第12回 目まぐるしく変化する教育システム
今号からは、英国の教育現場が抱える様々な問題について目を向けたいと思いますが、我が子が現地校に通っていた10年以上前と現在とでは、状況が大きく異なります。
英国で子育て経験をされた方や、またその最中という方も、英国のコロコロ変わる教育システム、なかでも全国統一試験などへの対応に慌てたご経験は少なくないと思います。社会が激変している現在ではその変化が更に大きく、子供たちを始め、現場に関わる教師や保護者たちが翻弄されているのは、日々のニュースでもお分かりの通りです。
基本的な話になりますが、英国での義務教育は4歳から5歳にかけて始まります。同じ英国でも地域によって制度が変わることに加え、私立校と公立校では区分けが異なるのですが、ここでは英国の児童のおよそ93% が通うと言われている公立校について解説します。
4歳から5歳にかけては「レセプション」と呼ばれる慣らし保育のような準備期間に当たります。そして5~6歳からは学年ごとにイヤー1、イヤー2と呼ばれ、イヤー6までが、いわゆる小学校に該当する「プライマリー・スクール」。そしてイヤー7の11歳から12 歳にかけての子供たちは、「セカンダリー・スクール」と呼ばれる中学校へ進学します。
実は同じ公立の小学校でも、学校によって「インファント・スクール」や「ジュニア・スクール」など、学年によって区分けされているところもありますが、息子の通っていた小規模校では、卒業まで一貫して「プライマリー・スクール」という名称でくくられていました。
中等教育はイヤー7からイヤー11までの5 年間です。この最終学年の5、6月にGCSE(General Certificate of Secondary Education / 中等教育修了試験)が行われます。日本では高校1年生に上がったばかりの学齢ですね。そしてこの試験の終わりが、イコール義務教育終了となります。
この約12年間の義務教育の間、息子が通った当時は4つのキー・ステージが設けられ、「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」が行われていました。一般にSAT(サット)と呼ばれている試験で、正式には「ナショナル・カリキュラム・アスセメント」です。試験を受ける時期はイヤー2、イヤー6、イヤー9の3つのキー・ステージで、これにGCSEが加わって4つのキー・ステージで学力調査が行われました。最初の3つのSATの結果は、個々の生徒にはあまり影響しません。学校全体の学力・学習状況を測るのが主な目的です。
なお、14歳児(イヤー9)のための試験については、学習進度の早い学校などでは既にGCSEのための対策学習が始まっている時期ということもあり、教師、生徒ともに負担が大きすぎるという声を受けて2009年から廃止になりました。
これらの統一試験が個々の生徒や、その指導に当たる教師に及す影響は、日本とは全く違う教育現場の一面を浮き彫りにしています。一見、余裕がありそうな教育現場ですが、実は学齢が上がるごとに、日本より遥かに厳しくシビアな受験体制が控えているという事実を、徐々に思い知らされていくことになりました。