第181回: 英国子会社設立からその後の必要関連対応について
日系企業の英国への進出の際、主に子会社設立からその後必要となる会計・税務プロセスついての基本的な手順や関連情報について触れていきます。
子会社とUK Establishmentとの違いは何ですか。
子会社は独立一法人となりますが、UK Establishmentは親会社の一部となり、独自の決算が求められないことから、英国での法定監査も受ける必要ありません。しかし、法人税計算のために財務諸表の用意は必要となり、本店支店会計処理や移転価格のポイントで注意が必要です。またカンパニーズハウスへ毎年親会社の決算書(財務情報)の提出が必要となることもあり、撤退時の必要対応も異なるため、会社方針やプランと突き合わせての検討が必要です。
子会社設立にはどういった手続きが必要となりますか。
会社名の決定から資本金や役員の確定、設立書類準備などが必要です。日本でいう会社定款は、英国ではスタンダードのテンプレートをそのまま使用するケースも多く、必要な内容はそこに網羅されています。また、少なくとも取締役1名の任命が必要ですが、英国在住者である必要はなく、資本金も最低£0.01で問題ありません(登記手数料などの諸経費別途必要)。これら必要情報の提出を行えば、24時間以内で登記完了可能です。ただ、2024年3月に経済犯罪及び企業の透明性に関する新法のECCTAが施行され、カンパニーズハウスは積極的に会社登記内容に対し異議や却下できる権限が与えられたため、提出情報には細心の注意が必要です。
子会社の年度末を本社に合わせる際の注意点は。
登記の際は自動的に、設立した月末から12カ月後と定められます。これは変更が可能ですが、期間延長(最長18カ月)のための年度末変更は5年に1度のみとなるため、この点は注意が必要です。なお、期間短縮の変更には制限はありません。
例: 2024年10月15日設立の初年度末は2025年10月31日→2025年12月31日に変更(15カ月決算)
登記後、税務当局への連絡は何がありますか。
- 法人税: 英国にて拠点開設された際、自動的に税務当局より、法人税申告案内と法人番号記載レターが登記住所に届きます。納税期限は年度末から9カ月後です。
- 給与(源泉徴収):英国で従業員を雇用する場合、所得税と国民健康保険の管理のためにPAYEに登録する必要があり、給与支給に合わせて申告が必要となります。
- VAT: VAT対象売上がVAT閾値(2024年現在9万ポンド)を超えた場合登録が必要です。または自主的に登録可能な場合もあり、活動内容や詳細により、登録の必要性やタイミングが異なるため、専門家との確認をお勧めします。
雇用が開始する場合、PAYE登録は急いだほうがよさそうですね。そのほかでは準備が必要となるものは。
監査が必要となる場合は監査法人の選定も重要事項となります。また、設立後もConfirmation Statementや年次決算書などの、カンパニーズハウスへの提出物もありますし、駐在員派遣の場合はそのビザ関連対応、そして従業員雇用に付随する雇用契約や年金などの福利厚生などに関するものもあります。
特に近年、新英国拠点を設立された日系企業からよく耳にするのは、英国の法人用銀行口座開設に非常に多くの手間と時間がかかったという声です。お早めに必要関連箇所への連絡を行い、情報収集されることをお勧めします。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
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浦崎絵夢
ビジネスディベロップメント・ダイレクター
4大会計事務所での駐在員税務関連業務や金融リサーチ会社での経験有り。2009年の日系部署発足の礎を構築。幅広い業務でクライアントやスタッフ間の調整役を務める。