#47 英国の伝統が息づくボーンチャイナ
リピート・リピート / ブリタニア・バックスタンプ
repeat repeat / Britannia Backstamp
英中部ストーク・オン・トレントは400年以上の歴史を持つ陶器産業の中心地として知られている。この街で生まれたブランド「repeat repeat」は、英国の伝統工芸を現代によみがえらせようとする小さな企業だ。
1984年にギリアン・ネイラー氏とマーク・フォークナー氏が設立した「repeat repeat」は、当初、小さなデザイン・スタジオとしてスタートした。グラフィック・デザインやイラスト、テキスタイル・パターンなどを手掛けるなかで地元の陶器産業にかかわるうちに、ボーンチャイナ製品の魅力に引き込まれていった。特に、工場で自分たちの平面デザインが陶器という立体製品に変わる過程を目の当たりにし、陶器作りへの情熱が芽生えたという。
ボーンチャイナは、18世紀後半の英国で生まれた高級陶磁器で、牛の骨灰を原料に含むことで強度と透明感を兼ね備えた美しさが特徴だ。現在、世界中で生産されているが、英国内での製造は減少傾向にある。そのなかで同社は、メイド・イン・イングランドの価値を守り続けている。製品のほとんどはストーク・オン・トレントの自社工場で、伝統的な液状粘土を型に流し込む手作業で作られているが、この方法は繊細で熟練の職人技を要し、製品は日常使いでありながら一つ一つに手作業ならではの愛情とこだわりが詰まっている。
ブランドのデザインには、英国のヴィンテージ陶磁器の多くに見られるバックスタンプ(底の刻印)の王冠模様が取り入れられ、それをマグの正面に配置するというユニークな発想で、伝統とモダンを融合させている。現在、同社は協同組合跡の建物を改装した工場兼スタジオを拠点に、ボーンチャイナ製品の製造と新しいデザインの開発を続けている。次第に衰退する地元産業の中で、英国陶器産業の伝統を守りつつ、現代的な感性を加えた製品を発信しようとする心意気。「私たちは今でもイングランドでボーンチャイナを作っている」というメッセージを誇り高く掲げるこのマグは、英国の歴史とクラフトマンシップが息づく現代ならではの一品といえるだろう。