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Sat, 21 December 2024

環境団体が語るクジラを食べたらいけない理由③

World Society for the Protection of Animals (WSPA)
海洋生物担当
クレア・バスさんの主張

「捕獲の仕方が残酷だから」

「痛みは科学的に測定できます」

―捕鯨についての、WSPAのスタンスをお知らせください。

WSPAは、残酷であるという理由で捕鯨活動に反対しています。海上においてクジラが苦しまない形で捕獲する方法は現在のところ存在しません。その結果、2500頭あまりのクジラが残酷な方法で殺されていますが、世界がもっとこの事実に目を向け、ただちに捕鯨を中止することを訴えていくことが私たちの方針です。ゆえに、原住民生存捕鯨にも反対していますが、規模がより大きい日本を始めとする調査捕鯨、または商業捕鯨に強い警戒心を持っています。

-WSPAが「残酷である」と表現するクジラの捕獲方法についてもう少し説明いただけますか。

例えばミンククジラを捕獲する場合を例に取りましょう。まず「ペンスリット」と呼ばれる爆薬を先端に付けた銛を、船の上に設置した大砲から放ちます。この銛が30センチほどの深さで体に突き刺さると爆薬が爆発し、これが脊髄を損傷させてミンククジラは息絶えるという仕組みになっています。しかし2002~03年にかけて日本が南極で行った捕鯨活動の記録を見ると、この方法で即死を遂げた割合はたった4割、全体平均でも銛が撃ち込まれてから死ぬまで2分ほどの時間がかかっており、それだけの間クジラはもがき苦しんでいることになります。

-クジラが苦しんでいるかどうかというのは、客観的に判断することができるのでしょうか。

痛みを科学的に測定することは可能です。科学者たちは動物たちの反応を見て定義付けようとしています。痛みから身を逃れようとしたり、食欲が減退したり、出産をやめたりといった形で反応が表れるからです。

動物は人間と同じような言葉を持っていない。だから言葉で「痛い」と伝えることができないのです。でも彼らの行動を見れば、表現することはできなくても、苦しんでいるのは分かります。彼らが苦痛を受けているのが明らかであるとしたら、またはその疑いがあるとしたら、捕鯨活動を行うべきではないのです。

―捕鯨に限って、特に残酷ということはあるのですか。

クジラはあれだけ巨大で、しかも海に住んでいる動物ですから、鶏や牛、豚と同じような形で飼育することができない。例えば国によっては、規約で家畜を殺す際には動物がもがき苦しまないように即死させることが定められています。こうして家畜である豚や牛は人間の手によって慎重に管理されている。

ところがクジラは射撃で捕獲することになり、人間が痛みをコントロールする領域が限られています。また急所を外すことも多くあるため、二次殺害(Secondary Killing)と呼ばれるいわゆる最後の留めを刺して、必要以上にクジラに痛みと苦しみを与えることもしばしばです。こういった意味で、捕鯨の残酷性は抜きん出ていると思います。

―ただ家畜も狭く暗い小屋に集団で閉じ込められて、野生の生活を享受できないといった点で不幸であると考える人たちもいます。家畜を育てることが、必ずしも理想的な食肉の利用法であるとの考えには正直ちょっと疑問を感じてしまうのですが。

だからWSPAでは、今あなたが仰ったように必要以上に苦しみを与えられている鶏や牛といった家畜についても保護キャンペーンを展開しています。ただ先ほども言ったように、そういった動物は、少なくとも扱う人間側さえ気を付ければ、痛みをなくしたり、苦しみを和らげたりすることができるのです。そういった所に大きな違いがあると思います。

「クジラを即死させる方法が開発されたとしたら、反対キャンペーンは展開しません」

―それでは、クジラを即死させる技術を日本の科学者が開発したとしたら、捕鯨には反対しないのでしょうか。

実際、そのような方法の開発は難しいでしょうね。クジラというのは海面を出たり入ったりしているところを狙いを定めて撃つのです。しかも食用となる部分は残そうとするから、体のごく一部分だけを撃つことになる。だからポイントを外した時にクジラが長時間苦しみもがくことも多いのです。
ただ仮定の話として、もしクジラを即死させる方法が開発されたとして、そして沿岸部のその他の魚への影響がないように処置が取られて、現在捕鯨国が消極的な態度を示しているオブザーバーによる捕鯨活動の観察が許可されるとしたら、決して賛成はしませんが、反対キャンペーンを大規模に展開することはありません。ただこの「もし」はかなり非現実な条件だと思います。

―日本の調査捕鯨についてはどうお考えですか。

もちろん、調査は必要だと思います。ただ日本の「調査捕鯨」は、モラトリアム施行以降に急激に増加しています。研究者でなくても、この「調査捕鯨」に商業的な要素が入っていることが分かると思います。日本政府には、それだけの資金をもっと有益な方法、例えば殺害を含まないクジラの生態調査などの資金に充てることを強く望みます。

「たとえ海にクジラが溢れるようになったとしても、捕獲方法が変わらない限り捕鯨には反対です」

―現在の議論では、クジラは種類によっては絶滅どころか実は増えているとの報告があって、これについてはIWCも認めていますよね。

確かにそういうデータはあります。モラトリアムを施行したのですから、状況が改善されていることを望みます。ただクジラというのは97%の生活時間を海中で過ごす生物なので、実際の生存数を把握することが難しいのです。そして冒頭に話した通り、私たちが捕鯨に反対する最大の理由はクジラの生存数ではなく、その殺され方の残酷性にあります。だからたとえ海にクジラが溢れるようになったとしても、捕獲法が変わらない限り捕鯨には反対です。
Photo: Keita Yasukawa

World Society for the Protection of Animals (WSPA)
1981年にロンドンを本部として設立。動物に与える苦痛への緩和などを目的としてクジラのほか、日本熊や過酷な生活を強いられているペット、災害の被害を受けたその他の動物たちへの保護活動を行っている。
wspa.org.uk
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