クリスマス・ディナー
Christmas Dinner
英国人にとって一年中で最も重要ともいえるイベントがクリスマス。そして家族そろって食べるクリスマス・ディナーはなくてはならない存在です。そのクリスマス料理でまず誰もが思い浮かべるのはターキー(七面鳥)でしょう。料理雑誌の表紙もスーパーのコマーシャルでも、必ずと言っていいほどロースト・ターキーの画像が登場します。またクリスマスの1カ月以上も前からスーパーや肉屋さんではターキーの予約受付が始まります。
歴史的には、ヨーロッパにこの鳥がもたらされたのはスペインがメキシコを植民地とした16世紀のこと。そして、クラリッサ・ディクソン・ライトの著書「A History of English Food」によれば、英国でクリスマスにターキーを食べたのはヘンリー8世が最初だそうです。ただしそれはローストではなく、ワインで茹でるかパイの中身として料理されていたとか。また、一説によればこの国でクリスマスにロースト・ターキーを食べることが定番となったのは1960年代で、米国の感謝祭の習慣が影響しているのだと言われています。
さて、クリスマス・ディナーは日本のおせちやお雑煮と同様に、各家庭によっても味や作り方に違いがあります。私にとっての英国クリスマス・ディナーは義母が作ってくれるもの。年によって若干アレンジの違いがあるとはいえ、メインはやはり毎年ロースト・ターキー。それにソーセージのベーコン巻きも定番です。付け合わせにはローストしたポテトとパースニップ、茹でた人参に芽キャベツ。そしてセージやパン粉を混ぜたスタッフィングと、マッシュしたスウィードも加わります。もう立錐(りっすい)の余地もない、といわんばかりに埋め尽くされたお皿の上に栗の入ったグレービーをじゃぶじゃぶとかけていただきます。
義母が料理する様子を見て気付いたのは、おせちと違い作り置きができないクリスマス・ディナーは、食べる当日にすべてを作らなければいけないということ。野菜の下準備やテーブル・セッティングなどは私たちも手伝うとはいえ、調理を取り仕切る義母の忙しさは大変なものです。まずは巨大なターキーをオーブンに入れ、焼き上がったらそれを休ませている間にポテトやパースニップ、スタッフィングを高温のオーブンで焼き上げます(英国家庭のオーブンが巨大なのにも納得です)。食べるときにお皿に載っているすべてのものが温かくなくてはいけないのですから、芽キャベツや人参を茹でるタイミングも大切です。肉を休ませるのと同時にその肉汁を使ってグレービーも作らなくてはなりません。作り忘れがないように、タイミングを間違えないようにと、義母はいつもクリスマス当日の料理時間割を細かくノートに書いています。近い将来、義両親を我が家のクリスマス・ディナーに招くためにも、私は今年、そのノートをコピーさせてもらうつもりです。
残ったターキーで作るクリスマス・カレー(4人分)
材料
- 残ったロースト・ターキー ... 400g
- ココナッツ・クリーム ... 大さじ1
- リンゴ ... 1個
- 玉ねぎ ... 1個
- 植物油 ... 大さじ1
- 小麦粉 ... 50g
- カレー粉(辛さはお好みで) ... 大さじ1
- サルタナ(レーズン) ... 50g
- トマト・ピュレ ... 大さじ1
- チキン・ストック ... 650ml
- 砂糖 ... 小さじ1/2
- 塩 ... 小さじ1/2
- レモン果汁 ... 大さじ1
- パイナップル(缶入り) ... 220g
- カレー・ペースト ... 大さじ1
作り方
- 玉ねぎとリンゴをみじん切りにし、油をひいたフライパンで炒める。
- ❶がしんなりとしたらカレー粉と小麦粉を混ぜて更に炒める。
- ❷にチキン・ストックを加え沸騰させる。
- ❸にカレー・ペースト、サルタナ、トマト・ピュレ、砂糖、塩、レモン果汁、ココナッツ・クリームを加えて更に煮込む。
- カレーが出来上がったら、最後にひと口サイズに切ったターキーとパイナップルを加えてよく混ぜる。
memo
パイナップルを入れるという独特のレシピは、義母がお母さんから教わったというものです。またクリスマス・ディナーの付け合わせ野菜が残った場合には、No. 6でご紹介したバブル & スクイークをお試しください。