昨年、英・独・仏の3カ国から多数の写真作品が集まった英・独・仏ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト。今年は「私の好きなもの / こと」をテーマに、また数多くの個性的な作品が寄せられました。英・独・仏それぞれの国ならではの景色を切り取ったもの、どこの国にも共通する、身近な人や日常の風景を写し撮ったもの ── 作品の数だけある、千差万別の「好きなもの / こと」を、受賞者、審査員のコメントとともにご覧ください。
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フランス 「夏のサン・マルタン運河沿い」
受賞者:金子 孝佑さん(27歳)
この写真は、ある日の昼下がり、散歩の際に撮影しました。僕は出掛けるときにカメラを持ち、あてもなく歩き回るのが好きです。この写真を撮影した日は天気も良く、暖かかったので、たくさんの人たちがパリのサン・マルタン運河沿いに腰掛け、楽しそうに過ごしていました。曲線を描く運河や空、水に映る人々と木々。上下左右の構図が面白い、良い写真が撮れたと思っています。今回は大賞を頂き、とてもうれしいです。これからも、何げなく気ままに、良い写真を撮っていけたらなと思っています。
レベルの高い候補作が並ぶ中、この作品は早い段階で良いなと感じたものの一つです。まず、何より構図が素晴らしい。非常によく練られていますね。蛇行する川のライン、水面に反射する木々や建物……。大勢の人々の姿が収められているのに、静けさが漂ってきて、穏やかな雰囲気に満ちた作品になっていると思います。あえて受賞者にアドバイスをするならば、空の部分が少々白飛びしているので、もう少し露出を抑えた方が良かったかもしれませんね。 by Canon Europe
ドイツ 「金五郎」
受賞者:加藤 トーマス・麗聖(らいぜ)くん(10歳)
ぼくの作品が選ばれたって聞いたとき、「俺の金五郎がかわいいからや!」って金五郎を抱きしめたよ。いつもママの古いデジカメで、サッカーの試合で優勝したときのメダルとか、部屋に飾っているガンプラとか、自分で作ったおもちゃやロボットとか、好きなものを色々と撮ってるんだけど、この写真を撮ったときは、やっぱり金五郎が一番かわいいな~って思った。金五郎は、ぼくがママのお腹にいるときにママが買った、ぼくの一番好きな宝物だから、いっぱい撮ってるよ。
この作品からは、受賞者が今回のテーマである「私の好きなもの / こと」を撮影しているのだということが非常に強く感じられます。被写体のぬいぐるみが、持ち主である撮影者にとても愛されているのだということが伝わってくるのが良いですね。構図的にも、被写体を真ん中に据えるのではなく、片側に寄せているのがユニークですし、かなり被写体に寄りつつも、ブレずにピントもちゃんと合っているのが素晴らしいと思います。 by Canon Europe
英国 「古本市」
受賞者:安達 真一さん(27歳)
前回、応募した際には次点だったので、今回は入賞できてうれしく思います。この写真はロンドンのサウス・バンク地区で日曜日に出る古本市を捉えたもので、週末に写真を撮りに出掛ける際には必ず通るようにしています。この日はあくまで普通のロンドナーの姿を撮りに行ったので、本の目線で本を選ぶ人々の写真を撮ってみました。普段は一眼フィルム・カメラを首からぶら下げてロンドン中の「人」を撮影しています。これからも「人」をテーマに、生き生きとした写真を撮っていきたいと思います。
入賞、おめでとうございます。この作品は、たくさんの古本が置かれた台と同じ高さのアングルから撮影されていて、本から見た目線で人々を捉えている点が素晴らしいと思います。写真から、人々が各々興味のある本に注意を注いでいる様子が実に良く伝わってきますね。また、カラーではなく、モノクロで撮影されているというのが、新品の本ではなく「古本」をテーマとしている点と良く合致しているな、とうならされました。 by Buckinghamshire Golf Club
ドイツ 「シャボン玉」
受賞者:高橋 著さん(48歳)
