待ちに待ったエンタメの祭典「ブライトン・フェスティバル」の季節が、今年も到来!英国アート界の奥深さを存分に楽しめるような、ありとあらゆるジャンルのイベントが約3週間にわたって繰り広げられる。娯楽に飢えている人も、日常生活に欲求不満を感じている人も、迷わずブライトンへ!
2009年の目玉はこれ
カプーア作品を見逃すべからず
今年で開催43回目を迎えるブライトン・フェスティバル。年々、規模も参加アーティストの幅も拡大しているこのフェスティバルだが、今年はなんと、世界のアート界を牽引する彫刻家アニッシュ・カプーアがゲスト・アーティスティック・ダイレクターとして名乗りを挙げた。フェスのために製作された2作品に加え、過去に世界各地で展示され大反響を得た5作品も特別展示されるというから、これを見逃してはもったいない!
1954年にインド中部のムンバイで生まれ、1970年代初期にアートを学ぶために来英。以来、ロンドンを拠点に活動し、その独創的かつ哲学的な思想に溢れる作品で現代彫刻界を先導する存在となっている。ベネチア・ビエンナーレの「2000年賞」(1990年)や、ターナー賞(1991年)など、多くの賞を受賞。英国を代表する芸術家としてその活躍が称えられ、2003年には大英勲章(CBE)を授与されている。
ブライトンフェスの発注作品
Imagined Monochrome (Massage)
1つのものを見ても、人が認識する色には多少なりとも個人差がある──この作品には、「色の体験」を他人と分かち合うというテーマが掲げられている。詳しい内容は明らかにされていないが、鑑賞者は頭にマッサージを受け、その際に見えるモノクロの世界を共有し合うという、なんとも実験的な試みが用意されているようだ。30分ごとの入れ替え制で、予約必須。16歳以上向け。※電話にて要予約 Tel: 0127 370 9709
5月2日(土)~24日(日)10:00-18:00 £12
The Basement
Argus Lofts, 24 Kensington Street, Brighton BN1 4AJ
Dismemberment of Jeanne d’Arc
Anish Kapoor, Blood Stick, 2008, Resin and Pigment 140x1020x134 cm Courtesy the artist and Barbara Gladstone Galler y ©Dave Morganこの作品「ジャンヌ・ダルクの切断」(写真)は、タイトル通り、15世紀のフランスに実在した聖人、ジャンヌ・ダルクから着想を得て製作されたという。その力強いメッセージ性により、彫刻が置かれた空間全体までをも1つの作品に変えてしまうカプーア。同作が設置されたミュニシパル・マーケットが普段の表情からどのように変化を遂げたのか、ぜひ確かめてみよう。
5月2日(土)~24日(日)12:00-20:00 無料
The Old Municipal Market
Circus Street, Brighton BN2 9QF
その他のエキシビション
C–Curve
Anish Kapoor, C-Cur ve, 2007, Stainless steel 2.2 x 7.7 x 3m Installation: Louvre, Paris, 2007 Courtesy Louvre ©Philippe Chancel Parisルーブル美術館に常設展示されている作品(2007年、写真)。今回、展示場として、ブライトンにある丘サウス・ダウンズが選ばれた。英国の統治下であった第一次大戦中、英印軍となり戦死したインド人兵士の記念碑「Chattri」の隣に設置されるという。
5月2日(土)~24日(日)12:00-20:00 無料
The Chattri
South Downs, Brighton
Sky Mirror
Anish Kapoor, Sky Mirror, 2006, Stainless Steel Organised by Public Art Fund: Installed Rockefeller Centre New York 19 Sep to 27 Oct 2006, Courtesy Public Art Fund ©Seong Kwon Photography2006年にニューヨークのロックフェラー・センターに設置された、重量23トン、直径約11メートルの巨大なステンレス作品(写真)。ビル群に架空の「空」を作り出すその圧倒的な迫力が、ここブライトンにて体験できる。
5月2日(土)~24日(日)12:00-20:00 無料
Pavilion Gardens
Royal Pavilion, New Road, Brighton BN1 1UG
Blood Relations, 1000 Names, Music Boxes
作曲家ブライアン・イリアスとのコラボ作品「Music Boxes」(1995~6年)や、著作「悪魔の詩」を発表し、イランの元最高指導者より死刑宣告を受けたインド系英国人作家サルマーン・ルシュディーとのコラボ作品「Blood Relations」(2006年)を展示。
5月2日(土)~24日(日)12:00-20:00 無料
Fabrica
40 Duke Street, Brighton BN1 1AG
いちおしイベント・ガイド
第一線で活躍するアーティストたちが世界中から参加するブライトン・フェスティバル。ありとあらゆるジャンルにおけるイベントが開催され、しかも入場料がお手頃価格というから、食わず嫌いしていてはもったいない!ここでは、中でも大注目のイベントをご紹介。

