#46 人類初のエベレスト登頂を支えたミント・ケーキ
ロムニーズ / ツイン・パック・ケンダル・ミント・ケーキ
Romney’s / Twin Pack Kendal Mint Cake
170g 3本 £5.25
(小売店では単品で販売)
https://mintcake.co.uk
英国に長く住んでいても、「ミント・ケーキ」という言葉はあまり聞いたことがないのではないだろうか。ケーキという名称だが小麦粉は使用せず、砂糖、ペパーミント・オイル、水、グルコースのみで作られた砂糖菓子で、19世紀ごろから製造されている湖水地方の伝統のお菓子だ。このミント・ケーキを販売する会社の一つに、英北西部カンブリアのロムニーズがある。ここの商品は、ハイカーや登山家が携行するお菓子の一つとしてある種神格化されているのだが、その経緯が興味深いので紹介したい。
ミント・ケーキの始まりは、ジョセフ・ワイパーという菓子職人が、ミント味のタブレットを作る過程で混合物が混じり、それが固まってできたという偶然の産物と信じられている。そこから1918年創業のロムニーズをはじめ、数店がこの商品を現在まで作り続けている。余計な味付けのないこのお菓子は手軽なエネルギー補給源となることから、南極大陸横断など20世紀の冒険家に非常に愛用されてきた。
52年11月27日、ロムニーズは当時未踏峰だったエベレスト登頂のために編成された遠征隊から手紙を受け取る。そこには噂を聞きつけた隊員による、無償もしくは割引価格で、同社のミント・ケーキを提供してもらえないか、という依頼だった。ロムニーズは提供を即決したものの、当時はまだ戦後の配給制が続いていた時代。必要な材料が取り寄せられるまで待つほかなかったところ、旧食料省からこの計画に関しての製造のみ特別に材料入手の権限を与える、という異例の通達が届き、無事に製造を開始。そして53年5月29日、ニュージーランド出身のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイによる人類初のエベレスト登頂の成功に陰ながら貢献した。後に遠征隊から「登頂へ持参した食糧の中で、これが最も人気だった。もっと持っていけばよかった」と御礼の連絡が届き、同社のミント・ケーキはこの人類の功績を支えたとして一躍有名になった。
写真のツイン・パックは、100年以上同じレシピで作られている白砂糖とブラウン・シュガーで作られた2種のミント・ケーキのバーのセット。チョコレートのような滑らかな口溶けとトフィーのような軟かな食感で、登山だけではなく、幅広いアクティビティーのお供にぴったりだ。