Bloomsbury Solutions
Fri, 22 November 2024

異文化相互理解を深めるための ビジネス文化塾

日本人と英国人が、一つの職場で働く際の問題点とその解決方法を指南する

グレアム・ロレンス グレアム・ロレンス Graeme Lawrence 30年間の日系企業勤務、異文化コンサルタントを経て、現在社内通訳者・翻訳者。静岡県立大学国際関係学部卒。2019年のSOASビジネス日本語スピーチ・コンテスト優勝。
www.graemelawrence.com

第5回 「社員が在宅勤務を希望しているが……?」

このコラムを書いているのは3月初め、新型コロナウイルスが世界中に広がっている真っ最中です。そのなかで話題になっているのが「在宅勤務」。特にリンクドインのようなビジネスパーソン向けSNSでは活発な議論がなされています。職場内での長時間勤務が定着している日本でもついに在宅勤務「テレワーク」が以前に比べてより広く導入され始めており、日本のビジネス文化にとって大きな変革ですね。

日本版の在宅勤務が英国版とどのような違いがあるか、どんな形を成すか、新型コロナウイルスの感染拡大が収まった後にも継続的に実施されるかどうか、文化的な観点からも非常に興味深く、関心があります。

筆者が欧州の日系企業で働く現地社員と話すとき、社員たちは「日系は在宅勤務の導入に対して消極的だ」と指摘します。読者の方の会社にも在宅勤務を希望している社員がいるでしょうが、情報セキュリティーや人事管理が心配で、どうすればいいのか、と躊躇している日本人の経営者の方もいるではないかとお察しします。

そこで日系企業で在宅勤務を経験した私の話が参考になればと思います。会社にとって在宅勤務のメリットは、何といっても効率が良いことです。「通勤で時間と労力を無駄にするよりも、その分を仕事に充てて、早く仕上げてもらった方が会社にとって助かる」と私は日本人上司に言われました。「上司に信用されているんだ」とやる気が出たのを覚えています。通勤時間がなくなったことはもちろん非常にうれしいことですが、それにもまして、上司に認めてもらっていることがうれしかったです。上司の期待を裏切りたくないため、会社への忠誠心は増し、一層仕事に一生懸命取り組みました。

ただし、在宅勤務をする場合の注意点の一つは、勤務時間です。「在宅勤務=サボっている」と思われてしまうことを気にする現地社員も実際にいます。そのため実際に出社して勤務するよりも、自宅で働く勤務時間の方が長くなってしまうこともあり得ます。したがって、時間管理は非常に重要になってきます。これは長時間労働を評価する日系企業ではなおさらそうです。在宅勤務を許可する場合、経営者と社員との間に誤解が無いようにあらかじめ在宅勤務時間を再確認することをお勧めします。

もちろん、仕事場と自宅を別に分けるべきと考える人や在宅勤務に向いていない人もいると思いますし、在宅勤務が適さない職種もたくさんあります。同僚との直接対話も大切ですので、私も毎日在宅勤務をしたくはありませんが、出社が困難な場合や急ぎの仕事を仕上げなければならないとき、在宅勤務という選択があって欲しいですね。選択肢があれば、英国によく起こる公共の交通機関の乱れや悪天候の日にも支障なく仕事をこなせますので、社員も顧客も助かります。環境にも優しいですし。

私は専門家ではないので、ITセキュリティーについて言及する立場にありませんが、技術の進化により、最近、小規模の企業でもテレビ会議に対応できるようになりました。今回の新型コロナウイルスで、世界中で働き方に変化が見られると思います。いろいろな勤務体制を試す好機かもしれません。

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