東京スカパラダイスオーケストラ
ロンドン公演インタビュー
7月13日にロンドン公演を行った東京スカパラダイスオーケストラ。超満員となった会場は、興奮した観客同士が身体をぶつけ合う「モッシュ」が発生するほどの大盛況となった。今回のロンドン公演について、ライブ終了直後に楽屋にてメンバーの谷中敦氏に話を聞いた。
東京スカパラダイスオーケストラ
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
1985年に結成されたスカバンド。日本国内だけでなく、英国を含む海外にも広くファン層を持つ。今年は7月11日から21日にかけて、ポーランド、英国、ベルギー、スペインを周る欧州ツアーを敢行。英国ではロンドンのカムデン地区にあるジャズ・カフェで公演を行い、会場は超満員となった。過去には世界最大規模の音楽イベントであるグラストンベリー・フェスティバルへの出演も果たしている。www.tokyoska.net
ジャズ・カフェの入り口前に並ぶ人々
今回のロンドン公演に対してどんな印象を抱きましたか。
ロンドン公演は本当に久しぶりだったんです。ライブ会場となったジャズ・カフェが前に来たときのまま残っていたのがうれしかった。でも、もしかすると建物は前の方がもっとピカピカしていたかな。この会場がずっとこのまま残っていてほしいなと思います。
ライブ内容自体については、僕らは狭いステージの上で大勢で動き回らなければいけないので、お客さんの視点からはせせこましく見えないように気を付けました。すごく良いお客さんで、のるところでのって、聴くところは聴いてくれたのがうれしかった。皆さん、集中力が半端なくあったので、それに応じて僕らもエネルギーを出すことができたかなという気がしています。お客さんが持っているエネルギーを使って、さらにエネルギーを呼び込むみたいな感じで盛り上がるというのが僕たちの理想。いつもは持っているけど眠っているエネルギーをライブ会場で出してほしいので。僕らは観客とエネルギーを交換するために色々なライブ会場を周っているんです。各地の人々が、それまで気付いてもみなかった自分に気付く瞬間に出会いたい。そういう意味で、今日は「いつもよりはしゃいでしまった」というお客さんがたくさんいたような気がします。それが何よりもうれしいですね。
数日前には、同じくロンドンで、日本のロック・ミュージシャンたちによる「ジャパン・ナイト」というイベントが開催されました。
ジャパン・ナイトに出演したOKAMOTO’Sのハマ・オカモトからはツイッターで、[Alexandros]の川上洋平からはLineで連絡が来て、「頑張ってください」みたいなことを言ってもらいました。ともかく、こういう形で日本のバンドがまとまってつくる音楽って結構レベル高いのではないかと思います。工夫を凝らしたサウンドを持つ若いバンドが今はたくさんいますよね。昔は日本のバンドと言えば海外のバンドを聴いてそれをコピーしていることが多かった。今は日本のバンドしか聴かずに育って日本で新しいバンドを組んで、しかもものすごく面白い音楽をつくるという人たちが増えてきたような気がします。そういうところで特異性が出てくると面白いと思うし、またそういうバンドが海外に出ていくことはすごく夢がありますよね。
スカパラによる今回のロンドン公演では、観客がライブ中ずっと盛り上がっていましたね。とりわけ谷中さんが「Music is a game that anyone can win!」と叫んだときは、地鳴りかと思うぐらいの歓声が起きました。
あれは「Diamond in your heart」という曲の歌詞にある一節なのですが、僕らは「音楽は全員が勝つゲーム」ということをよく言ってるんですよ。バンドをやっていると、お客さんに向けて戦うというか、盛り上げるために戦うみたいな気持ちになりがちなのですが、実はお客さんが盛り上がって、お客さんが勝った気持ちになってもらうことが一番大事というか。その戦いには参加しないと勝てないけど、参加した人は全員勝てる。そういう風に盛り上げるべきというのが我々の信条なんです。
東京スカパラダイスオーケストラがロンドン公演を行った
ジャズ・カフェ。会場は超満員となった
スカパラのメンバーの皆さんはこれまで何度も公演やレコーディングのために英国を訪れています。ロンドンで観光に訪れた場所などありましたら教えてください。
実はいまだに大英博物館さえも行ってないぐらいなんです。ただロンドン五輪・パラリンピックの開催期間中にロンドンのスタジオでレコーディングをさせてもらったんですが、あのときは1日だけ休みを取れたので、コベントリーまで行ってサッカーの日本代表対ホンジュラス代表の試合を観に行きました。そう言えば、ロンドンという街はオリンピックのころと比べて随分と変わりましたね。街並みがとても奇麗になったし、あとはロンドン市民の外国人に対する受け入れの気持ちが変わったような気もします。東京も五輪そしてパラリンピック開催を通じて街が奇麗になり、人々の意識も高まって、誰もがどこかオープンな気持ちになっていくのかな。ロンドンを見習いたいなと思いました。