第16回 英国式お受験事情 その2
英国の小学校「お受験」は、子供の誕生直後の願書登録が望ましいと前回ご紹介しましたが、「もう遅いわ」と諦めることはありません。英国の私立校の学費はとても高額です。日本で言えば、インターナショナル・スクール程度の学費がかかると思って間違いないでしょう。つまり年間300万円前後を支出する覚悟は必要ということになります。これだけ高額な学費がかかることもあって、2007年から始まった世界金融危機以降、英国内の私立校への入学希望者は減りつつあります。その対策として最近、私立校は中国を始めとした海外からの留学生に目を向けているのです。従って、学校によっては事前登録なしの場合でも、受け入れてくれる可能性のあるところも多くなってきているというわけです。
受け入れてくれるとは言っても、やはり学費が高すぎて話にならない……そう考える方も多いかと思いますが、学費の問題をクリアする方法があります。11歳、もしくは13歳から入学が許される英国の有名私立校の中には、各家庭の収入に合わせて学費を細かく設定してくれる学校があるのです。つまり、収入が平均に満たない家庭であれば、全額免除するといった具合です。
具体的な例をご紹介しましょう。イングランド南部にある「クライスト・ホスピタル」は、病院のような名前ですが、1552年、時のイングランド王エドワード6世によって創設された伝統校です。英国の大学の最高峰であるオックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学)への合格者や有名人も多数輩出している名門校ですが、その歴史はロンドンの貧民層、中でも孤児などを救済し教育するための学校、通称「ブルーコート・スクール」としてスタートしました。その慈善の精神と運営形式は、現在も受け継がれています。
また首都圏外にある私立校のほとんどでは全寮制か、希望者のみ寮に入ることができる体制が整っています。このボーディング・スクール(寄宿学校)は、J・K・ローリングの小説シリーズ「ハリー・ポッター」の舞台となったホグワーツ魔法魔術学校の影響もあって、近年、英国の子供たちの中でも憧れる子が多くなったと言われています。クライスト・ホスピタルももちろんボーディング・スクールですので、競争率も激しく、難関校として有名です。
そのほかにも、名門私立校(パブリック・スクール)の多くは、学業優秀な生徒には奨学金制度を設けています。排他的と言われる英国の私立校ですが、優秀な子供には門戸を開いていますので、諦めることなくチャレンジしてみるのも良い経験となるかもしれません。
ただし、私立校の場合は、誕生直後の登録が必要ない場合でも、少なくとも入学の18カ月前には申請を済ませ、家庭の収入証明はもちろん、小学校での成績、音楽やスポーツなどに秀でていればその証明、そして第三者からの推薦状などなど、英国らしい諸々の書類を準備する必要があります。また子供のポテンシャルを証明するための英国式入学試験の準備もしなければなりませんが、それは次回、ご紹介しましょう。