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Mon, 11 November 2024

ロイヤル・バレエ団ダンサー 高田茜インタビューロイヤル・バレエ団ダンサー 高田 茜インタビュー

ロイヤル・バレエ団入団数年にして数々の大役に抜擢され、日本人のみならず、目の肥えた英国のバレエ・ファンからも高い注目を集める高田茜さん。順調にキャリアを重ねていたが、2011年から12年にかけて、怪我で「眠れる森の美女」や「白鳥の湖」といった大作での主役デビューを断念せざるを得なくなるという事態に見舞われた。13/14シーズンは13年10月に「ドン・キホーテ」のキトリ役デビューで華々しくスタート。今月末には満を持して「眠れる森の美女」の主役オーロラ姫を踊る。シーズン途中の休暇を日本で過ごし、ロンドンに戻ってきたばかりという高田さんに、意気込みを語っていただいた。

ロイヤル・バレエ団ダンサー 高田 茜高田 茜(たかだ あかね)
1990年生まれ、東京都出身。2006年、NBA全国バレエコンクールで審査員特別賞を受賞。奨学金を得て同年からロシアの名門バレエ学校、ボリショイ・バレエ・アカデミーに留学する。08年2月、ローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞及び観客賞を受賞。同年9月にロイヤル・バレエ団に研修生として入団する。翌09年にアーティストとして正式入団。10年にファースト・アーティスト、11年にソリストに昇格。今シーズンは13年10月に「ドン・キホーテ」のキトリ役を踊ったほか、3月25日に「眠れる森の美女」のオーロラ姫デビューを控える。

 

3月25日に「眠れる森の美女」でオーロラ姫のデビューを迎えられますが、現在の心境は?

楽しみですね。早く踊りたい、という感じです。この作品ではほかの役も踊るので忙しすぎて、これまで(オーロラ姫の)リハーサルの時間が取れていなかったんです。今週は毎日時間が取れるので、それでどうにかまとまれば、と(笑)。

今回は、イングリッシュ・ナショナル・バレエ団から移籍したばかりのスター・ダンサー、ワディム・ムンタギロフとパートナーを組むことになりました。

2月に入ったころでしょうか、ケヴィン(・オヘア。ロイヤル・バレエ団芸術監督)から聞かされて。もともとダヴィッド(・チェンツェミエック)と踊るはずだったのですが、彼が退団してしまったので、誰と踊るんだろうと思っていた矢先に、ワディムと組むと知らされました。あんな素晴らしいダンサーと踊ることになって、ちょっとプレッシャーもあるのですが、すごく良いパートナーですね。

以前一緒に踊られたことはあるのですか。 「良いパートナー」ということですが、具体的にどのようなダンサーなのでしょう。

過去に一緒に踊ったことは全くありません。これまで1週間ほど一緒に踊っていますが、パートナリングがすごく上手。やはり経験が豊富なので、安心して任せられます。とにかくノーブルな王子様ですね。どんと来い、みたいな感じで、受け止めてくれそうなダンサーです(笑)。

オーロラ姫と言えば、出ずっぱりで肉体的にも精神的にもかなりきつい役なのではないかと思います。

レスリー・コリア *1 とずっとリハーサルをしているのですが、やはり彼女から学ぶことが多くて。一緒にリハーサルすることができて、幸せです。この作品は3幕あるのですが、そのそれぞれでオーロラ姫は全然違うんですね。1幕のオーロラ姫は16歳で若々しく、2幕では王子の想像上の幻影、3幕では結婚する幸せいっぱいの女性と、全く違う女性を演じ分けなければなりません。(16歳から100年間眠りについていることから)オーロラ姫は116歳まで成長していく、なんてよく言われるんですけれども(笑)。16歳のオーロラ姫は素で出来ているようで、大丈夫と言われるんですが、2幕、3幕と成長していかなければならず、レスリーにもよく叱られています。

全幕物 *2 の主役ということで、肉体的にも厳しそうですね。

まだリハーサルで通して踊ったことがないので、どんな風になるのかちょっと怖いんですが(笑)。でも今シーズン初めに「ドン・キホーテ」で初めてフルレングス(全幕物)のバレエを踊ったので、その経験をアイデアとして生かせるかなと思っています。

