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Sun, 22 December 2024

オックスフォードのパブ巡り

観光地として人気の大学街
オックスフォードは、パブの街でもある。
街中にある一つひとつのパブには
隠れた歴史や逸話そして遊び心がいっぱい。
観光がより楽しく、ビールがよりおいしい。
そんな至福の時間を過ごすため、
オックスフォードを訪れた際には
パブ巡りをしてみたい。

ロンドンからのアクセス:
パディントン駅から列車で
約1~2時間

オックスフォードの地図

壁から天井までネクタイだらけ
The Bear Inn   ベア・イン

市内中心部にある市役所兼オックスフォード博物館のすぐ裏手。わずか2部屋しかないこの小さなパブは、恐らく英国で1、2を争うおもしろパブだ。何しろ、天井から壁までが所狭しとネクタイで覆われているのだから。
オックスフォードの新聞社で漫画家として勤務していたというかつてのパブの主人が集めたネクタイの数は、何と4500本。ネクタイの先端をはさみで切断し、それを店に寄付すれば、引き換えに小さなグラス(半パイント)に注いだビール一杯を無料で提供するというサービスを行っていたのだという。このユニークな試みが始まったのは1950年代だというから、店内には半世紀以上かけて集めた博物館級のコレクションが展示されていることになる。
それぞれのネクタイには団体名に加えて、寄付された日付や持ち主の署名などが記載。オックスフォードを中心とするスポーツ団体の制服として着用されていたものがほとんどだが、中には警察官のものまである。たくさんの愛すべき酒飲みたちの歴史が刻まれたパブ。

The Bear Inn
1. 店内に飾られたネクタイの数々。そのコレクションは現在も拡大を続けているという
2. 仁王立ちしているクマが描かれた看板が目印
3. サーモンとディルのフィッシュ・ケーキ(£11.95)
4. 人通りの少ない静かな通りに立っている

  • 6 Alfred Street, Oxford OX1 4EH
  • 01865 728164
  • 月~土 11:00-23:00(金・土は0:00まで)、日 11:30-22:30
  • www.bearoxford.co.uk

文豪たちが互いの作品を披露した
The Eagle and Child イーグル・アンド・チャイルド

市内中心部からアシュモリアン博物館に向かって北上すると、セント・ジャイルズ・ストリートという名の大通りに出る。観光客もまばらなこの道の左側に立つのは、一見しただけでは何の変哲もないパブ。
ここには、「指環物語」のJ・R・R・トールキンや、「ナルニア国物語」のC・S・ルイスといった英国が誇る文豪たちが通い詰めていた。まだ彼らがオックスフォード大生だった20世紀前半。直訳すると「ほのめかし」という意味になる「インクリングス」という名の学生グループを結成した彼らは、毎週火曜日の正午にこのパブに集まり、それぞれ執筆途中の物語を披露し合っていたのだという。
店内中央に今も残る「ラビット・ルーム」という名の小部屋は、まさに彼らが陣取っていた場所だ。無造作に置かれた丸椅子とテーブルを暗い照明がぼんやりと照らすこの部屋を抜けて奥へと進むと、今度は中央を横切る梁にインクリングスのメンバーとの友情を謳ったC・S・ルイスのメッセージが書かれている。この店内の空間そのものがまるで物語の世界のようだ。

The Eagle and Child
1. 小さな子供を運ぶ鷲という何とも不思議な絵が描かれた看板
2. かつてインクリングスが会合を開いていたラビット・ルーム
3. 店内の一番奥には自然光が入り込む空間がある
4. よく目を凝らして見てみると梁にメッセージが書かれている
5. 何の変哲もない外観