元気キッズがフェスをスタート
Children’s Parade
フェスティバルの初日を飾るのは、英国の小学校70校と地域コミュニティーがそれぞれ1年間かけて計画したという、キッズが主役のパレード。今年で開催19年目を迎え、毎年1万人を超える観衆を集めるこの一大イベントでは、4000人もの子どもや保護者が参加し、思い思いの創造性を反映させた衣装や振り付けでブライトンの街を行進する。今年のテーマは「大地・空気・火・水」で、自然の偉大な力を思い起こさせる衣装やパフォーマンスがお目見えする予定だ。陽気なサンバに乗せてシドニー・ストリートを出発し、最後は海岸沿いのマデイラ・ドライブで盛大なフィナーレを迎えるというから、こうご期待!
5月2日(土)10:30~ 無料
スタート: Sydney Street 終了: Madeira Drive


路上に生きる術を見つけた女たちとは
Kurva
車の往来が激しい幹線道路沿い、あるいは土ぼこりが舞う田舎のわき道。そこで女たちは、快楽を求める獲物を狙って、危険な商売を行う……。
米国や欧州の大陸では見かけることが珍しくないという、道路沿いで客引きをする売春婦たちに焦点を当てたパフォーマンス。「『体験』を生み出す劇団」として欧州各国で高い評価を得ているスペイン・カタルーニャ州の野外シアター・カンパニーの最新作「カーヴァ(売春婦)」は、月並みな描写、あるいは偏見を通してしか伝えられてこなかった売春婦たちの生活に切り込み、女たちの本心に迫る。
この作品が他の作品と一線を画すのは、なんといっても会場が「不明」であること。観客はバスに乗り、秘密の目的地に向かう。とある道路沿いにある、とある場所──女たちの「職場」で下車されると、観客はみな路上での日常を目撃することとなる。車が止まり、客がやって来る。女たちは求められる「女」を演じ、ケンカし、1日を終える……。現実と物語の境界線があいまいになった舞台設定により、観客はよりリアルに物語を体験できるはず。16歳以上向け。
Hove駅に集合
5月12日(火)、13日(水)、15日(金)、16日(土)、17日(日)
火・水・金 17:30、19:30 土・日は13:30もあり
£15

アリスの庭で、いざ冒険!
Alice in the Walled Garden
世界中の子どもはもちろん、大人までをも魅了してやまない童話「不思議の国のアリス」。英国人作家のルイス・キャロルが1865年に出版したこの物語が、エドワード時代に建てられた由緒正しき貴族の邸宅「プレストン・マナー」の広大な庭園で演じられる。白ウサギの穴に落っこちて、人間の言葉を話す動物や、人間のようなトランプの札が住む、ファンタジーの世界へ迷い込んだアリス。そこはなにもかもがあべこべで、胸躍る冒険が待ち受けていた……。個性豊かなキャラクターたちの後に続いて庭のあちこちをさまよえば、キッズたちもいつの間にかアリスと一緒に不思議の国に足を踏み入れているはず。3歳以上向け。
5月14日(木)、15日(金)、16日(土)、17日(日)
11:00、14:00、17:00
£6.50~8.50
Preston Manor
Preston Drove, Brighton BN1 6SD

