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Fri, 29 March 2024

第226回 ロンドンの通りは黄金で舗装されている

先日、シティ市長公邸の入口でブーツ・スクレイパー(靴の泥除け)を見つけました。昔のロンドンの道はとても汚れていて、靴底に付いた泥をこれで拭っていたのですが、今では建物のしゃれた装飾品です。そういえばロンドンにアスファルト舗装の道路がいつ普及したのか気になります。実はロンドンの舗装道路にも紆余曲折の歴史がありました。

昔はどこでもあった靴の泥落とし昔はどこでもあった靴の泥落とし

ローマ人が現在のロンドンの原型ロンディニウムを建設したのは約2000年前。その際、ロンドンを中心に全国に舗装道路が作られましたが、その技術は現代でも通じるほどです。ところが410年にローマ人が英国から去ると、それから1000年以上もロンドンの道路はほとんど整備されませんでした。人や荷馬車が多く通るところに小石が撒かれた程度で、唯一、礼拝に来る人のために教会と結ぶ歩道だけは教会税でしっかり補修・管理されていました。

ローマ人の舗装技術はすごかったローマ人の舗装技術はすごかった

そのためロンドンの道は風が吹けば埃だらけ、雨が降れば泥だらけ、馬が通れば糞だらけでした。そこから大きな変貌を遂げたのが18世紀のジョージアン朝時代。ロンドンの都市化が進んで人口が急増、人の移動は徒歩から馬車に変わりました。18世紀半ばにウェストミンスター舗装法が施行され、道路の補修管理や歩道の建設は市の責任となりました。清掃された舗装道路こそが都市文明の証し。一気に石畳の道がロンドン中にあふれます。

坂道の方向に対して石畳は垂直に敷かれる坂道の方向に対して石畳は垂直に敷かれる

ところが19世紀後半になるとほとんどの道が石畳から木塊舗装に変わりました。というのも石畳で馬車が速度を上げると騒音がひどく、また馬の蹄と石畳の摩擦から火花が出て火災の原因になったからです。木材を輪切りに敷いた木塊舗装なら騒音もなく馬の足にも優しいので、馬車の往来する通りはほとんどが木塊舗装になりました。でも木塊は馬車の鉄の車輪で削られたり、紫外線や降雨、馬糞により腐食する欠点もありました。

今ではまれな、木輪のみえる木塊舗装今ではまれな、木輪のみえる木塊舗装

1869年、シティはイングランド銀行前のスレッドニードル街をアスファルト舗装に変えました。馬が滑るので御者からは嫌われたようですが、やがて訪れる自動車時代への備えでした。1909年にバーソロミュー社が作った道路地図を見ますとシティ内ではアスファルト、郊外は木塊、細道は石畳に舗装されていたことが分かります。その後、アスファルト舗装に変えるため木塊はことごとく掘り起こされ、燃料として販売されました。至るところの木塊がカネに変わり、古いことわざ「London street sare paved with gold」は正しかったようです。

アスファルト舗装はイングランド銀行前から始まったアスファルト舗装はイングランド銀行前から始まった

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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