ミンス・パイ
Mince Pie
クリスマスまであと1週間となりました。英国の「クリスマス3大お菓子」と言えば、クリスマス・プディング、クリスマス・ケーキ、ミンス・パイ(勝手に決定)。どれもドライ・フルーツがたっぷり入っているという共通点がありますが、皆さんのお気に入りはどれでしょう。私は何と言ってもミンス・パイです。直径5〜7センチほどのお手ごろサイズなタルトは、さくさくとした生地にほんのりスパイスの香りがするドライ・フルーツがよく合います。
この時期、スーパーの棚には、山積みになった出来合いのミンス・パイと並んで、パイのフィリング(中身)である「ミンスミート」の瓶詰めがたくさん並んでいます。ミンスミートと言えば「ひき肉」だと思い込んでいた私は、この瓶を初めて見た時は、てっきり中にひき肉も混ざっているのかと思っていました。でも、ミンス・パイにはリンゴやドライ・フルーツ、柑橘類の皮の砂糖漬けやスパイス以外、肉類は入っていません。ただし、歴史をたどると、クリスマスにミンス・パイを食べる習慣が生まれたと言われている16世紀ごろには、確かに刻んだ肉がドライ・フルーツなどとともにパイの中に入っていたそうです。それが19世紀にはその中から肉は消え、今のような中身になったと言われています。
ところで、「おいしい」という以外に私がミンス・パイを好きな理由は3つあります。まずは、この時期に誰かの家を訪ねると、お茶請けにはたいていこのパイが出てくるということ。暖炉のそばで紅茶を飲みながら、このお菓子をつまんで友人とおしゃべりする――これは暗くてじめじめした英国の冬に欠かせない楽しみの一つです。普段ならビスケットがお伴のおしゃべりも、この時期はやはりミンス・パイでなくては!という気がします。
2つめは、家族でクリスマスを迎えることができる喜びを感じられるお菓子だから。義両親の家では、クリスマスの日、教会で夜中のミサに参加して家に戻った後、ソーセージ・ロールとミンス・パイを食べるのが恒例です。静まりかえった深夜、冷えきった身体を温めるかのように紅茶を飲みながらいただくパイ。これを食べる時、英国でこうして一緒にミンス・パイを食べてクリスマスを過ごせる家族が出来たという不思議さを感じずにはいられません。そしてそれは、日本にいる家族を思い出すことにもなります。この日食べるミンス・パイは、私をちょっとおセンチな気分にするお菓子でもあるのです。
そして3番目の理由は、ミンス・パイがサンタクロースの好物だということ。この国では、クリスマス・イブの夜、子供たちは寝る前に、暖炉のそばなどにサンタクロースへのお礼や手紙を置いておきます。そのお礼というのがミンス・パイとシェリー(ミルクの場合も)です。その夜、サンタさんが食べるミンス・パイの数を考えると、私が少々食べ過ぎたってへっちゃら(?)と勇気をもらえる気がします(笑)。
簡単ミンス・パイ(12個分)
材料
- 小麦粉 ... 250g
- 無塩バター ... 125ml
- 塩 ... ひとつまみ
- 卵 ... 1個
- 水 ... 大さじ1
- 瓶入りミンスミート ... 1瓶(約400g)
- 粉砂糖(飾り用) ... 適量
作り方
- オーブンを200℃に予熱し、12個分の型(直径7cm)にバター(分量外)を塗っておく。
- バターを1cm角程度の大きさに切り、小麦粉と塩を合わせたものと手早く混ぜ合わせる。
- ❷ にほぐした卵と水を入れて更に混ぜる。
- 生地がまとまったらラップに包み、冷蔵庫で30分ほど休ませる。
- ❹の生地を約2mm程度の厚さに伸ばし、丸い型(直径9cm)で抜く。
- ❺を12個分の型の内側に敷き、生地の中にミンス・ミートを詰める。
- ❻の上に星形に抜いた生地を載せ、オーブンで約20分焼く。
- 金網の上で冷ましてから、茶こしで粉砂糖をふりかけて出来上がり。
memo
生地は市販のショートクラスト・ペストリー(shortcrust pastry)を使えばより手軽です。パイの上部は色々なデザインがありますが、伝統的には「ベツレヘムの星」にちなんで星形をつけることが多いようです。