熟練クインテット2組による熱い「音」に出会おう
Dave Holland Quintet & Andy Sheppard Quintet
世界的に活躍するジャズ・クインテット2組を楽しむことができる、ぜいたくな一夜。まずは英国人ベース・プレイヤーのデイブ・ホランド(写真)率いる5人組が、「地球上で最も刺激的」と称されるその腕前を披露する。お次は、英国を代表するサックス奏者であるアンディー・シェパードが率いるクインテット。常に新しい感覚を探し求める「進化型」5人組の音色に酔いしれよう。
5月23日(土)20:00
£6~22.50
Concert Hall
Brighton Dome, Church Street, Brighton BN1 1UE

今、最も「旬」のダンスはこれ
Hofesh Shechter Company: The Art of Not Looking Back
現在、英国で最も売れている振付師として、ダンス界からの期待を一身に受けるホフェッシュ・シェクターが率いるダンス・カンパニーによる、新作「The Art of Not Looking Back」の世界プレミア。この作品の見所は、シェクターを一躍売れっ子にした、男性ダンサー7人を起用した「Uprising」の対極とも言える、女性ダンサー7人による構成になっていること。同カンパニーの女性ダンサーたちにインスパイアされ、「彼女たちのために製作した」とシェクターが断言するこの作品は、踊り手を知り尽くしているからこそ実現できた、身体能力の限界に挑むような過酷で難解な振り付けになっているという。また、14日の公演の前には、鑑賞チケット保持者のみ無料で参加できるトーク・イベントも行われる。
5月14日(木)、15日(金)20:00
£6~18.50
Concert Hall
Brighton Dome, Church Street, Brighton BN1 1UE

マーラーが音に 託した物語とは
Mahler: Sixth Symphony
フィルハーモニア管弦楽団による、オーストリア人作曲家、グスタフ・マーラーが手掛けた「交響曲第6番」の公演。人間が世界や運命という動かしがたい障害と闘い、最終的に打ち倒される̶̶そんな悲劇を奏でる第6番は、交響曲の大家として知られるマーラーの作品の中でも最も完成度が高いものとされている。同管弦楽団の首席指揮者・音楽監督であるエサ=ペッカ・サロネン(写真)が指揮を務める。
5月22日(金)20:00
£10~30
Concert Hall
Brighton Dome, Church Street, Brighton BN1 1UE

情報の波から「真実」をすくい上げる
Breaking News: A “daily news show”
テレビやインターネット、ラジオに新聞……いつの間にか現代人は、24時間絶え間なく流れる情報の波に身をさらして生きるようになった。「うまく呑み込める」ようにと、短く鋭く切り揃えられたそれらは、誰かのフィルターを通して解釈され、編集され、通訳され、「ニュース」という名を付けられる。だが、そんな情報の塊は果たして「真実」と呼んでも良いのだろうか……?現代社会に溢れる、加工された真実と現実の意味を問う舞台。
ドイツの劇団「リミニ・プロトコル」による、初の来英公演となる今回。ずばり「速報」と名付けられたこの作品では、何十台ものテレビが舞台に設置され、世界各国で実際にライブ放送されているニュースが流されるという。あらゆる言語でニュースが読み上げられる中、俳優たちは通訳者、ジャーナリスト、ブロードキャスター、そして「ニュースのエキスパート」である解説者となり、会場に 溢れる情報の波から「真実」をすくい上げる。
5月7日(木)~9日(土)19:30
£5~18.50
Theatre Royal Brighton
New Road, Brighton BN1 1SD

キッズに優しいオペラが誕生
Mozart: The Magic Flute
英国最大級の音楽祭である「グラインドボーン音楽祭」の主催者としても有名なグライドホーン・エデュケーションが、モーツァルトが手掛けたオペラ「魔笛」をキッズ向けに大胆にアレンジ。子どもたちにもっとオペラの楽しさを知ってもらおうと、これまでにも様々な公演を行ってきた同団体が、今回は善と悪に分かれていて比較的分かりやすい「魔笛」の物語を、さらにヒーロー仕立てにしてエンタメ色の強い演出にしたという。真実を求めて悪と戦うヒーローたちを助けるのは、魔法のフルートとピアノ、それに何よりも観客たちの力。さあ、いざお姫さま救 出の旅へ!6~11歳向け。
5月23日(土)11:00、14:00
£6~8
Pavilion Theatre
Church Street, Brighton BN1 1EE

