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Sun, 24 November 2024

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第6回 そして演劇の国、英国へ……

4 November 2010 vol.1274

Royal Opera House これがロイヤル・バレエ団の本拠地、ロイヤル・オペラ・ハウスです

アムステルダムから渡英するきっかけとなった、英国のバレエ。フェアリーテールのバレエだけではなく、演劇要素が大切にされる作品が多い英国のバレエには、前々から魅力を感じていました。

ロイヤル・バレエ団を代表する振付家、故ケネス・マクミラン氏は悲劇が好みで、「ロミオとジュリエット」「マノン」など、演劇と踊りがうまく交わった作品で知られています。

他国と比べると、英国は演劇の国であるだけに、数多くの劇場があり、演劇を始め、ミュージカル、オペラ、バレエと一年中出し物が絶えません。私もオフの夜は他の劇場へ足を運んだりしていますが、まだまだ行ったことのない劇場の方が多いくらいです。「10歩歩けば劇場にあたるのでは……?」というぐらい、本当にロンドンの劇場の多さには圧倒されます。

よく道を歩いていると、「○○劇場はどこですか?」と聞かれます。どの場所で何を上演しているかはだいたい把握している私ですが、劇場の名前となると困ってしまい、「何を上演しているところですか?」といつも聞き返してしまいます。

英国では、観客のバレエに対する見方や態度も他国とは異なります。何と言っても感嘆するのは、バレエ・ファンの熱心さです。

毎晩のように楽屋出口でお会いするファンの方々のグループには本当に頭が下がります。凍るような寒い日であろうと、大雨であろうと、出待ちしていて下さり、皆さん見飽きないのだろうかとこちらが心配になるほど、毎日お会いする方々がいるのです。

そしてその中には、お花やシャンパンなどの贈り物や、観賞された公演に対する賞賛の手紙を送って来て下さる方もいます。このようなファンの方々の行為は、私たち踊り手にとって、本当にうれしいもの。とても励ましになり、「またがんばろう」という気持ちにさせて下さいます。

今まで、4カ国を渡り歩いて来ました。国によって、そこに拠点を置くバレエ団が求めているもの、観客が求めているものが異なり、少々苦労したこともあります。でもそれらを理解し、色々なスタイルを学べたこと、長所と短所を見られたことは、私にとってとても大きな財産となっています。

そしてそのような経験を積むことで、国が変わるたびに、踊り手として自分が求めている基準も高くなってきたように感じます。英国にはまだまだ、私が学ぶことが山ほどあり、今は学べることを楽しいと感じる毎日です。

英国に来て7年目、バレエだけでなく、普段の生活にも慣れ、英国人の気質や特徴が、手に取るように分かるようになりました。ロンドンは活気と新しいものの誕生が途絶えない街、私の生まれ故郷、東京に近いものを感じさせられます。住み心地が良いロンドン、でも不満がない訳でもありません。それはまた次回に……。


 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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