#51英国の海辺の町から生まれた名塩
英南東部エセックスのマルドンで、140年以上にわたり生産されているフレーク状の塩。現在も、創業当時と同じく海水を平窯で煮詰める伝統的な製法が守られている。
海岸沿いの町マルドンは、ローマ時代から塩の生産地として知られ、特にクリスタル状のフレーク・ソルトを作る伝統があったという。製法は、まず海水を沸騰させ、温度を下げることで逆ピラミッド型の結晶を表面に形成させる。一定の段階に達すると、結晶は自身の重みで雪のように鍋の底に落ちる。それを専用の熊手でかき集め、24時間かけて水分を抜き、乾燥させるというのが基本的なプロセスだ。
この伝統的な手作業による製法を守りながら、現代の塩ブランドへと育て上げたのがオズボーン家である。現在はスティーヴ・オズボーンが、父クライヴ、祖父シリル、曽祖父ジェームズの後を継ぎ、家族経営の企業を牽引している。祖父の時代には塩の乾燥に薪ストーブを使用していたが、現在は改良型の穀物乾燥機へとアップグレードされた。ただし、基本的な製法は今も変わっていない。
現在は生産量の60パーセントが輸出用で、マルドンは現在50カ国で販売されている。特に米国はここ数年で市場が2倍に拡大。これは、著名人や有名シェフからの絶賛が相次いだためだそう。2012年には故エリザベス女王から王室御用達のワラントも授与され、マルドンは今や食通の誰もが知る国際ブランドへと成長した。
ふぞろいのユニークなピラミッド型のフレークの形状は、そのざっくりとしたテクスチャーと絶妙な塩かげんが融合し、キリっとした繊細な風味の鍵でもある。ほかの塩より塩分が多くしょっぱく感じられるのは、生産地エセックスの雨の少ない気候がそうさせているのだとか。使う際は、料理中に食材に混ぜ込むだけではなく、食べる前の一振りに使うのも効果的。ステーキや枝豆など、シンプルな料理をワンランク上げることができそうだ。また、ガーリックやチリの入ったバージョンのほか、魚介類に適したスモークド・ソルトなどもある。サイズ展開も55グラムから1.4キロまでいろいろ。