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Sun, 22 December 2024

建築都市ロンドンをとことん満喫!オープン・ハウス・ロンドン2011

毎年秋に開催される「オープン・ハウス・ロンドン」。
歴史的建造物やデザイン性に優れた建築物の内部が無料で公開される(一部予約制)、
世界的建築都市ロンドンならではの粋な催しだ。
19回目を迎える今年は、700以上の建築物と50を超えるツアー、
さらに70以上の教育系イベントが用意されるなど、これまで以上に充実した構成となっている。
普段何気なく歩いているロンドンという街について理解を深められるだけでなく、
世界を代表する優れたデザインやコンセプトに触れられる貴重な機会。
準備を万端に整え、狙いを定めて、さあ、街へ繰り出そう。
(取材・文: Shoko Rudquist)

建築賞「RIBAアワード」って?

今年は9月17日(土)&18日(日)(一部例外あり)に開催されるオープン・ハウス・ロンドン。700以上の建築物がリストに名を連ねるとあっては、どこから手を付けていいか迷ってしまうのが実際のところだ。しかし1年に1度のこの機会、ぜひとも効率良くものにしたい。

RIBA
ロンドン市内にあるRIBA事務所

そんなとき、一定の選択基準を設定する足掛かりとなり得るのが、ロイヤル・インスティチュート・オブ・ブリティッシュ・アーキテクツ(RIBA)という組織が毎年授与する建築賞だ。RIBAとは、1834年に設立され、現在、実に4万4000人以上の英国の建築家が所属するという、世界の建築界で最も権威ある団体組織の一つ。栄誉ある建築賞とされる「スターリング賞」を授与しているのがこの団体だと言えば、その重要度が分かっていただけるだろう。

そして、その「スターリング賞」の前段階、つまり候補となり得る作品に贈られるのが、「RIBAアワード」だ。予算やサイズ、形状などに関係なく、「偉大な建築作品」と判断された建築物に贈られる栄誉ある賞。今回は、このRIBAアワード本年度受賞作品を中心に、ぜひとも足を伸ばして見学したい建築物をリストアップしていくことにする。

なんと言っても今年の目玉
話題性編

ロンドン五輪を1年後に控えた今年、やはりオリンピック・パークはオープン・ハウスの目玉の一つとなる。メイン会場となるスタジアムはもちろんのこと、本年度RIBAアワードを受賞した自転車競技場「Velodrome」、また会場を取り巻く周辺地区の開発も見逃せない。

RIBA Stirling Prize nominated, RIBA Award 2011London 2012 Olympic Park

オープン期間: 9月10日(土)、11日(日)
(要予約: 0300 2012 550)
The Score Complex, Oliver Road, Leyton E10 5JY

London 2012 Olympic Park

ロンドンの東で開発が進む、ヨーロッパ最大級の建設プロジェクトとなる広大な五輪会場。開・閉会式なども行われるメイン・スタジアムから、本年度RIBAアワードを受賞した自転車競技場「Velodrome」、昨年度のスターリング賞を受賞したザハ・ハディによる屋内型プール「Aquatics Centre」まで、五輪開催間近という話題性に引けをとらないクオリティーの高いラインナップだ。今回は、通常の日程より1週間早い10日と11日にツアーが敢行されるが、人気の会場のため予約が殺到している模様。残念ながら予約の機を失してしまった場合は、パーク全体を囲む形で建設された側道、「The Greenway」を歩きながら会場に関する詳しい説明を聴くことができるオーディオ・ツアーがお勧めだ。 詳しくは www.london2012.com を参照。

次世代を担う人材を育てる
教育施設編

本年度は、これまでになく多くの教育施設がRIBAアワードを受賞している。歴史的な大暴動が発生するなど、英国社会を担う若者の教育の在り方にも見直しが迫られる今、教育現場の一新と充実を図るこの動きは非常に頼もしい。ここではそのうちいくつかをご紹介。

RIBA Stirling Prize nominated, RIBA Award 2011Evelyn Grace Academy

オープン期間: 9月17日(土)10:00-13:00 
ツアー形式
255 Shakespeare Road SE24 0QN

Evelyn Grace Academy

ロンドン南部ブリクストンに新設された教育施設。自然光にあふれる死角のないオープンな教育空間を実現した、本年度最も注目されるRIBAアワード獲得作品の一つだ。年齢層の違う4つの学校を集合させるという新しい形態を採用した同施設には、英国では珍しい本格的なスポーツ競技場も設けられており、充実した学生生活の提供が期待できる。中心部に位置するハブ部分には一般の市民もアクセスでき、コミュニティー・センターとしても活躍。新しい形の教育施設として、今後モデルとなりそうな期待感にあふれる作品だ。

