#49コーンウォールの家族経営から生まれる英国の味
英南西部の美しい田園地帯、コーンウォールで生まれたロダス社は、英国伝統の乳製品クロテッド・クリームを世界に届ける家族経営のブランド。1890年にイライザ・ジェーン・ロダさんが自宅のキッチンでクリーム作りを始めたのがその歴史の始まりだ。以来、ロダス社は5世代にわたって伝統の製法を守り、英国文化を象徴する製品を作り続けている。
そもそもクロテッド・クリームは、古くは西暦500年にフェニキア人によって英南西部にもたらされたといわれる(諸説あり)濃厚なクリームで、ジャージー種やガーンジー種の牛の乳から作られる。低温でゆっくりとクリームを加熱することで表面に形成される黄金色の「クラスト」が特徴で、この滑らかで濃厚な味わいはアフタヌーン・ティーには欠かせない存在だ。
ロダス社のクリームは1920年代にはフォートナム&メイソンやハロッズといった高級食材店へ卸され始めるが、ロダ家は当時12頭の乳牛しか飼っていなかったため、サイドカー付きのバイクで近隣の酪農家から生乳を収集して作ったという逸話も残る。第二次世界大戦中やその後の配給制の時代は製造禁止や縮小を余儀なくされたものの、ロダス社はクロテッド・クリームの製造を続け、98年にはついにPDOの認定を受けた。PDOはProtected Designation of Originの略で、原産地呼称保護制度のこと。コーニッシュ・クロテッド・クリームは、ロダス社の製品のようにコーンウォールで生産された牛乳のみを使用することが義務付けられた。
スコーンにたっぷりクロテッド・クリームとジャムをのせたクリーム・ティーは日本でも人気が高いが、食べ方としてはジャムを先に、次にクロテッド・クリームをのせるのがコーンウォール式で、ジャムが後に来るのはお隣の地方であるデヴォン式だそう。人それぞれ好みはあるだろうが、ロダス社のクロテッド・クリームはコーンウォール式で食してみてはいかがだろうか。また、スコーンばかりでなくトーストや、スープ、マッシュ・ポテトに加えるといった、バターの代用として使う方法もあるそうなのでお試しを。