「女性平等党」が党大会、女性の社会進出はどこまで進んでいるのか - 日英を比較すると?
「女性平等党」(Women's Equality Party)という政党の名前を聞いたことがありますか? 恐らく、「知らない」と言う方が多いのではないでしょうか。二大政党制が長く続く英国では、与党・保守党と最大野党・労働党については毎日報道がありますが、そのほかの政党はそれほど多くは取り上げられません。2015年まで保守党と連立政権を担っていた自由民主党(LDP)、2016年の欧州連合(EU)への加盟を維持するかどうかを問う国民投票の実現に大きな役割を果たした英国独立党(UKIP)も、最近は影が薄い存在になってしまいましたね。
女性平等党とは2015年、テレビでジョークを連発する人気司会者として著名なサンディー・トクスビグと、ジャーナリスト・作家のキャサリン・メイヤーが立ち上げた新政党です。いくつかの選挙戦に候補者を出しましたが、現時点では国政及び地方レベルで議席を獲得するところまで至っていません。筆者は、性的ハラスメントや性犯罪に抗議の声を上げる「#MeToo」運動に賛同する一人ですが、英国で今更、女性の平等を目指す政党が本当に必要なのかなと若干の疑問を抱いていました。そこで、女性平等党の現状を知るために党大会(9月7日~9月9日)に出かけてみました。
党大会の参加者はほとんどが女性で、複数の参加者が「初めて政党の党員になった」、「こんな政党の登場を待っていた」と口々に語っていたのが印象に残りました。確かに、女性を旗印として現状を変えようとする政党は英国にはほかにないのです。
では、英国での女性の地位はどうなっているのでしょう? 下院での女性議員の比率は32%、上院は25.7%です(日本は衆議院では女性が10.1%、参議院で20.7%)。労働市場を見ると、16歳~64歳の女性で働いている人の割合は1970年代初期では約半分でしたが、近年は70%を超えるようになりました。昨年時点では労働人口の46.5%が女性です。英国全体の男女の賃金格差は昨年時点で18.4%(女性の賃金が男性の賃金よりも18.4%低い)となっています(日本は約26%)。上場企業トップ100社の経営陣の中で、取締役の28%が女性です。10年前は11%でしたので2倍以上増えましたが、現状では半分にも満たないのです。
昨年来、英国では男女の賃金格差問題が大きくクローズ・アップされています。党大会のあるセッションで、トクスビグはこんな逸話を紹介しました。人気クイズ番組「QI」の司会役としてもらう自分の報酬が前任者で著名男優スティーブン・フライの報酬よりも「40%低かった」そうです。トクスビグ自身が大物司会者ですが、「女性であるがために低い報酬となった」と受け止められました。報酬の差には性別以外の理由があったのかもしれませんが、BBCの社内調査では男女の賃金格差は9%とされており、格差解消が課題であることは間違いありません。
日本に目を転じると、より残念な状況が浮かび上がってきます。世界の大手企業で構成される民間組織「世界経済フォーラム」が毎年公表する「ジェンダー・ギャップ指数」(女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析)によると、英国は144カ国中15位ですが、日本は114位です。また、家事分担の男女差も見逃せません。リンナイ社の調査によると、共働きの家庭で「夫婦で家事を分担していますか」という問いに米国では93%が「している」と答えたのに対し、日本では56%でした(英国は不参加)。また、男女が1日にどれだけの時間を無給の労働(家事を含む)に費やしているかを、経済協力開発機構(OECD)が調査したところ、英国では男性が141分、女性が258分という結果になりました。女性は男性の2倍弱です。これで驚いてはいられません。日本では女性が299分であるのに対し、男性は62分と大きな差が付きました。女性平等党は日本にこそ必要かもしれませんね。