クリスマス・プディング
Christmas Pudding
夏休みが終わるころには既にクリスマス・グッズの販売が始まり、ハロウィンが過ぎるとスーパーの棚はクリスマス一色に。つまり、準備期間を入れると英国のクリスマス・フィーバー(?)は約4カ月近く続きます。
英国人がこれほどクリスマスに大騒ぎをするのは、彼らにとってクリスマスは、日本のお正月に相当する一大イベントだから。この日ばかりは普段離れて暮らしている家族も一堂に集まります。プレゼントを交換し、ディナーを一緒に食べるというのがお決まり。そして、ディナーの締めに忘れてはならないのが「クリスマス・プディング」です。
これはお菓子ですが、ケーキとは違います(クリスマス・ケーキはちゃんと別に存在します)。たくさんのドライ・フルーツにナッツ類やパン粉、スーイット(牛脂)とほんの少しの小麦粉。そこにスパイスや柑橘類の皮を加え、黒ビールとラム酒、卵を混ぜ、蒸して作る食べ物です。初めて見たときには、そのどす黒い姿に驚く方も多いと思います(私がそうでした! )。
このプディングの歴史は15世紀前半までさかのぼります。当時は特にクリスマスに食べるわけではありませんでした。「プラム・ポタージュ」と呼ばれたその中身は牛や羊の肉を刻んだものがメイン。それに玉ねぎ、ドライ・フルーツ、パン粉を混ぜ、ワインやスパイスで味付けしたのです。
現在のレシピに近いものになったのは19世紀近く。真ん丸から半球型へと形が変わっていき、このころになると材料は現在と似たようなものが使われるようになってきました。
ところでこのプディング、クリスマス当日の5週間前から仕込むのが習わし。英国では12月25日からさかのぼって4週間前の日曜日からがアドべント期間となります。そしてその1週間前の日曜日は「ステア・アップ・サンデー(かき混ぜる日曜日)」と呼ばれ、この日にクリスマス・プディングを作るのです。今年は11月20日がその日に当たりました。
私も、今年はプディング作りに初挑戦。言い伝えに従い、材料を全部ボウルに入れたら、家族一人一人が交代で願いごとをしながらかき混ぜます。かつてはこのときに、指輪や旧6ペンス硬貨、指貫などを入れたのだとか。そしてクリスマス当日、食べたプディングの中から出てきたもので翌年の運勢を占ったそうですが、今回それはパス。材料を混ぜるだけなので調理とも呼べないくらい簡単なのですが、面倒だったのは8時間かけて蒸すこと。長時間にわたるため、空だきにならないよう、なべの水をこまめにチェックしなければならないのです。最近、クリスマス・プディングを手作りする家庭が少なくなったというのは、この手間のかかり具合が理由の一つではないかと思います。
お味のほうは、クリスマス当日までのお楽しみですが、念のため、市販のプディングも買っておきました。食べ比べてみるのが楽しみです。
クリスマス・プディングの作り方(10人分)
材料
- セルフ・レイジング・フラワー ... 50g
- パン粉 ... 110g
- スーイット ... 110g
- ミックス・スパイス(お菓子用) ... 小さじ1杯
- ナツメグ ... 小さじ1/4杯
- シナモン ... ひとつまみ
- ソフト・ブラウン・シュガー ... 225g
- ミックス・ドライ・フルーツ ... 225g
- カランツ ... 275g
- アーモンド(細かく刻む) ... 25g
- クッキング・アップル(細かく刻む) ... 1個
- 卵 ... 2個
- ギネス(黒ビール) ... 150ml
- ラム(ダーク) ... 大さじ2杯
- レモンの皮すり下ろし ... 1/2個分
- オレンジの皮すり下ろし ... 1/2個分
作り方
- ボウルにセルフ・レイジング・フラワー、パン粉、スーイット、砂糖、スパイス類を入れてよく混ぜる。
- ❶にドライ・フルーツ、カランツ、アーモンド、クッキング・アップル、レモンとオレンジの皮すり下ろしを混ぜる。
- 別のボウルにラム、ギネス、卵を入れてよく混ぜる。
- ❸を❷に入れ、よくかき混ぜる。
- ❹を一晩寝かせておく。
- プディング用の器(またはボウル)に❺を入れて、グリーシング・ペーパーとアルミホイルを重ねたもので蓋をして、周りをたこ糸でしっかりと縛って固定する。
- お湯を張ったなべに❻を入れて8時間蒸す。途中で様子を見ながら、お湯が減ってきたら熱湯を足すのを忘れずに。
- 蒸し上がったら冷まして、クリスマス当日まで冷暗所または冷蔵庫で保存。
- 食べる前に改めて約2時間蒸し直す。
- お皿に載せ、ブランデーを振りかけて火を付けテーブルに運びます。好みでブランデー・バターやクリームをかけてどうぞ。