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Sun, 24 November 2024

第46回 赤は「止まれ」、緑は「進行」の由来

トリニティ・ハウス
トリニティ・ハウスは大海原に灯台の光明を発し続けてきた

ロンドン塔の北側にトリニティ・ハウスという瀟洒(しょうしゃ)な建物があります。ここはイングランド、ウェールズ、チャンネル諸島、ジブラルタルの灯台や航海標識などの海洋設備を管理する公共機関で、英国に寄港する商業船舶に課 せられる「灯台税」で運営されています。テムズ河の船乗りの無法者を統制する組合から発祥し、1514年にヘ ンリー8世の勅命を受けて以降、七つの海を制覇する海洋国家を500年以上も舞台裏から支えてきました。

船の左舷に赤灯の点灯義務
船の左舷に赤灯の点灯義務

ここから少し歩けばテムズ河です。シティに灯台はありませんが、見れば河を往く船は右舷に緑灯、中央に白色灯、左舷に赤灯を点けて航行しています。蒸気船の衝突事故が相次いだ1840年代、トリニティ・ハウスが慣習法に基づいて法案を作り、蒸気船の右側優先通行や右舷に緑灯、左舷に赤灯、中央に白色灯の点灯義務を全国に法令化させたのです。この点灯が海上交通における信号の役割を果たしていることは言うまでもありません。

右舷に緑灯の点灯義務
右舷に緑灯の点灯義務

もし、夜の海で右方向から船が横切ろうとすれば相手の赤灯が見えるので停止して進路を譲る。左方向から近づくと緑灯が見えるので、自分が注意しながら進行する。もし、赤灯が右、緑灯が左、白色灯が中央に見えたら、正面衝突するから互いに進路を右に切れ、という規則です。これは国際海上衝突予防規則として現在も有効な条約です。空を飛ぶ飛行機の翼にも20世紀半ばの国際民間航空条約で、船と同様の航法灯規制が採用されました。

ウェストミンスターの交差点
ウェストミンスターの交差点の信号もさかのぼればトリニティ・ハウス

一方、1830年に誕生した鉄道は、赤=停止、白=進行、緑=注意、の看板で出来た信号を使っていました。衝突事故が増えると、1841年、ロンドン-クロイドン間で腕木信号を組み合わせた赤白灯信号に変わりました。19世紀半ばになると街路灯と区別できるように、船と同様、赤と緑の灯火に変わり全国に広まります。また、道路では人が赤旗を振って蒸気自動車の到来を知らせていましたが、1868年、鉄道技師のジョン・ナイトによりロンドン・ウェストミンスターの交差点に鉄道信号を真似た腕木式赤緑灯の世界初の道路信号が誕生しました。

ヒュー・ミドルトン
つい立ち止まるのは提灯が赤いせい?

20世紀に入り自動車が大衆化し、米国の信号に黄色灯が加わって道路信号は三色灯になりますが、赤い灯が「止まれ」、緑の灯が「進行」、は私たちの生活にすっかり溶け込んでいます。建物の非常口の誘導灯は緑ですし、よく通う居酒屋の提灯は赤です。ただし、日本の婚姻届が赤く、離婚届が緑なのは、特別な大人の配慮があるのか、寅七は考え中です。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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