これは、ニュルンベルクへ旅行した際に撮った写真です。ある日の夕刻、多くの人で賑わう中央広場で、数人の幼い子供たちが自分の体くらい大きなシャボン玉を作っては追いかけて、無邪気に遊んでいました。その姿をファインダー越しに追っていると、自分まで童心に返るようでした。この女の子は、シャボン玉を作ろうと一生懸命に挑戦し、父親の助けも得て、ついに大きなシャボン玉を作ることができたのです。そのときに見せた、うれしさと驚きが入り混じったあどけない表情が印象的でした。
入賞、おめでとうございます。画面いっぱいに広がる、七色に輝く大きなシャボン玉に、少し驚きながらも喜ぶ女の子の顔。この子の歓声が聞こえてきそうなショットですね。今にもシャボン玉を触ってしまいそうな右手や、きっと微笑んでいるであろう周りの人々の姿までを想像させる楽しい一枚で、何回観ても飽きません。この女の子がシャボン玉遊びが大好きであることが伝わってきて、今回のテーマ「私の好きなもの / こと」にもぴったりだと思います。 by Steigenberger Frankfurter Hof
フランス 「ひとときの風」
受賞者:大貫 マチューさん(26歳)
できるだけ自然に、その場、そのときにしかない大切な瞬間を絵に収めるのが生きがい。この一枚に写っているのは91歳のおじ、オリビエです。彼の姿を写真に収めたいと前から思っていました。今年の夏、カンヌで暖かい光と風に包まれながら読書をしている彼の姿を見て、走ってカメラを取りに行き、気付かれず撮ることができました。彼の人生がこの瞬間に詰まっていると私は思います。毎朝、彼の安らかな姿を見ると嫌なことを忘れて心が落ち着きます。これからも元気でいてくれることを願ってやみません。
夏といえばバカンス。そしてバカンスといえば家族とともに過ごす時間が多いものですが、夏の太陽に照らされ、テラスで一人、心ゆくまで読書にふける老人の姿に、南フランスで過ごすもう一つのバカンスのスタイルを知ることができます。日の長い夏の一日、雑音も雑事もない環境でゆったりとした静かなときが流れ、時間を気にせず好きなことに没頭できる彼をうらやましく思います。 by Hanawa
英国 「雨上がりのバラ」
受賞者:阿部 咲也香さん(5歳)
お花の写真を撮ることが大好きで、ロンドンに来てからお散歩をしながら小道やお庭に咲いているお花を撮っています。今回の写真は雨の日が続いた後の晴れ間に、大喜びして外にお散歩に出たときに近所の庭先で撮りました。バラの花びらに雨のしずくがのっていて、お日様でキラキラしてきれいだな~と思ったので、しずくがきれいに撮れるように気をつけました。これからはイギリスのお城に咲いているお花を撮ったり、フラワー・ショーに行ってきれいなお花の写真を撮りたいです。
お子さんでも大人でも、風景写真を撮る際には、美しい景色すべてをカメラに収めたくて、つい引き気味に撮って焦点がボケてしまい、出来上がった作品を観るとあのときの風景とは似ても似つかない、とがっかりしてしまうことが多いのではないでしょうか。この作品は一輪のバラのみを切り出すように映し出すことで、花の持つ美しさを十二分に引き出しています。花びらに光る雨の粒が、花、そして作品全体に生命感を与えているようで素敵ですね。 by JP Books
ドイツ 「帰り道」
受賞者:吉岡 二郎くん(12歳)
父と一緒に自宅から約9キロ離れた湖に自転車で行くのが、ぼくの休日の楽しみ。行きは早く遊びたいので超特急で漕ぎますが、帰り道は違います。夕日になる前の眩しい太陽に照らされたひまわり畑や麦畑、小川などは「どれも絵になるな~」と思いつつ、少し進んでは止まり、また少し進んでは写真を撮る。そんなときの、父の自転車と太陽を撮った写真です。絵になるシーンを逃さないよう、いつも首からカメラをぶら下げています。入賞はとてもうれしく、もっと色々な写真を撮ろうと思います。
観ていると、とても心が和む美しい写真ですね。太陽、青空、緑の森や畑、自転車と、写真に収められたそれぞれの要素の調和が大変良く取れていると思います。自転車から延びる影も、なかなか面白い形をしていますね。ここから、写真が撮られた時間のみならず、その瞬間の気温や空気の匂いまでが感じ取れるようです。きっと楽しい小旅行だったんだろうなと想像させてくれる、心地良い一枚です。 by Feiler
フランス 「ブドウ畑」
受賞者:ゆうさん(11歳)