 RIBA Award 2011City of Westminster College

オープン期間: 9月17日(土)10:00-17:00 
ツアー形式(最終は16:00開始)
Paddington Green Campus W2 1NB

City of Westminster College

ロンドンの大学機関の新しい顔となるキャンパスが誕生した。通りから見上げると、巨大な豪華客船のようにも見えるそのダイナミックな外観もさることながら、最上階まですべてが吹き抜けとなった大胆な構造が、どの階にいる誰とでも言葉が交わすことができそうな、開放的でフレンドリーな環境を造り上げている。地上階から上階にかけては幅の広い階段が設置されているが、実はこれ、地上階を使用したイベントなどの際には客席として使うこともできる代物。学生同士の連帯感を育むのにも一役買いそうだ。

 RIBA Award 2011Chelsea Academy

オープン期間: 9月17日(土)10:30-15:30 
ツアー形式(最終は15:30開始)
Lots Road SW10 0AB

Chelsea Academy

ロンドン西部チェルシー地区には、3Dパズルに例えられる複雑な造りをした学校が登場。1万平方メートルを超える総面積を誇る校舎が、その半分の面積に過ぎない土地の上に建てられている。驚くべきは、それが単純な2階建ての構造とは違って、十分な数の教室に加え、内部には広々とした中庭をいくつも有していることだ。生徒たちはこの中庭で、他の生徒らと十分なコミュニケーションを取ることができる。3Dパズルのように複雑で、かつ効率的な空間利用。土地利用に多くの制約 がある大都市ならではのスマート・ソリューションと言える。

世界の経済を司る
オフィス編

シティーのオフィス街を中心に、モダン建築が目白押しのロンドン。毎年オープン・ハウスの時期には各会場に長蛇の列が見られるが、今年も見逃せない新顔が登場する。効率の良い仕事環境を実現させた新しいスタイルのオフィス、堂々のスターリング賞ノミネート作品だ。

RIBA Stirling Prize nominated, RIBA Award 2011Angel Building

オープン期間:
9月17日(土)10:00-17:00、18日(日)13:00-17:00 
ツアー形式(最終は16:15開始)
407 St John Street EC1V 4AB

Angel Building

地下鉄ノーザン線のエンジェル駅すぐに誕生したのは、その名も「Angel Building」。これまでにない快適さを保つワーキング・スペースを目指した作品だ。一面ガラス張りの建物内部には、まるで近代美術館の大型展示スペースのように広々としたエントランス。各部屋の天井は高さ3メートルもあり、自然光がふんだんに降り注ぐ居心地抜群のオフィス空間を実現している。また屋上には屋外テラスを、地上階には誰でも利用可能なカフェを設置し、周辺の環境と密に触れ合う感覚を保ちながら仕事ができる構造となっている。

お呼ばれしないでお宅拝見
個人邸宅編

様々な公共施設が公開されるのに紛れて、実は個人邸宅も公開されるのがオープン・ハウスの隠れた目玉でもある。今年は例年以上にRIBAアワードを受賞した邸宅が多く、ぜひ拝見しておきたい作品が目白押し。身近な住空間のデザイン、生活の参考にもなりそうだ。

 RIBA Award 2011Claredale Street

オープン期間: 9月17日(土)、18日(日)10:00-17:00
ツアー形式(最終は16:00開始)
Corner of Claredale Street and Teesdale Road E2 6DQ

Claredale Street

1960〜70年代に建設された高層アパート群が、荒廃したまま佇む ── ロンドンの各地で見られる光景だ。そんな一角だったタワー・ハムレッツ地区の一部を再生させたのが、こちらの集合住宅。公共と個人の空間をバランス良く融合させたこの作品は、外壁に銅板を用いたことでモダンな軽やかさを備えつつも、赤煉瓦でできた周辺住宅に違和感なくなじむよう配慮されている。また、建物の高さを低く抑えたことで近隣との一体感が生まれ、コミュニティーが自然に形成される。地区の再開発計画の一環として熟考された秀逸デザインだ。

 RIBA Award 2011The Shadow House

オープン期間: 9月17日(土)、18日(日)10:00-17:00
ツアー形式( 要予約: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
38a St Paul's Crescent NW1 9TN

The Shadow House

カムデン地区の小さな土地を利用して建築家の夫妻が手掛けたのは、「影の家」と呼ばれる住宅。外壁、そして内壁にも黒い煉瓦を使用した、その名の通り影のような家だが、天井や壁を大きくくり貫いたかのように広範囲に用いられたガラスの壁が、家にいながらも戸外にいるような、それでいて何かの影に潜んで暮らしているような、不思議な感覚にさせる造りになっている。人口が密集している上に住宅利用できる土地自体が少ない都市部でも、広々とした住空間を演出するのが可能だということを見事に体現して見せた作品。