フェスの締めは、やっぱりこれ!
Big Splash
フェスのフィナーレを飾るのは、街全体が1つのカーニバル会場と化す「ビッグ・スプラッシュ」。英国全土からストリート・パフォーマーやパペット人形師たちが集まって、最高のエンターテインメントを提供する。そして日が暮れてからのお楽しみは、最新技術を駆使した独創的な演出に定評がある花火師集団「アルケミー・ファイアワークス」による、毎年恒例の花火大会。有終の美を見届けて、フェスに別れを告げよう。
5月24日(日)正午から
無料
Brighton Marina
いちおしサブ・フェス・ガイド
3週間にわたるフェスティバルの他にも、さらに濃くてアツいイベントがブライトンとその周辺で同時開催されている。しかも、そのほとんどが無料か10ポンド以下というから、気になるイベントはどんどんハシゴしてしまおう!
エッジの効いた イベントをお求めなら
Brighton Festival Fringe
ブライトン・フェスティバルよりも小規模で実験的な演目が揃っているのが、このフェスティバル「フリンジ」。舞台やコンサート、パフォーマンスなどが行われ、今年は例年よりもさらに規模が拡大し、なんと700以上ものイベントが開催されるという。メインストリームでは物足りない、あるいは小さな会場でより親密な空気の中で鑑賞したい、という人にはぜひ参加してみてほしい。また、去年、3万人もの観衆を動員したという無料のアウトドア・フェス「フリンジ・シティー」もフリンジの一環として開催されるので、お見逃しなく。
フリンジ
5月3日(日)~26日(火)
イベント各種詳細はウェブサイトを参照
フリンジ・シティー
5月2日(土)、9日(土)、16日(土)、17日(日)、23日(土)
www.brightonfestivalfringe.org.uk
突撃!アーティストのお宅拝見
ARTIST OPEN HOUSE
ロンドンに次いで、英国で最も多くのアーティストが住む街として知られるブライトン。この「アーティスト・オープン・ハウス」では、アーティストの自宅やアトリエが多く集まる地域が13のエリアに分けられ、一度に何件もハシゴしてアート鑑賞できるようになっている。アーティストたちと直接話をしたり交渉したりしながら作品を購入することができる上、作風を気に入ったアーティストには、自分の好みを伝えてオリジナル作品を発注することも可能だ。そして何より、プライベートなアトリエや仕事場を覗き見できる貴重な機会。約200件の家が開放され、1000人を超えるアーティストが参加するというから、アート方面でのネットワークを広げたい人にもおすすめだ。
5月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)、16日(土)、
17日(日)、23日(木)、24日(金)
入場は全て無料
場所・時間はウェブサイトを参照
www.aoh.org.uk
CHARLESTON FESTIVAL
ブライトン近郊の街、チャールトンで行われる文学・政治・芸術界などから著名人を招いたフェスティバル
5月16日(金)~25日(日)
www.charleston.org.uk
THE GREAT ESCAPE
これからビッグになること確実の、大型新人バンドを世界に発信する音楽フェスティバル
5月15日(木)~17日(土)
www.escapegreat.com
| オンライン | |
| ウェブサイト | www.brightonfestival.org |
| 電話 | 0127 370 9709 |
| 月~土 10:00-18:00 5月2日以降は19:00まで 予約時に使用したクレジット・カードかデビット・カードを当日持参すること |
|
| フェスティバル・ボックス・オフィス | |
| 29 New Road, Brighton, BN1 1UG | |
| 月~土 10:00-18:00 5月2日以降は19:00まで | |
スペシャル・オファー
6つのイベントのチケットを一度に購入すると、一番安価なイベント1つが無料に
グループ・ディスカウント
チケット10枚を購入すると10%、20枚購入すると20%割引に
ビクトリア駅から1時間弱でブライトン駅に到着。1時間に約4本の電車がある。ロンドン・ブリッジ駅、キングス・クロス駅からも電車あり。4月30日~6月3日までは、ブライトン発の最終電車が通常よりも遅い23:19まで運行。イースト・クロイドン、クラッパム・ジャンクションに停車し、終点のビクトリア駅には00:13に到着する。これで帰ってくれば地下鉄の最終便に乗ることができる、なんとも心強い味方だ。ブライトン駅から市内へは 徒歩で約10分。



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