フランスには、ブドウ畑がたくさんありますが、そのブドウは食べるためではなく、ワインを作るためのものらしいです。私が見つけたブドウも、すごくおいしそうなのに、やっぱりワイン用で、そのまま食べたほうがおいしそうなのになぁ、と思いました。私は自分のカメラを持っていないので、普段はお母さんのiPhoneのカメラで写真を撮っています。家でも外でも、面白いものを見つけるとすぐに撮れるので、とても楽しいです。
季節を感じさせるとともに、遠近感を強調した一枚。右上にのぞく真っ青な空と光の具合が収穫の秋を思わせ、また、ブドウという対象物のみずみずしさがよく伝わってきます。ワインの産地で実った、まるまると大きい粒のブドウ。手を伸ばしたら今にもつかめそうな臨場感溢れる写真に、「撮影者は本当にブドウが好きなんだな」と感じられ、観る側もこのブドウに愛着を覚えずにはいられない、そんな素敵な写真です。 by Paris Miki
[審査員総評]
コンテストで受賞作品を選ぶというのはいつも困難を伴います。今回もクオリティーの高い候補作が多く、選考には時間がかかりました。今年度の特徴の一つとしては、白黒写真が多く見られましたね。白黒写真を撮る上で大切なのは、コントラストをはっきりとつけること。さもないとグレーがかった、暗い写真になってしまう危険性があります。何を写真に入れて、何を入れないのかを考えつつ構図を決め、観る者の視点を導き、写真にストーリーを語らせることが大切です。ポートレート写真には子供の表情がよく捉えられているものなど、目を見張る作品もありましたが、フォーカスが被写体の目に合っていないなどの理由で残念ながら受賞には至りませんでした。ポートレートを撮る際には被写体の「目」が重要となることを念頭に置くと良いでしょう。また、風景を撮るときには、地面と空の割合をどうするかがポイント。もし空が印象的ならば上部2/3を空が占めるように、といったようにメリハリを付けた構図にしてみてください。
by Canon Europe
[ダイジェストからのコメント]
今回は、英・独・仏ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト 2012に数多くのご応募をいただき、誠にありがとうございました。昨年、大好評をいただいたこのコンテストも第2回目を迎え、昨年以上にバラエティーに富んだ作品の数々が集まりました。
前回同様、当選までの流れといたしましては、まずはニュースダイジェスト社内で一次選考を実施。各国各部門10点の作品を選んだ後に、審査員による最終選考が行われ、入賞作品、及び大賞作品が決定しました。
今回は「私の好きなもの / こと」がテーマだったこともあり、撮影者の皆様の個性が感じられる作品が多かったように思います。やはり家族、動物、風景の作品が数多くみられましたが、広大な光景を白黒で表現することにより寂寥感を強めたり、人物の周りの風景をあえて抽象的にすることでまるで映画のひとコマのようなインパクトをもたらしたりと、一捻りが加わったものが目に付きました。キッズ部門では、ただ写真を撮るのではなく、どんな瞬間を撮りたいのかという撮影者の意図が明確に見えるものがあり、驚かされました。
[受賞者と賞品]
マチュア部門 | ||
大賞 | 金子孝佑さん | Canon Europeより デジタル 一眼レフカメラ EOS 650D |
英国入賞 | 安達真一さん | Buckinghamshire Golf Clubより 2ボールプレー券 (有効期限2013年3月31日) |
ドイツ入賞 | 高橋著さん | Steigenberger Frankfurter Hof より 「ホフガルテン」のブランチ券4名様分 |
フランス入賞 | 大貫マチューさん | レストランHanawaより 献立コース、 ペアお食事券(飲み物込み) |
キッズ部門 | ||
大賞 | 加藤トーマス・麗聖くん | Canon Europeより コンパクトデジタルカメラ IXUS 240 |
英国入賞 | 阿部咲也香さん | JP Books より バウチャー50ポンド相当 |
ドイツ入賞 | 吉岡二郎くん | Feilerより シュニール刺繍の子供用タオル |
フランス入賞 | ゆうさん | Paris Mikiより Ray Ban Juniorのサングラス |
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次のページでは、今回、惜しくも受賞を逃したものの、
第一次選考において高い支持を得た次点作品をご紹介。