Naked (1993 / 英)
ネイキッド
故郷マンチェスターから、盗んだ車でロンドンへ向かったジョニー。同郷で元彼女のルイーズが住むフラットを訪ねた後、あてもなく街を徘徊するが……。
Photo: Shotaro Koshiishi
監督 | Mike Leigh |
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出演 | David Thewlis, Lesley Sharp, Katrin Cartlidgeほか |
ロケ地 | Lina Stores |
アクセス | Piccadilly Circus駅から徒歩 |
- マイク・リー監督といえば、英国の労働者階級の人々の日常をリアルに捉える作家としてケン・ローチ監督と並び称されていますが、なかでもこの作品は出世作として知られているんじゃないでしょうか。
- カンヌ映画祭での監督賞を始め数々の賞を受賞していますしね。タイトルの「ネイキッド」が示しているかのように、直接的でむき出しの表現が多く、それまでの作品とは一線を画しています。
- 実はこの映画、1994年に日本で公開された時に映画館に観に行った記憶があるんだが、正直、全く内容を忘れてたよ。思えば16年も前だもんなあ……(遠い目)。ただ、何か妙に感じるものがあったってことだけは覚えてたんだけどな。当時、友達にも勧めたような気がするぞ(笑)。
- はっきり言って、内容らしい内容はないに等しいですからね。でも、妙に感じるものがあるっていうのは分かります。
- ご存知の方も多いかもしれませんが、リー監督がすごいのは、台詞のほとんどが即興であるということです。この作品も、オリジナルの脚本はなんと25ページしかなかったそうです。役者とともにキャラクターを作り上げていくんだそうですよ。だからこそ、あのリアリティーが生まれるんでしょう。
- もともと劇作家として活躍していたことも大きいんじゃないかね。本作に登場している役者も舞台出身が多いようだし。
- 主役のジョニーを演じたデービッド・シューリスは、この映画で国内外の映画祭において最優秀男優賞を受賞し、以来、大作への出演が続きました。
- それにしてもジョニーのような奴って僕は苦手ですね。頭でっかちで口が達者、人生を投げてるんだか何だか知りませんが、特に何もせずに屁理屈ばっかりタレて、フラフラ生きている。昔の彼女を頼って行きながら、そこに住むフラットメイトのソフィとデキちゃって、しかもすぐにソフィのことがウザくなって冷たくあたったり……。ちなみにあのフラットは DalstonのDowns Park Roadからちょっと入ったSt. Mark's Riseの33番地ですけれども。
- ある種の必死さは感じられるけどな。警備員のおっちゃんに「人生を無駄にするな」って言われて軽く動揺するあたり、意外に素直だったり。結局、孤独ってことかなあ。もし人生投げてたら、あんなマシンガン・トークはしないだろうしね。
- ジョニーがロンドンで出会う人は、みんな寂しそうですよね。唯一ジョニーのことを相手にしなかったポスター貼りのにいちゃんは、強そうでしたけど(笑)。あのにいちゃんに蹴られるシーンは、北ロンドンのCaledonian RoadとTwyford Streetの角あたりです。そうそう、あの警備員のおっちゃんが勤めているビルはGoodge Street駅近く、Charlotte Street 74a番地の「Ariel House」が舞台ですね。
- 翌朝、そのおっちゃんと一緒に、小ぢんまりとしたカフェに行きますが、こちらはSouthwark地区、Winchester Walk 14番地が使われていますね。現在は「The Rake」というパブが入っているようですが。
- それと夜の街でジョニーが、これまた強烈な、口汚いスコットランド出身の少年に出会いますが、あそこはBrewer Street 18番地にあるイタリア食材店「Lina Stores」ですね。僕は日本食材を求めてあの界隈によく行くので、すぐ分かりました。
人間って、なんて不確かで脆くてエゴイスティックで学ばない生き物なんだろう、とか思ってイライラするが、なぜか観るのをやめられない一本。シューリスの演技は言うまでもなく良かったが、それ以上に滑稽なまでにサディストの男、ジェレミー(セバスチャン)に釘付けだったな。監督も激賞しているが、グレッグ・クラットウェル、お見事! マッサージ師とのやりとりとか、かなり笑ったよ。あそこまで徹底的にひどい男って、演じる分には楽しいかもな。
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