第182回: 2024年英国秋季予算案
労働党政府の最初の予算案には、重要かつ長期にわたる多くの改正があります。
所得税と国民保険料(NIC)の主な改正点は何ですか
基礎控除の据え置きのほとんどが2028年に終了し、その後はインフレ率に合わせて引き上げられます。従業員が負担するNICに引き上げはありませんが、雇用主が負担するNICは来年4月から1.2%引き上げられて15%となり、雇用主の負担が発生する所得額は9100ポンドから5000ポンドに引き下げられます。
これは雇用主にとって大きな痛手となりますが、雇用主を助ける措置は何かありますか。
企業のNICの負担を軽減する雇用主NIC控除が同時に現行の5000ポンドから1万500ポンドに引き上げられます。
キャピタルゲイン税(CGT)にも何か変更はありますか。
非居住用不動産の売却益に対するCGTの税率は、個人の所得水準に応じて現行の10%と20%からそれぞれ18%と24%に10月30日から引き上げられました。居住用不動産に対する税率の引き上げはありません。投資家控除(Investors' Relief)の生涯控除額は、24年10月30日以降の売却については100万ポンドに減額されました。
ノンドミサイル(非永住者)に影響を与える変更はありますか。
予想通り、ノンドミサイル税制は25年4月6日から廃止され、新しい居住者税制が導入されます。先に発表されていた一時的本国送金制度(TRF)は3年間に延長されます。TRFでは、英国への資金流入を促進するため、国外の所得とキャピタルゲインに軽減税率(12~15%)が適用されます。
国外勤務日に対する控除の変更についても耳にしましたが、これはどのようなものですか。
国外勤務日に対する控除は4年間に延長されて、ドミサイル・ベースではなく居住ベースとなり、送金ベースの課税の廃止により、資金を分けて英国への送金を管理する必要がなくなります。
以前に発表された法人税の減税や軽減措置はどうなりますか。
法人税の基本税率は25%に据え置かれ、小規模利益税率も27年3月31日までは19%に据え置かれます。法人税のロードマップが公表され、税務上の減価償却であるキャピタル・アローワンス、研究開発(R&D)、国際課税、税務行政などの主要分野で法人税の枠組みに関する政府の計画の概要が示されました。研究開発控除は現行税率に据え置かれます。ゼロ・エミッション車と電気自動車用充電設備に対する100%の初年度控除(First Year Allowance)は、26年3月31日までさらに1年間延長されます。
居住用不動産に影響を与える変更は何かありますか。
セカンドハウスに対する土地印紙税(SDLT)は、24年10月31日から2%引き上げられて5%。企業が50万ポンドを超える居住用不動産を購入する際に課されるSDLTの税率は、25年4月より15%から17%に引き上げられます。
雇用主が注意すべき変更点はありますか。
現物給付の給与計算の義務化は26年4月に実施され、税のデジタル化(Making Tax Digital)も同時期に開始される予定です。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
チー・ラム
アソシエートパートナー
DeloitteとPwCに15年以上勤務し、駐在員税務に関するアドバイスを多くの多国籍企業に提供。英国税務のコンプライアンス、HMRCへの対応、渡英前の個人・企業税務計画なども得意とする。