第197回
IFRS18適用でPLの意味が変わる=経営判断・KPI・ガバナンスが変わる
IFRS18は損益計算書の表示方法を大きく見直す新しい会計基準であり、従来のIAS1を置き換えるものです。収益や費用を営業・投資・財務などの区分に整理し、企業ごとにばらつきのあった利益指標の表示を統一することを目的としています。適用は2027年(比較年度は26年)からで、多くのIFRS適用企業に影響が及びます。IFRSを導入している在英日系企業の多くはFRS101を採用しているので、その点も考慮しつつIFRS18の影響について考えてみます。
― FRS101適用下ならIFRS18の影響は限定的ですか。
必ずしも限定的とはいえません。FRS101は開示の簡素化を認める枠組みですが、認識・測定および表示についてはIFRSに従う必要があります。IFRS18の中核は損益計算書(PL)の構造変更であり、これは開示ではなく表示ルールに該当します。そのため、FRS101適用企業であってもPLの構成は見直しが必要になります。
― 具体的に何が変わるのでしょうか。
主な変更は、収益・費用の区分が営業・投資・財務などに整理され、「営業利益」の位置づけが明確化される点です。これにより、これまで企業ごとに異なっていた利益指標の意味が統一されます。例えば、従来は営業外としていた項目が営業区分に含まれる可能性もあり、同じ「営業利益」でも従来とは異なる意味を持つことになります。
― 数字が変わらないのであれば、実務への影響は小さいのでは。
いいえ、影響は小さくありません。IFRS18は「数字」ではなく「意味」を変える基準です。そのため、過年度比較や予算対比において、同じ指標をそのまま比較すると誤解を招く可能性があります。特に、日本本社へのレポーティングでは、従来の定義との違いを明確に説明する必要があります。
― KPIや経営判断にも影響はありますか。
大きな影響があります。多くの日系企業では営業利益やEBITDAをKPIとして使用していますが、IFRS18によりその構成要素が変わる可能性があります。その結果、業績評価や意思決定の前提が変わる可能性があります。また、KPIに連動したインセンティブや銀行コベナンツについても、定義の見直しが必要になる場合があります。
― なるほど、確かに注意が必要ですね。
ガバナンスへの影響も考慮する必要があります。IFRS18では、経営者が使用する業績指標(MPM)に対する規律が強化されます。FRS101により一部開示は簡素化される可能性がありますが、実務上は「どの指標を使い、どのように説明するか」という説明責任がこれまで以上に求められます。特に調整後利益などを用いている場合、その定義や一貫性の確保が重要になります。
― 実務上、どのように対応すべきでしょうか。
まずは、自社のPL項目がIFRS18の新しい区分にどのように再分類されるかを整理することが重要です。その上で、KPIの再定義、日本本社への報告との整合、契約条項への影響を検討する必要があります。FRS101適用企業でも、単なる開示対応ではなく、経営管理全体を見直すプロジェクトとして対応することが望まれます。
IFRS18の本質は、財務数値の「見せ方」を変えることだけではなく、数値の意味を再定義することで、経営判断やガバナンスの在り方そのものに影響を与える点にあります。FRS101を適用している企業にとっても、この変化を正しく理解し、早期に備えることが重要です。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
高西祐介 監査・会計 パートナー 英国大手会計事務所にて多くの英系大企業監査を担当。日系ビジネス発展への貢献を志して現職へ。監査、ファイナンスデューデリ、組織再編アドバイスを専門とする。



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