第172回 英国で最も多い名字はスミスさん

6月第2土曜に行われる公式誕生日の祝典

毎年6月第2土曜の「トゥルーピング・ザ・カラー」、君主の公式誕生日を祝う大規模な行進式典は今年、新型コロナのため中止になりました。君主の公式誕生日は1748年にジョージ2世が自身の誕生日（11月9日）ではなく天気の良い初夏に定めた後、軍旗の行進式が誕生日祝いとして催されるようになりました。最高齢君主の女王エリザベス2世（94）の誕生日は4月21日で、6月の公式誕生日と毎年2つの歳を取るわけではありません。

エリザベス女王

エリザベス女王の本名はエリザベス・アレクサンドラ・メアリー・ウィンザーですが、肩書はもっと長いです。直訳すると「神の恩寵による、グレート・ブリテンおよび北部アイルランド連合王国並びにその他の共同体および領域の女王、コモンウェルスの長、信仰の擁護者であるエリザベス2世陛下」です。日本の古典落語「寿限無(じゅげむ)」に負けないほど長い肩書なので、式典で読み上げているうちに落語と同様、たんこぶも引っ込むことでしょう。

ピカソの名前は長い

もっとも、長い名前の例には世界中キリがありません。例えば有名画家ピカソの本名はパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソですし、最長の村名がウェールズにあるスランヴァイル・プールグウィンゲル・ゴウゲールウクウィールンドロブウリス・ランダスイハオゴゴゴッ村。もう日が暮れそうです。

ところで、英国人のファミリー・ネームの種類は現在約4万5000あるそうです。移民大国の米国の約150万、日本の約30万に比べると少ない印象を与えます。それでも名字の由来を大きく7つに分類できるそうで、①職業、②個人的特徴、③地名、④地主の名前、⑤風景の特徴、⑥祖先関連、⑦支援者関連、と細分化されます。さらに面白いことには英国は1066年ノルマン公国に征服されるまで名字が存在していなかったことです。

世界初の土地台帳「ドゥームズデイ・ ブック」

11世紀前半まで英国ではニックネームや〇〇の子、という呼称が使われ、名字がありませんでした。ところがウィリアム1世が英国を征服して世界初の土地台帳「ドゥームズデイ・ブック」を1085年に作った際、土地の所有者＝納税者を識別するために名字が導入されました。個人的特徴や風景の特徴が名字に使われたのも納得。しかし、英国で最も多い名字がスミス＝鍛冶屋とは、日本で最も多い名字の佐藤（ルーツは藤原氏）さんも驚きますね。

英国で1番多い名字はスミス