第179回: 英国の監査制度改革案
英国政府は監査制度を大幅に改革する方針と聞きました。そのきっかけは何ですか。
改革案は以前から検討されていましたが、これは主として、建設会社カリリオンや旅行会社のトーマス・クックなど、有名企業の破綻を受けたものです。こうした事件により、監査プロセスの重大な弱点が明らかになり、幅広い批判が巻き起こりました。国民からの信頼が大きく損なわれたため、政府はいくつかの見直しに着手し、それが現在の改革案につながりました。
改革案の要点は何ですか。
中小企業の監査を免除している現在の監査対象の基準を引き下げることで、監査を義務付けられる非公開会社が増えます。また、監査サービスのビッグ4会計事務所への受注集中を避けるため、大企業は監査の一部を準大手の監査法人に依頼することが義務付けられます。英財務報告評議会(FRC)は、より強力な法定規制機関である監査・財務報告・企業統治監督機構(ARGA)に置き換えられ、権限が強化されます。監査人の訓練や認定に関する要件が厳しくなり、監視も厳格になります。改革案には、財務報告に関する内部管理と取締役の説明責任を強化する措置も含まれており、強靭で信頼性の高い企業セクターの構築を目指しています。
こうした改革は非公開会社にどのような影響を与えますか。
監査人への依頼や財務報告システムの更新により、コンプライアンスのコストが増大します。特に中小企業への影響が大きくなります。一方で、監視と説明責任の強化で財務規律と透明性が向上し、結果として利害関係者の間で企業への信頼が高まります。大企業の場合、シェアード監査の導入によって、実務上の課題や管理上の間接費が増加する可能性もあります。
なぜ監査要件を多くの企業に拡大する必要があるのですか。
より幅広い企業で透明性と説明責任を高めるために必要であると考えられています。現行制度では、非公開会社で監査を義務付けられているのは大手企業と大手グループに属する企業のみのため、多くの企業に対する監視が不十分です。監査を受ける基準を引き下げることで、政府は厳格な財務監視の対象となる企業を増やし、財務報告の正確性と信頼性を全体的に向上させることを目指しています。
FRCをARGAに置き換えると、監査業界にどのような影響がありますか。
ARGAは、義務を怠った監査法人に多額の罰金や制裁を科すことができるなど、監査基準の執行において大きな権限を持ちます。この改正により、新しい規制当局が監査業界を監督し、企業に財務報告への説明責任を負わせる体制が整うため、監査の質と信頼性が向上することが期待されます。
企業はこうした監査制度の大幅な改革に備えて何をすべきですか。改革案は現時点では単なる提案ですが、法制化のプロセスが進むにつれて細かな問題が表面化する可能性もあります。施行時期などが明確になるにつれて、企業は現在の財務報告とガバナンスの慣行を見直し、改革後の規制にどのように対応するかを確認することから始める必要があります。早い段階で法律や財務のアドバイザーに相談することが重要となります。事前に準備をすることで、企業は潜在的な混乱を軽減し、改革を活用して業務を強化することができます。
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ジョン・フィッシャー
監査・会計 パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。