年代ものならお任せ
再利用編

年代ものの建築物も多く残るロンドンでは、そういった古い建物を利用した再生建築もお手のもの。今年も、クラシカルな外観はそのままに内部を大胆に改装し、ともすれば取り壊されかねなかった建築物に見事に新しい息吹を吹き込んだ作品が、いくつか登場している。

 RIBA Award 2011Barking Central I & II

オープン期間:
9月17日(土)10:00-14:00、18日(日)11:00-15:00 
ツアーは17日11:00開始のみ
(要予約: 020 8227 3910 または このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください ) 
2 Town Square, Barking IG11 7NB

Barking Central I & II

1999年から再開発が進められているロンドン北東部郊外のバーキング地区では、70年代に図書館として利用されていた煉瓦造りの建物を中心とした、複合型コミュニティー施設が完成した。再生された元図書館が、カフェやギャラリーを備えた文化・教育施設に変貌を遂げたほか、ホテル、大型住居施設、店舗スペースなども新設し、郊外型都市の経済活動への十分な貢献が可能な構成となっている。また敷地を貫く並木道が周辺の通りと自然に交わるよう配慮された土地利用も、地域の活性化という観点から高く評価されている。

 RIBA Award 2011Town Hall Hotel & Apartments

オープン期間: 9月17日(土)& 18日(日)10:00-16:30 
ツアー形式(公式サイトにて要予約) 
Patriot Square E2 9NF

Town Hall Hotel & Apartments

ロンドン東部、ベスナル・グリーン地区にあった古い庁舎が、最先端のデザイン・ホテルからアパート、会議場からレストランまで備えた総合施設に生まれ変わった。20世紀初頭の建築に見られるエドワーディアン様式の外観や、大理石の壁、石膏の装飾といったオリジナルのデコラティブな要素の中に、まるでステージ・セットのようにコンテンポラリーな住空間が組み込まれている。新しい素材で様々な時代のデザインを再現することに心を砕いたという意味ではもともとのエドワーディアン様式に回帰する、古くて新しい斬新な空間。

文化の都ロンドンで出合う
異国情緒編

世界中の様々な人々が交錯する多文化都市ロンドン。宗教的な理由から、または固有文化の繁栄を願って、はたまた道楽者の趣味の集大成として、あちらこちらで民族的なモチーフが見て取れる。それこそが、この街がこの街たる所以ともなっているから面白い。

 RIBA Award 2011Leighton House

オープン期間: 9月17日(土)、18日(日)10:00-17:30
(最終は17:00入館)
12 Holland Park Road W14 8LZ

Leighton House

1864年建造のこの建物は、高名な画・彫刻家で探検家としても知られたレイトン卿の自宅として誕生した。メインの建屋となる「Arab Hall」は、卿が収集したイスラミック・タイルのコレクションを見渡す限りにあしらった贅沢な造りとなっており、卿の死後は美術館として利用されている。住居として使用されていた部屋も含め、その絢爛豪華な館は年月を経て激しく損傷を受けてしまったが、後に卿が暮らしていた当時に撮影された写真、そして当時の様子が記された記事などを基に見事に修復され、過去の栄華を取り戻すに至った。

 RIBA Award 2011Ravensbourne

オープン期間: 9月17日(土)11:00-15:00 
ツアーは11:00、11:30、12:30、13:00、14:00、
14:30 / トークは12:00、13:30開始
6 Penrose Way, Greenwich Peninsula SE10 0EW

Ravensbourne

グリニッジ地区に堂々とそびえるのは、デジタル・メディアを専門に教授するレイベンズボーン・カレッジ。デジタルと聞くとシンプルなコンテンポラリー建築を想像するが、こちらは中東系のエキゾチックなタイルやギリシャのモザイクのようであり、それでいて最新鋭のレーザー・カット技術が施された鋭利な形状の集合体のようでもある、一種独特の雰囲気を醸す外壁を採用。発祥地の特定ができない新しい次元のデザインに到達した。今後ますます文化の融合が図られていくであろうロンドンを代表する建築物の出現だ。

忘れてはならない英国らしさ
定番スポット編

アワード受賞云々を抜きにしても語られるべき建築物が、歴史都市ロンドンには多く存在する。一国の首都として重要な役割を担ってきたロンドンを支える歴史的建造物から、世界のモダン建築の先駆けとなった建築作品まで、ここでは一挙にご紹介しよう。

City Hall

City Hall

オープン期間:
9月17日(土)、18日(日)
10:00-17:00(最終は16:30入場)
The Queen's Walk, More London SE1 2AA