飲めば飲むほど篤志家になれる
The Lamb and Flag   ラム ・アンド・フラッグ

大通りを挟んで、イーグル・アンド・チャイルドのほぼ真向かい。インクリングスのメンバーが足繁く通ったと伝えられるもう一つのパブが、この「ラム・アンド・フラッグ」だ。さらにこの店は、インクリングスが誕生する直前に死去した作家のトーマス・ハーディが、彼にとっての最後の小説「日陰者ジュード」を執筆した場所とも伝えられている。
広々としたスペースを構え、口当たりの良いベルギー・ビールを豊富にそろえたこのパブは、近隣にあるオックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジが経営。店内に同カレッジのボート部が所有する記念オールなどが展示されているのはそのためだが、さらにもう一つ、このパブには大学直営店ならではの変わった特徴がある。
それは、この店の収益が同カレッジの奨学金に利用されているということ。つまり客がビールを飲めば飲むほど、結果的にオックスフォード大学の優秀な学生を支援することができる仕組みになっているのだ。飲み過ぎたときの罪悪感を帳消しにしてくれる、酒飲みに優しい店。

The Lamb and Flag
1. バーではベルギー・ビールを豊富に用意している
2. パブの右脇にある小さな小道に入り口がある
3. 旗を掲げる羊の絵が何とも愛らしい
4. 店内に飾られている記念オール
5. 独自の奨学金制度を説明した案内板

  • 12 St Giles, Oxford OX1 3JS
  • 01865 515787
  • 月~日 12:00-23:00(日は22:30まで)

クリントン元米大統領がアレした場所
The Turf Tavern   ターフ・タバーン

ボドリアン図書館のすぐ近く。「嘆きの橋」のたもとにあるレンガの建物の脇道か、またはホリウェル・ストリートと交差する石畳の小道を通って入り口へ。どちらも裏道と呼んでいいような人気のない道を進むと、ターフ・タバーンの花かごに彩られたテラス席が見えてくる。このテラス席がパブの各所に設けられていることに加えて、食事を夜9時まで提供しているということもあり、オックスフォード市内のほかのパブに比べて圧倒的に家族連れが多い。
また実はこの店、クリントン元米大統領がオックスフォード大への留学時にマリファナを吸引した現場として有名。大統領選でマリファナ吸引疑惑をかけられた際に「英国でマリファナを試したことがあったが肺には吸い込まなかった」と発言したことが話題になったが、店内には「ビル・クリントンが違法薬物を吸い込まなかった場所」と書かれた看板がある。
さらにはホーク豪元大統領が同じく学生時代にビールの早飲み記録をつくったことや、はたまた幽霊が出ることなどを伝えるユニークな看板がテラス席のあちこちに置かれている。

The Turf Tavern
1. 店の北側にあるテラス席。建物を挟んで南側にもテラス席が置かれている
2. バーには変わり種のビールがたくさん
3. 幽霊が出没すると伝える看板もある
4. 三角屋根が特徴的な建物
5. 「ビル・クリントンが違法薬物を吸い込まなかった場所」と書かれた看板

暗く小さく味のある名店
The White Horse   ホワイト・ホース

目抜き通りの一つである、ブロード・ストリート。反対側に立つ堂々たる象牙色の建物群とは対照的に、何とも窮屈に見える小さな店構えのパブがある。屈み込むようにして半地下に位置する店内に入ると、妙に薄暗く、10前後のテーブルは椅子との高さが合っていないから、座ると何だか妙に居心地が悪い。
だが、不便極まりないはずなのに、ビールを口にした途端思わずにやけてしまう。古き良き英国のパブの醍醐味を知る人であれば、そのほほ笑みの意味が分かるだろう。
16世紀にまでさかのぼるという歴史的建築物に入ったこのパブは、18世紀ごろから「ホワイト・ホース」との名で人々に認知されるようになった。当時の英国王であったジョージ2世の紋章に馬が描かれていたことと関係があるとされるが、現在ではその歴史的な佇まいを生かし、数々のドラマや映画のロケ地として使われている名店。お勧めビールは、店名から取ったその名もホワイト・ホース。醸造所が同店のためだけにつくったという、爽やかな飲み口が特徴のエール・ビールだ。

The White Horse
1. 半地下に位置する店内
2. 窮屈そうな入り口前では立ち飲みをする人の姿も多く見られる
3. 店名になっている白い馬の名前は「ビリー」とのこと
4. シェフのお勧め品の一つ、ホームメード・フィッシャーマンズ・パイ(£8.95)
5. チェーン店ではなかなか見かけない銘柄のビールが並ぶ


 

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