Sat, 04 May 2024

本当に使える会計

経営において会計は身を守る防具だけでなく、勝ち抜くための武器にもなります。英国日系企業の経営者が知っておきたい会計トピックを、会計のプロが分かりやすく解説。

繰延税金について

繰延税金は、財務諸表の作成者とこれを読む人の双方にとって厄介な分野です。関連するガイダンスは、英国の主要な会計基準であるFRS102の第29項に記載されています。

なぜ繰延税金を財務諸表で開示するのでしょうか。

繰延税金は、企業の税務申告で報告する課税所得と、財務諸表で報告する包括利益全体との間の時期的差異によって発生します。FRS102では、取引の税務評価の時期に関係なく取引の税効果を財務諸表で認識するよう求めています。繰延税金を認識することにより、損益の変動が少なくなり、事業の利益がより正確に把握できます。

繰延税金負債とは何ですか。

FRS102における繰延税金負債とは、当期および前期の財務諸表で認識された取引と事象に対する将来の税効果に関して、将来の報告期間に支払うべき税金と定義しています。

繰延税金資産とは何ですか。

繰延税金資産とは、以下の項目について将来の報告期間で回収可能な税金と定義されています。
• 当期および前期の財務諸表で認識された取引と事象の将来の税効果
• 未使用の税務上の欠損金の繰り延べ
• 未使用の税額控除の繰り延べ

未使用の税務上の欠損金およびそのほかの繰延税金資産は、繰延税金負債の戻し入れ、またはそのほかの将来的な課税所得に対して回収される見込みがある範囲でのみ、認識しなければなりません(ここで、「見込みがある」とは、見込みがないよりは可能性が高いものと定義されます)。未使用の税務上の欠損金がある企業は、発生した繰延税金資産を回収するのに十分な、将来的な税務上の利益があることを確認しなければなりません。これは、繰延税金資産の認識において「全てかゼロのどちらか」というアプローチではありません。繰延税金資産の一部が回収される見込みがあっても、残りが回収される見込みが低い場合もあります。

全ての時期的差異が認識されるのですか。

繰延税金は一時差異については認識されますが、非課税または算入できな利益や費用といった永久差異については、非常に限られた状況を除き認識されません。最も一般的な一時差異のひとつは、キャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)の加速償却を選択している固定資産の正味帳簿価額と、減価償却後の税務簿価との間の差異です。

繰延税金の算出には現在の税率を用いますか。

FRS102では、貸借対照表日までに制定、または実質的に制定された税率と税法のうち、時期的差異の解消に適用することが見込まれるものを用いて、繰延税金を算出するよう企業に求めています。2021年財政法では、英国の法人税の税率が年間25万ポンドを超える利益の企業については、2023年4月1日に19パーセントから25パーセントに引き上げられました。ただし、5万ポンド以下の利益については19パーセントの少額利益税率が適用され、5万ポンド超で25万ポンド以下の利益については段階的に税率が上がります。これは実質的に2021年5月24日に制定されたため、2021年5月24日以降に終了する会計期間については、2023年4月1日以降に解消が見込まれる時期的差異による繰延税金を、改正後の税率で算出することになります。

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