「ドン・キホーテ」のキトリ役はいかがでしたか。

始めは一回だけの予定だったんですけれども、ロベルタ(・マルケス。同団プリンシパル)が怪我をしてしまったので、彼女の代役も含め計2回踊りました。初めてのことだらけでしたが、「ドン・キホーテ」は小さいころからずっと観ていた作品ですし、新しい振り付けもあって、すごく楽しかったですね。思ったほど緊張もしなくて。何と言っても楽しいバレエですから。

普段からあまり緊張はしないタイプなのですか。

緊張はしますが、舞台に出たら忘れて踊ってしまいますね。でも日によるかもしれません。主役でなくても、舞台上で考え過ぎてしまうと、良い踊りはできていないのだろうな、と感じます。毎回、パーフェクト目指してやっているつもりですが、その都度、新たな課題が出てくるので難しいですね。

「眠れる森の美女」や「くるみ割り人形」といった古典作品を踊られる一方で、ウェイン・マクレガー作品などのコンテンポラリーものも数多く踊られていますが、個人的な好みややりやすさといったものはありますか。

クラシックは3歳のときからやっているので、通常のステップは体に染みついています。コンテンポラリーに関しては、ウェインの作品はたくさん踊っているので今は慣れてきたという感じでしょうか。それでも新しい作品を作るのは大変。クラシックのステップから少し外れたところでやらなければならず、体が慣れていないので慣れるまでは厳しいですね。ウェインの場合はリピート、リピートで100%を求めてきますので、ほかの作品のリハーサルがあって両立しなければならないときはへとへとになります。今シーズンはいつもよりプログラム数が一つ少ないのですが、「ドン・キホーテ」と今度上演されるクリストファー・ウィールドンの「冬物語」というフルレングスの新作が2本、そのほかにも新しいものがありますので大忙しです。

入団以来、順調にキャリアを積み重ねてこられましたが、2、3年ほど前に怪我で「眠れる森の美女」や「白鳥の湖」の大役を降板されました。その後、復帰されて心境などに変化はありますか。

左足の膝の関節部分を怪我したのですが、今も治ってはいません。もともと若いころに怪我して、弱い部分なんです。(ダンサーにとって)怪我はつきものなので、してしまうときにはしてしまうんですが、それでもできるだけ予防できるよう、マネジメントをしつつ毎日エクササイズを欠かさずするようにしています。

今後踊りたい演目や役柄はありますか。

いつかやりたいのは――皆やりたいと思いますけれども――「ロミオとジュリエット」。クラシックだけではなく、ロマンティック・バレエ、もう少し年を重ねたら「オネーギン」のタチアナ役もできれば、と思います。

将来はどんなダンサーになりたいですか。

(自分の)内にくっと閉じ込めてしまって外に出していないのかな、お客さんに伝わっていないのかな、自己満足で終わってしまっているんじゃないかな、とずっと気になっているんです。「伝えられるダンサー」になりたいですね。レスリーはちょっと踊るだけで全然違うんです。目とかキラキラしていますから。自分は地味なので、もうちょっと「キラキラ~」となれれば(笑)。近い将来は無理ですけれども、いずれはそういうダンサーになりたいなと思います。

リハーサル直後。くっきりとしたメイクもそのままに、インタビュー場所であるバレエ団のオフィスの一室に現れた高田さん。その華やかな笑顔は舞台上の彼女を彷彿とさせる一方で、ときに消え入りそうな小さな声音でおっとりと話し、休暇明けで夜の公演がないため、この後は家に帰ってハンバーグを作りますとうれしそうに語る様子からは、オーラがくっきりと輝いて見えるような陽性の雰囲気を全身に纏い、日々2000人以上もの観客を魅了するダンサーとしての姿は想像しがたい。

数年越しとなる「眠れる森の美女」の主役デビューを目前に控えても構えすぎることなく、心身ともに充実した毎日を過ごしていることを感じさせるその姿に、オーロラ姫という一人の女性が成長していく様をどのように表現してくれるのか、期待が膨らんだ。

*1:元同団プリンシパル。現在は後進の指導に当たる
*2:一つの物語をすべて上演する形態

 

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