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Mon, 24 November 2025

第302回 ロンドン官庁街の秘密の地下トンネル

先月の特集「セント・ジェームズ・パークの歴史、再発見!」では触れませんでしたが、セント・ジェームズ・パークは英国の政府機関が集中する地域にあり、王室の宮殿や官公庁の建物に囲まれています。この周辺の上空は飛行禁止区域に指定され、地上には多くの警官も配置されています。近くにあるチャーチル博物館は、第2次世界大戦時の地下壕の一部であり、立入り禁止の非公開部分が地下深く広がっているそうです。

財務省地下にあった内閣戦時執務室がチャーチル博物館に変わった 財務省地下にあった内閣戦時執務室がチャーチル博物館に変わった

バッキンガム宮殿までの直線道路The Mallを含め、宮殿を囲む道路はレッド・カーペットが敷かれたように赤く舗装されています。色が赤いのは電磁波を吸収する酸化鉄が含まれているからです。電波の反射や漏えいを抑えることで外部からの傍受を防ぐ必要のある軍事施設では、電磁波吸収材がよく使われます。東西冷戦の激化した1950年代にバッキンガム宮殿の周辺が酸化鉄で舗装されたのもそんな背景があったからかもしれません。

The Mallが赤い理由は酸化鉄 The Mallが赤い理由は酸化鉄

電磁波吸収材?とThe Mallの周囲を見渡すと、秋になれば真っ赤なツタで覆われる茶色い建物があります。その屋上に巨大なアンテナがあることが望遠レンズで分かります。この建物は第2次世界大戦直前、アドミラリティ・シタデル、つまり海軍司令部の要塞として造られ、今も軍事施設です。1950年代に地下深くにある通信指令室が拡充され、そこから官庁街のホワイトホール通りの地下トンネルにつながっているといわれます。

屋上のアンテナ(上)とツタに囲まれたアドミラルティ・シタデル(下) 屋上のアンテナ(上)とツタに囲まれたアドミラルティ・シタデル(下)

そのアドミラリティ・シタデルの北側にヨーク公爵記念柱があります。1834年に高さ約42メートルの記念柱が建てられ、有料の展望台もあって人気のアトラクションでした。ところが複数の落下事故があったため86年までに展望台は閉鎖、柱台入口の扉も厳重に施錠されました。1950年代になると地下室が作られ、そこから官庁街のホワイトホール通りの地下トンネルにつながり、この記念柱が通気口になっているといわれます。

記念柱台のドアが地下トンネルへの入口? 記念柱台のドアが地下トンネルへの入口?

そもそもホワイト通りの地下トンネルは、第2次世界大戦直前、トラファルガー広場に近いクレーグス・コートにブリティッシュ・テレコム社が地下に電話交換局を建設し、ホワイトホール通りの下に通信回線を敷いて首相官邸、陸海軍本部、主要官庁をつなぐ電信網を築いたことが始まりです。その後、地下60メートルの核シェルターに軍司令部などが作られ、直径約4メートルの地下トンネル網が張り巡らされたとのこと。これが軍事マニアの語る都市伝説なのか、知る人ぞ知る秘密の地下トンネルなのか、興味深い話です。

この地下に電話交換局があった この地下に電話交換局があった

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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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