第23回 授乳って悪いこと?
先日、スコットランドの義理の両親宅へ行って来た。旅の目的は、義理の両親にかわいい孫と触れ合う機会を与える……という建前の裏で、息子を預けて羽を伸ばすため。
飛行機でならロンドンから1時間で行けるのだが、私が大の飛行機恐怖症なので電車で行くことにした(この国では電車のほうこそ危ないようですが……)。生後3カ月半の息子を連れての初めての旅行、しかも電車で片道6時間の長旅ということでかなり緊張したが、最も頭が痛かったのは授乳のこと。
息子の授乳間隔は3~4時間。いろいろな点を考慮すると、電車内で授乳するのが最も理想的なのだが、夫は「公共の場で胸をさらけ出すなんて……」と反対する。何もさらけ出す訳じゃなくて、こっそりと窓際で、胸の部分はタオルでカバーしながらするつもりだ、と言っても、「ううむ……」と渋い顔。結局、授乳を強行したのだが、この会話のせいで、まるで罪を犯しているような気分になってしまった。公共の場でとはいえ、人目を忍んで授乳することはそんなに悪いことなのだろうか?
調べてみると10年ほど前、ノーフォーク州のある母親が、ハイ・ストリートに設置されているベンチで授乳したところ、警察官に「今後は控えるように」と注意されたという出来事があった。母親がメディアを通して抗議したため、この一件が記事になったのだが、記事を読んだ時、警察官が戸外授乳を阻止することができるのか、とびっくりした。イングランドでは母親に公共の場で授乳する権利が認められていないと思わせるような事例をときたま見かける。
一方、日本はどうなのだろう……と東京に限って調べてみると、デパートや大きな駅の構内に、授乳室なるものが設置されている。英国では、つい最近まで一部のベビー・グッズ販売店くらいにしかそのような施設はなかったので、授乳に対する設備は日本社会の方が充実していると言えるだろう。これは意外な発見だった。