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Mon, 23 December 2024

第14回 エリザベス1世

時は1588年。英国(イングランド)は、大変な国難を迎えていた。世界一の強さを誇る スペイン無敵艦隊が、波涛(はとう)を越えて攻め寄せてきたのだ。イングランドを治めるのは女王・エリザベス1世。未曾有の危機にあたって将兵に、女王自ら檄を飛ばしたのが、上記の言葉である。名言の甲斐があってか、兵士たちは奮戦、イングランドは勝利を収める。

今でこそ、イギリスはヨーロッパを代表する国として大きな顔をしているが、もともとは海を越えた先の島国、ギリシャ、ローマに発した文明がなかなかに届かない辺境の地であった。未開で野蛮な二流国から世界に冠たる大英帝国の幕を開く転換点となったのが、このスペイン無敵艦隊との戦いの勝利だった。女王の言葉が兵士を奮い立たせ、栄光の勝利に導いたのなら、まさにこの言葉こそ、イギリスの今日の地位を築くきっかけとなった大変な名言ということになる。

エリザベスは果敢であった。身を案じる近臣たちの忠告を振り切って、テムズ川河口北岸のティルベリーに置かれた前線基地に赴き、防衛軍を閲兵、演説する。決然としたその態度は、実にかっこいい。コテコテの白塗り化粧と、キンキラキンの絢爛衣装に身を包んだ女王が、遥かに海原を望んで全軍を前に士気を鼓舞する。まるで、映画でも見ているような絵になる光景ではないか。

面白いことに、ここぞという時の決定的な言葉は、男ではダメで、女性の発した鶴のひと声がものをいうことがある。多くの人々を動かして途方もない力を発揮させるのに、女性のリーダーを戴かねばならない場合がある。オルレアンの少女ことジャンヌ・ダルクがそうであったし、自由の女神なども、ドラクロワの絵に描かれた人々を導く女神が片方の乳房を露出させているのに象徴されるように、いかにも女性でなければならなかった。現代のビジネスの世界でも、女社長が颯爽と男の社員連中を使って成功する会社があるが、これなども同様の心理が働くのかもしれない。

ここで肝心なのは、男勝りの毅然とした意志。最前線に立って、身を張る覚悟。そして、人の胸を撃つ言葉。この女(ひと)がここまで、と納得させるものがなければマジックは働 かない。英国人相手の交渉事で困ると、故意に泣き出す日本人女性のことを聞いたことがある。涙を見せると、それまで通らなかった理屈が通りやすくなるのだそうだ。国際版「泣き落とし」である。

だが、涙は多少の効果はあっても、かっこよくはない。やはり、訴えるべきは言葉と行動。エリザベス1世はその意味で、21世紀の今から見ても充分に現代的だ。

 

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