2018年の流行語は「toxic」(有毒な)- 英オックスフォード辞書が選出
皆様、新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
日本では、昨年2018年を表す漢字が「災」になりましたが、英国にも、その年を一言で表す言葉を選ぶ習慣があります。
その役割を担うのは、英オックスフォード大学出版局の辞書部門「オックスフォード・ディクショナリーズ」で、2018年の「今年の言葉」は「toxic」でした。「有毒な」という意味のほか、心身に影響を及ぼす「有害な・心をむしばむ」という意味もあるようです。
オックスフォード・ディクショナリーズはその年の「エソス、ムード、流行っていたこと、文化的重要性を持つ」と思われる言葉を選んでいるそうですが、同社のウェブサイトで検索された言葉の中でも目立ち、前年よりも検索率が45%増加したのが「toxic」でした。
「toxic」という言葉が英語に最初にお目見えしたのは17世紀で、元は中世ラテン語「toxicus」(毒を盛られた)からきているそうです。そのラテン語自体も元々は古代ギリシャ語から発生したものでした。
昨年「toxic」同様によく検索されたのが「chemical」(化学の)、「masculinity」(男らしさ)、「substance」(物質)、「gas」(ガス)、「environment」(環境)、「relationship」(人間関係)など。一連の言葉が頻繁に検索された理由として、英南部ソールズベリーでロシアの元スパイの男性とその娘が毒殺未遂事件に遭遇したこと、これに関連して有毒化学物資の管理について関心が高まったこと、米国ではハリケーン発生後に有害廃棄物の処理が問題視されたこと、インドを始めとした国で有害廃棄物を違法に燃やす企業に大きな批判が発生したことなどが挙げられています。
「有害な」と「環境」の2語は、職場との繋がりで検索されたことが多かったようで、働くことによる心身への負の影響、過労、性的ハラスメントなど、昨年は確かに仕事がらみで「有害」と呼ばれる現象が頻繁に報道されました。
職場でのセクハラに抗議して、米グーグルの社員が職場放棄した事件がありましたし、#MeToo運動が盛り上がり、「男らしさ」も話題の種になりました。例えば、米最高裁の判事候補となったブレット・カバノー氏に対し、10代のときに性的暴行を受けたという女性が告発する事件があり、これも大きなニュースになりましたね。
また、「今年の言葉」には選ばれませんでしたが、候補となったものの一つに、「cakeism」と言う語があります。「互いに矛盾する選択肢の両方を、自分に有利に使うことができるとする考え方」を意味するのだそうです。これは主にブレグジット交渉時の英国政府の態度を揶揄(やゆ)したもので、おいしいもの(=ケーキ)は全部頂こうとする状況を表しています。
ソーシャル・メディア関連の言葉では、「incel」(女性を性的に魅了することができないと考える、オンライン・コミュニティに属する若い男性)、「orbiting」(直接のコミュニケーションを止めても、その人物の行動をソーシャル・メディアなどで監視を続ける行為)などがありました。
2016年の「post turth」(感情や個人の信念の方が、客観的な事実よりも世論形成に影響を与える状況)、2017年の「youthquake」(若者たちの行動が社会・文化・政治にもたらす重大な変化))、そして2018年の「toxic」に続き、今年はどんな言葉が選ばれるでしょう。
筆者は、ブレグジット関連、あるいはメイ首相の進退を表現する新しい言葉が、また一つ生まれるのではないかと予想しています。昨年末にはフランスで、マクロン政権に反発する人々が黄色いベストを着て抗議デモを繰り広げました。草の根の抗議運動が政治に大きな影響を及ぼす現象にも新たな名称が付くかもしれません。明るい話題が新しい言葉を生み出すようだといいのですが。