政党の党大会、一堂に結集して、党の方針を議論 - 党首の評価がここで決定する
9月24日、英最高裁が約5週間の議会閉会を「違法」とする判断を下し、政界は大騒ぎとなりました。直前まで、各政党の党大会の一挙一動が連日報道されていたのですが、すっかりお株を取られてしまいました。
英国の多くの政党は、毎年9月から10月にかけての約3週間に党大会を開催するのが恒例となっています。主要政党の与党・保守党、野党・労働党や自由民主党は春にも党大会を開きますし、各政党によって党大会の開催頻度や時期は若干異なるのですが、秋の党大会が最も大々的に報道されます。そのため大会が重ならないよう、それぞれの党大会が開催予定日をずらして調整しています。海岸沿いのリゾート地で開催されることが多いのですが、次第に各地の主要都市での開催も増えてきました。
党大会には党員をはじめとして、下院議員、地方議員、政策アドバイザーなどが参加し、党の政策や今後の方針を議論します。議論の合間の情報交換や親睦を深める機会も多数設けられます。「フリンジ」と称して、党の本会議とは別に幾つもの会合の場が提供されるのですが、本会議より面白い発言が飛び出ることがあるそうです。全国各地で活動する党員にとっては、同志と直接顔を合わせ、党として結束を固める良い機会となりますね。
目玉となるのが、党幹部による政策発表と大会の最終日に行われる党首演説です。この演説によって党首の評価、そしてその政党の将来性が見えてきます。
自民党の党大会(9月14日~17日、英南部ボーンマスにて開催)では新党首ジョー・スウィンソン氏が「政権が取れたら、英国の欧州連合からの離脱を中止する」と宣言し、大きな注目を浴びました。離脱は3年前の国民投票で決まった「国民の選択」です。これにあらがい、「離脱を中止する」と明言したのは政治的に大きな一歩です。残留派有権者の支持を他党から一気に奪い取る意気込みを見せる、スウィンソン党首の思い切った決断でした。
「離脱支持なのか、残留支持なのか分かりにくい」と評されるのが最大野党・労働党です。残留支持の議員が多いと言われていますが、国民投票で決まった離脱に反旗を翻すわけにいかず、2017年の下院選では「離脱を実行する」と公約せざるを得ませんでした。でも、幹部の一部には残留支持を明確にするべきという声が強いのです。党大会(9月21日~25日、英南部ブライトン)では、ジェレミー・コービン党首の「中立姿勢」を支持する案が可決されました。まず政権を奪還し、離脱協定についてEU側と再交渉した後、第2回目の国民投票を実施することにし、その直前に臨時党大会で離脱方針(合意協定による離脱かEU残留か)を決める、という案です。煮え切らない結果となりました。
9月24日、最高裁が「閉会違法」という判断を示しましたので、コービン党首は大会終了の1日前に党首演説を行い、違法な閉会の決定をエリザベス女王に求めたボリス・ジョンソン首相の辞任を求めました。
9月29日から10月2日、今度は保守党の党大会が英北西部マンチェスターで開催されました。保守党議員は、大会に出席するかどうかの選択を迫られました。議会閉会が無効になり、9月25日から議会が再開中だからです。
10月31日の離脱予定日まで、約4週間となりました。最高裁の判断を受けて、ジョンソン首相に対する辞任コールが高まっており、脱稿時点(9月30日)では、ジョンソン氏がどのような演説を行うのかは予測が難しいところですが、首相としては、「断固として期限日までに離脱を成し遂げる」と繰り返すしかないでしょう。7月末の首相就任以来、提出した法案の数々が否決され、最高裁判断も相まって「弱り目にたたり目」状態のジョンソン首相ですが、離脱派国民の支持を頼みにして、山場となる31日までの奮闘が続きます。