ロンドンの行政を司る市庁舎。螺旋(らせん)状になった構造は、外壁の表面積を減らしエネルギー効率を高める効果がある。

Royal Courts of Justice

Royal Courts of Justice

オープン期間:
9月17日(土)10:00-16:00
(刃物の持ち込み厳禁)
Strand WC2A 2LL

言わずと知れた司法の中枢、イングランド及びウェールズの司法を司る王立裁判所。総部屋数はなんと1000を超える。

 RIBA Award 2011Barbican Centre

Barbican Centre

オープン期間:
9月17日(土)12:00-15:00
(要予約: 0845 120 7500)
Silk Street EC2Y 8DS

無機質な打ち出しコンクリートを用いた、ブルータリズム様式を代表する建築。2007年RIBAアワード受賞作品。

Crossness Engines House

Crossness Engines House

オープン期間:
9月18日(日)10:30-16:00
(最終は16:00入館)
Access via Thames Water Gatehouse, Crossness ST Works, Belvedere Road, Abbey Wood SE2 9AQ

世界最大の蒸気式ビーム機関を持つ排水処理場。産業革命期の面影を色濃く残す、見事なアイアン・ワークが圧巻。

Mansion House

Mansion House

オープン期間:
9月17日(土)、18日(日)
9:00-17:00
ツアー形式(最終は16:00開始、
要予約: 9月5日までに希望のツアー開始時間を明記してMansion House Tours, Public Relations Office, City of London Corporation, Guildhall, PO Box 270, EC2P 2EJまで郵送)
Walbrook EC4N 8BH

金融街シティ地区の名誉市長が暮らす公邸。18世紀の建築様式に見られる優雅な石膏装飾や木彫術が堪能できる。

Royal Festival Hall

Royal Festival Hall

オープン期間:
9月17日(土)、18日(日)
10:00-23:00 
舞台裏ツアーは10:30、12:30、14:30開始(16歳以上、ハイヒールと大荷物は禁止) Belvedere Road SE1 8XX

サウスバンクを彩る芸術ホール。1988年には戦後の建築物として初めて、保存すべき建造物として指定された。

 RIBA Award 2011Lloyd’s of London

Lloyd's of London

オープン期間:
9月17日(土)10:00-17:00
(最終は16:00入場)
1 Lime Street EC3M 7HA

ロイズ保険ビル。金融街にそびえる異様な金属性の建築物と言えばこれ。ロンドンのモダン建築の先駆けだ。

見るだけじゃない
イベント編

建築物を見て回るだけではなく、設計趣旨や周辺エリアについての理解を深めれば、ロンドンという街がさらに面白くなる。普段何気なく見ている街の裏側を、トークやイベントを通して知っておきたい。キッズ・イベントも多く開催される。詳細はサイトを参照。

Open House Night Hike

開催日: 9月16日(金)
要予約: www.maggiescentres.org

がんを患った人やその家族をサポートする団体、「マギーズ・センター」とオープン・ハウスの協賛で行われるナイト・ハイク。夜のロンドン市内を、主要な建築物を見ながら練り歩く。距離は10、または20マイル(約16 / 32キロメートル)から選べ、収益金は同センターの活動資金に充てられる。参加料30ポンド。

Walking in the Metropolitan
Wild-The River Lea

開催日時: 9月15日(木)18:30-20:30
会場: Margaret Howell, 34 Wigmore Street W1U 2RS
オープン・ハウスの公式サイトにて要予約

ロンドン五輪を1年後に控え、開発が急ピッチで進むロンドン東部。周辺のリー・バレー地区も、1兆円以上の予算を掛けて再開発が行われているエリアだ。もともと都会の中の大自然であったこのエリアは、市が推進する低炭素経済地区にも指定され、大きく表情を変えつつある。トーク・イベントそのものはロンドン市内中心部で実施。

Amazing Architecture Activities -
For Families (Kids Aged 7-10)

7〜10歳の子供を対象にした、探索ゲームのようなプロジェクト。オープン・ハウスの公式サイトで申し込めばもらえる無料の冊子を片手に、建築物の調査を行おう。素材や光源、空間利用の違いを楽しく学べる仕組みになっており、見て回るだけでは退屈しかねない子供たちの知的好奇心を存分にくすぐってくれそうだ。

オープン・ハウス・ロンドン 基本情報

オープン・ハウス事務局は、ロンドンという街の魅力を市民にもっと知ってほしい、という志の下にスタートしたチャリティー団体だ。公式サイトでは、今年公開されている建築作品の基本情報が確認できるほか、PDF形式のガイドブック(3.50ポンド)なども購入できる。印刷されたガイドブックは、各会場か、大型の書店などで販売中(6ポンド)。 www.openhouselondon.org.uk

 

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