プラウマンズ・ランチ
Ploughman's Lunch
「この間、パブでプラウマンズ・ランチを食べたときに、真美さんがコラムで書いていたピッカリリが付いてきて、初めて食べたよ。酸っぱかったけど、おいしかった~」。
いつもこの連載を読んでくれている友人が、携帯電話からメッセージをくれました。彼女、実は前号のコラムを見た後にスーパーでピッカリリを買おうとしたらしいのですが、どぎつい黄色に恐れをなして、結局、買わずじまいだったのだそう。その後、たまたまパブ・ランチの付け合わせとして出てきて、とうとう初体験したというわけです。
前回の原稿で書いたように、私がピッカリリを初めて食べたのもコールド・ミートとチーズのランチで。友人からのテキストで思い出しましたが、そういえば英国ではこれを「プラウマンズ・ランチ」と呼ぶのでした。
プラウマンズ・ランチはパブでの定番メニューの一つ。たいていは、パンに加えてチェダーやスティルトンといった英国産のチーズ数種にハム(ときにはポーク・パイなど) と、ピクルス。そして彩りにレタスやトマトなどの生野菜、リンゴなどがワンプレートに収まっています。
ところで、名前についているプラウマンとは一体、誰なのでしょう。
「プラウ(Plough)」は農場を耕すための工具なので、プラウマンとは、つまり農夫のこと。従ってプラウマンズ・ランチは、農夫の昼食というわけです。
確かに、保温ジャー付きのお弁当箱でも持っていない限り、農作業中のランチ・タイムに温かい食事はちょっと難しいもの。だから、パンにハムやチーズといった冷たいおかずを取り合わせて農夫たちがランチにしていた、というのにはうなずけます。
ただし、パブでの食事メニューとしてのプラウマンズ・ランチの歴史はそれほど古くはないようです。というのも、これがパブに登場したのは1950年代半ばごろ。広く知られるようになったのは、1960年代にチーズの販促キャンペーンとして「プラウマンズ・ランチ」をパブで食べることを大々的に宣伝したためと言われています。1983年に公開された、タイトルがずばり「プラウマンズ・ランチ」という映画の冒頭でも、主人公がパブでプラウマンズ・ランチを食べながら、その由来について話している場面が登場しています。
歴史についてはさておき、件(くだん)の友人はプラウマンズ・ランチにピッカリリが添えられていたと言っていましたが、ピッカリリ以上に忘れてはならない付け合わせに、スイート・ピックルがあります。これは細かいさいの目に刻んだ野菜入りの、茶色くてどろりとしたチャツネ。酸味がしっかり効いているのがいかにも英国人好みの味で、間違いなくチーズによく合います。英国では1922年に発売が開始された、ブランストンというブランドのものが人気です。
プラウマンズ・ランチの作り方(一人分)
材料
※分量はそれぞれ自分の好みで調整
- チェダー・チーズ、スティルトン・チーズ(そのほか、好みのチーズなんでも)
- パン(好みのもの)
- ハム
- リンゴ
- トマト
- レタス
- ピクルス (小玉ねぎ、ガーキンなど)
- スイート・ピックル
- ピッカリリ
- バター
作り方
- パン、チーズ、ハム、リンゴ、野菜を食べやすい大きさにスライスしてお皿にバランス良く並べる。
- ピクルス、スイート・ピックル、ピッカリリ、バターを付け合わせて出来上がり。
memo
プラウマンズ・ランチの内容に厳格な定義はないようですが、パンとチーズは外せません。ゆで卵やポーク・パイ、スコッチ・エッグなどを加える場合もあるようです。パブ・メニューという意味ではエールやサイダーなどの飲み物を一緒にというのがお約束とも言われますが、もちろん、お好きなドリンクとともに召し上がれ。