「異例」づくしのワールドカップカタールW杯2022
4年に1度のFIFA ワールドカップ(以下、W杯)が、いよいよ11月20日(日)~12月18日(日)にかけて開催される。第22回大会は史上初の中東開催。日本代表はアジア予選を突破し、7大会連続で7度目、対する英国は本大会にイングランドとウェールズが大会出場となった。一方で、ボイコット論も湧きあがる「異例」づくしの今大会は果たしてどうなるか。開催国カタールに焦点を当て、今大会を楽しむさまざまなヒントをお届けする。(Text:ドイツニュースダイジェスト編集部)
「異例」と呼ばれる理由
1.史上初の中東開催
開催地は2010年に投票で決定したが、中東でW杯が行われるのは史上初のこと。これまでに行われた全21回の内訳は、欧州(ロシアを含む)で11回、南米で5回、北米で3回、アジアで1回、アフリカで1回となっている。アジアでは唯一、2002年に日韓共同で開催された。
2.史上初の秋冬開催
W杯は通常は6~7月にかけて行われるが、2022年大会の開催地は中東のカタール。首都のドーハは、湿度はそこまで高くないが、例年7月に1年間の最高気温を記録しており、40度を超える日も。この地で夏開催となれば、選手にかかる負担は想像を超えるものになるだろう。選手たちは大会開催中、その地で1カ月間ほどを過ごすが、トレーニング→移動→試合→リカバリー……と、勝ち進む限りこのサイクルを繰り返すことになる。気温40度を超える環境でこのサイクルをこなすことは困難だ。しかし、同地では11月には平均最高気温は30度ほど、12月には25度前後まで下がる。
そのため、気候を考慮した上での秋冬季開催となったのだが、これはW杯史上初のこと。今回行われるカタールW杯は11月20日(日)、開催国カタール対エクアドルの一戦で開幕し、12月18日(日)に行われる決勝戦で幕を下ろす。
3.異例のボイコット論
カタールにおける人権問題などにより、欧米を中心に本大会のボイコット論が巻き起こっている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、カタールでW杯関連の工事などを担う出稼ぎ労働者が給与未払いや搾取、劣悪な環境下での労働など不当な扱いを受けていると指摘。開催地に決まった2010年12月から数千人が死亡し、その調査が尽くされていないという。批判を受け、カタール政府は20年に最低賃金制度を導入。移民労働者は雇用者の許可を得ずに転職できる自由が与えられた。
また近年、欧米を中心にLGBTQなどの権利を認めるべきという風潮があるなか、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、カタールの女性や同性愛者、トランスジェンダーなどが差別を受けていると指摘。同国では同性愛が違法とされている。なお欧州では、ハンガリーで反LGBTQ法案が可決されたときも、ドイツやフランスなどから同国に厳しい批判が浴びせられていた。
こうした背景から、元フランス代表でかつてマンチェスター・ユナイテッドで活躍したエリック・カントナ氏は、英スポーツ紙「Athletic」のインタビューで「(スタジアム建設工事で)数千人が死んだ。それでもわれわれはW杯を祝福する。私個人的にW杯を観ることはない」と自身の考えを明らかにした。また、元ドイツ代表でかつてバイエルンで活躍したフィリップ・ラーム氏は独誌「Kicker」に対し、「人権は大会の開催において最も重要なことであるべきだ」と語り、母国の躍進を願う一方、開催国カタールの人権問題やジェンダー問題への姿勢を懸念している。
4.「死の組」の日本、初戦が成功を左右する?
日本はドイツ代表と同じグループEに入った。グループEはスペイン代表とコスタリカ代表も属する強豪ぞろいの「死の組」。日本は過去6度のW杯で合計18試合のグループステージ(GS)を戦っているが、戦績は5勝4分け9敗。ちなみに、初戦を落とした大会では必ずGSで敗退しており、引き分け以上の場合は必ず決勝トーナメント進出を果たしている。
日本代表とドイツ代表はカタールW杯で初戦で激突。日本代表とドイツ代表はW杯では初対戦となるが、日本がこれまでにドイツと対戦したのは親善試合の2試合のみで、結果は1敗1分け。今回、日本代表が勝利すれば今大会初勝利となるだけでなく、3度目にして対ドイツ代表戦史上初の勝利となり、日本のサッカー史に新たな1ページを刻むことになる。初戦のドイツ代表戦で引き分け以上の結果が得られれば、自信もついて勢いに乗り、決勝トーナメント進出も見えてくるかもしれない。ちなみにドイツ代表は2018年ロシアW杯で初戦を落とし、結局調子が上がることなく、最終節では韓国に敗れてGSで敗退している。
日本の試合日程は、11月23日(水)16時(現地時間。以下同)ドイツ戦、27日(日)13時コスタリカ戦、12月1日(木)22時スペイン戦だ。
※日独戦の詳細はドイツニュースダイジェストのページをご覧ください。
イングランドとウェールズは同グループに英国対決を制するのはどちらか?
英国からは常連のイングランドと64年ぶり2度目のW杯となるウェールズが出場。両チームはグループBになり、総当たり戦で勝ち点の上位2カ国が決勝トーナメント(ベスト16)に進出する。