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Fri, 20 December 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 56

ピッカリリ
Piccalilli

Piccalilli

英国人のキッチンを見せてもらって楽しいのは、棚にチャツネやジャムなど、瓶詰めの保存食がたくさん並んでいるところ。手作りのものに限らず、市販品でも、ほんとうに多くの種類の保存食があります。

私が英国の保存食を作るようになったのは、義母が母親から教えてもらったというリンゴのチャツネをプレゼントしてくれたのが大きな理由の一つ。そのとき、一緒にレシピを教えられたのが始まりでした。以来、様々な種類のチャツネを作っていますが、実は去年まで試す気にならなかった保存食が「ピッカリリ」でした。

この、ちょっと不思議な名前の食べ物。まずは(私にとっては)発音が難しいということもあって、近づくのを避けていたのかもしれません。でも、本当のところは、スーパーで売られている瓶入りのピッカリリの色がド派手な蛍光イエローのせい。あまりに強烈な印象で、なんとなく手を伸ばせずにいたのです。幸か不幸か、夫の実家ではピッカリリは定番保存食には位置付けられておらず、一度も食べるチャンスがなかったのも、これを長い間試すことのなかった言い訳。でも、そんな「食べず嫌い」を払拭してくれたのが、友人クレアお手製のピッカリリでした。

ランチをしにおいでと誘われて行った彼女の家で、チャツネやガーキン(小さなキュウリのピクルス)などと一緒にテーブルに並んでいたのがそれ。

「コールド・ミートとチーズでいい?」と、いかにも英国らしい気さくなランチ。でも、彼女の手作り保存食のおかげで、お皿の上はお洒落なカフェで出されているような、見た目にも美しい一品となりました。

そこで初めていただいたピッカリリは、さっぱりとしていて、そしてほんの少し酸味と辛みがあって、ハムとの相性も抜群! 想像していたよりも、野菜、特にカリフラワーの歯ごたえがあり、サラダのようです。

「ピッカリリがこんなにおいしいとは知らなかった」と感激する私に、「市販品とは違うでしょう?」とクレアが笑います。「市販品」を食べたことはないので比較はできなかったものの、彼女のピッカリリがおいしい、ということは断言できました。

ピッカリリは、「インディアン・ピックル」としても知られ、元は「paco-lilla」「peccalillo」「piccalillo」などとも綴られ ていたようです。18世紀以降、料理書にレシピが掲載されています。ターメリックが入っていることからも、インド料理の影響を受けているのでは、と言われますが、カリフラワーやきゅうり、玉ねぎにキャベツ、人参やインゲンなど、様々な野菜にイングリッシュ・マスタードまで入っていて、英国の伝統的保存食と呼んでも間違いない存在です。

私と同様に食べず嫌いをしていた方がいたら、ぜひ手作りのピッカリリをお試しあれ。

ピッカリリの作り方(340g の瓶3個分)

材料

  • カリフラワー、きゅうり、玉ねぎ、人参、インゲン、パプリカ ... 全部合わせて1kg(カリフラワーをやや多めに)
  • イングリッシュ・マスタード(粉) ... 10g
  • 塩 ... 50g
  • ターメリック ... 10g
  • マスタード・シード ... 15g
  • クミン・シード ... 小さじ1
  • サイダー・ビネガー ... 600ml
  • グラニュー糖 ... 100g
  • コーン・フラワー ... 20g

作り方

  1. 野菜をすべて一口サイズに切り、ボウルに入れて塩を全体にまぶし、上からふきんをかけて一晩置く。
  2. ❶を水で洗い、よく水気を切っておく。
  3. ターメリック、イングリッシュ・マスタード、マスタード・シード、クミン・シード、コーン・フラワーを小さめのボウルに入れ、大さじ2のサイダー・ビネガーを加えてよく混ぜる。
  4. なべにグラニュー糖とサイダー・ビネガーを入れ、沸騰させる。
  5. ❹を少々、❸に加えて混ぜ、それを❹に戻して混ぜる。
  6. ❺に❷の野菜を入れ、全体によく混ぜる。
  7. 殺菌したガラス瓶に入れて蓋を閉め、味がなじむまで1カ月以上待ってからいただく。
memo

野菜は身近にあるどんな野菜を入れてもいい、とのことのようですが、カリフラワーは必須。酸味がかなり強い食べ物なので、好みでビネガー、砂糖の量を調整してください。味がなじむまでの間、辛抱強く待ちましょう!

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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