノミネートされて、結果はゼロ受賞。話題性ばかりじゃ、タフなポップス界では生き残れない。