仮釈放委員会が性犯罪常習者の釈放決定 - 高まる抗議の声
1月4日、100人以上の女性に対しレイプを含む性的攻撃を行ったとされるジョン・ウォーボーイズ受刑者(60歳)が、10年間の拘禁期間を経て、仮釈放される予定であることが分かりました。同受刑者はロンドンの黒タクシーの元運転手で、女性の乗客に薬物を混入したシャンパンなどを飲ませた後、意識不明状態となった女性たちに後部座席で性的な攻撃を行っていました。2009年に19の違法行為で有罪となりましたが、このとき、ウォーボーイズは「公共保護のための不確定禁固」という刑を与えられました。凶悪な犯罪を行い有罪となった人物について、一定年数の禁固刑を言い渡す一方で、受刑者が公共に危害を与えないと確信できるまでは釈放しないという制度によるものです。2012年、この制度は廃止されましたが、ウォーボーイズの判決時はまだ制度が継続しており、最低8年間は服役することになりました。そして、昨年11月、仮釈放委員会がウォーボーイズの状況を審査し、仮釈放という決断を出したのです。
こうして2009年に有罪となったウォーボーイズですが、更に翌年には被害に遭ったという女性たちが続々と警察に通報するようになり、検察局の見立てによると、その数は2002年から2008年で100人を超えるまでになりました。
これほど大勢の被害者がいる受刑者が10年間の服役の後に釈放されること、有罪判決につながった事件の被害者に十分な事前通知が行われないままに釈放が発表されたことに大きな非難の声が上がりました。仮釈放委員会のニック・ハードウィック委員長はすべての被害者に事前通知がなされなかったことを謝罪しましたが、一方で同受刑者に再犯の危険性がないことに「自信を持っている」と述べています。
こうした返答は被害者には納得がいくものではありませんでした。被害者のうち2人の女性が仮釈放委員会の決定が正しいかどうかの司法審査が行われるように運動を開始。司法審査とは、裁判官が公的機関(この場合は仮釈放委員会)による決定の合法性を審査することです。多くの場合、決定に至る過程を吟味することになります。
政府内にも司法審査を求める声が上がっていましたが、デービッド・ゴーク司法相は審査を行わないと議会で述べました(1月19日)。仮釈放委員会は司法省の建物の中に入っていますが、政府から独立した存在ですので、その決断に干渉する形にしたくなかったのかもしれません。
仮釈放委員会はイングランド・ウェールズ地方、スコットランド地方、北アイルランド地方に同様の組織がそれぞれ設置されており、受刑者が仮釈放された場合に社会に与えるリスクを査定したり、受刑者をセキュリティーが高い刑務所から低い刑務所に移動させるかどうかを審査したりします。今回の件では、委員会は363ページに上る事件に関しての書類に目を通し、ウォーボーイズ自身に質問をし、心理学者、刑務所及び保護観察の担当者などから事情を聞いたそうです。受刑者がその生活態度を改めたかどうか、仮釈放後にどこに住み、どのような支援が提供されるかを考慮した後で、仮釈放の決断を下したのです。最後の決め手になったのは、受刑者が再犯する可能性があるかどうか。今回はその可能性が低いという判断になりました。
ウォーボーイズが仮釈放で市中に戻ってきた場合、治安を不安視する声が上がるのは間違いありません。2016年、イングランド・ウェールズ地方で仮釈放を与えられた受刑者は約3800人。この中で再犯となったのは22人のみでしたが、だからといって不安が消えることはなさそうです。
1月26日、高等裁判所は、被害者2人による司法審査開始への訴えを受けて、ウォーボーイズの仮釈放を一時停止する決定を下しました。審査を開始するかどうかは今月6日と8日に行われる聴聞後に決定されます。その処遇がどうなるか、しばらく熱い話題になりそうです。