トライフル
Trifle
「次は何を紹介するの?」2軒隣に住むアリソンは、時々、レシピを交換する料理上手の友人。私が英国の食べ物についてコラムを書いていると知って、取り上げる料理について色々と意見を聞かせてくれます。
「夏だからトライフルにしようと思う」と言うと、「確かに英国らしいプディングだね。うちではクリスマスに母がいつも作ってくれた。母はゼリーは入れないけれど、アンディ(アリソンのご主人)の実家のは必ずラズベリー・ゼリーが入っているよ。それに彼はインスタントのトライフルも好きだけど、私はダメ。あんなまずいものは食べられない!」と、いつもの早口で教えてくれました。
大きな透明の器にスポンジ、フルーツ、ゼリー、カスタード、ホイップ・クリームを重ねて作るデザート「トライフル」は、冷蔵庫で冷やしてからサーブします。冷たいこととその見た目から、完全に「夏のデザート」のイメージがありました。でも、アリソンに言われてから周囲で聞くと、「クリスマスに食べた思い出がある」という人が80%以上! 調べてみると、セレブ・シェフのジェイミー・オリバーがオリバー家のクリスマスの伝統だというトライフル・レシピを発表しています。また、フード・ライターのナイジェル・スレーターも、BBCの番組でクリスマスに父親が作ってくれたというバナナ入りトライフルを紹介していました。そして我が夫も「子供のころはクリスマスに必ずトライフルを食べていた」と言うではありませんか。
さっそく義母にたずねると、確かに十数年前まではクリスマスにトライフルを作っていたとのこと。そして意外にも、アリソンが「まずくて食べられない」というBird'sブランドの「トライフル・ミックス」を使っていたのだそう。といっても、ミックスだけを使うのではなく、義母流にアレンジを加えていたとのことですが。
そのトライフル・ミックス、スーパーでは1ポンド49ペンスという安さで売っています。箱の中には、それぞれ袋に小分けされたカスタード、ゼリー、ホイップ・クリームの素。ほかにフィンガー・ビスケット4個と飾り用のチョコ・スプレーも入っています。実はこの中の「ゼリー」はトライフル作りで議論の的になる存在。「入れない派」からするとゼリーを入れるのは邪道と思われているのです。
歴史をさかのぼると、既に16世紀の料理書に登場するトライフル。それはクリームに砂糖、生姜とローズ・ウォーターで味付けしただけのものでした。そのレシピに則ればゼリーどころかカスタードもスポンジも入れてはいけないことになります。でも、ガラスの器越しに見える赤、黄、白という3層に重なった色の美しさはこのデザートの魅力の一つ。それに、弾力があり、つるんとしたゼリーの食感はトライフルに欠かせないエレメント。だから私はゼリーを「入れる」に1票です。皆さんはいかがですか?
トライフル ー お手軽バージョン(6人分)
材料
- 市販のトライフル・ミックス(ラズベリー味) ... 1箱
- 市販のスイス・ロール(ラズベリー味) ... 190g
- オレンジ・ジュース ... 大さじ6
- ラズベリー ... 200g
- チョコ・スプレー ... 適宜
作り方
- トライフル・ミックスに書かれている作り方に従い、カスタード、ゼリー、クリームをそれぞれ準備する。
- ガラスの器を用意し、約1.5cmの幅に切ったスイス・ロールを、器の底と側面に並べる。
- ミックスに入っているフィンガー・ビスケットを各4分の1に割って❷の上にちりばめる。
- ❸の全体にオレンジ・ジュースをしみ込ませる。
- 飾り用のラズベリーをよけておき、それ以外を❹の上にちりばめる。
- ❺の上に、ゼリー、カスタード、クリームの順で、それぞれ重ねては冷やし、を繰り返す。
- クリームの上にラズベリーとチョコ・スプレーを飾って出来上がり。
memo
自分好みに様々なアレンジを加えられるのがトライフルの楽しさ。ジュースの代わりにシェリーを使うのもお勧め。果物もお好みのものをどうぞ(缶詰でも問題ありません)。また、一人前用のデザート・グラスに個別に盛りつけても奇麗です。