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Sun, 22 December 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 21

ローリー・ポーリー・プディング
Roly-Poly Pudding

Roly-Poly Pudding

「ピーターラビットのおはなし」の著者、ビアトリクス・ポターがロンドンで生まれたのは1866年7月28日。今年が生誕150周年に当たるということで、英国内では彼女に関する様々な話題が取り上げられていますね。特に未発表の作品「The Tale of Kitty-in-Boots(原題: 長靴をはいた猫のおはなし)」が発見され、ロアルド・ダール作品でおなじみのクェンティン・ブレイクの挿画によって今年出版されるというニュースは、ポター・ファン以外からも大変な注目を集めました。

そのポターが発表したシリーズの中で、私が特に気になっていた食べ物があります。それは「ひげのサムエルのおはなし」の中に出てくる「ねこまきだんご」。いたずら子猫のトムが、ねずみの夫婦にくるくる巻いた団子(というよりロール・ケーキのように見えますが)にされてしまうときの表情があまりにもリアルで、目に焼き付いていました。

英国に住み始めて、まずは絵本で英語を読む練習をしようかと考えていたとき、チャリティー・ショップでちょうどこの本を見つけました。英語版タイトルは「The Tale of Samuel Whiskers or The Roly-Poly Pudding」ですが、実は1908年の初版時はこんなに長くはなく、単に「TheRoly-Poly Pudding」だったそうです。

「ローリー・ポーリー・プディング」と聞いて英国人がまず思い浮かべるのは「ジャム・ローリー・ポーリー」。私と同世代の英国人たちは、学校給食のデザートとしてこのお菓子を食べたと懐かしがります。材料は以前このコラムでご紹介した「スポティッド・ディック」とほぼ同じ。小麦粉とスーイットと呼ばれる牛脂、砂糖、牛乳で生地を作ります。それを平たく伸ばし、全体にジャムを塗り、くるくると巻いてクッキング・シートとその上からアルミフォイルで包み、蒸し上げれば出来上がり。クッキング・シートとアルミフォイルというのは現代風で、昔はプディング用の布や、古くなったシャツの袖の部分を使っていたとか。そのため、別名「Shirt-sleeve pudding」と呼ばれていたという説もあるそうです。

見た目はひしゃげ気味ロール・ケーキといった感じのジャム・ローリー・ポーリー。重めのどっしりした食べ応えはスポティッド・ディックに似ているのですが、これは多分、どちらのお菓子にもスーイットが入っているから。日本語では「スェット」などと表記されていることも多いこの食材。英国ではATORAというブランドから、すぐに使えるように細かく刻んだ乾燥スーイットが発売されていて、牛脂タイプ(オリジナル)と、植物性油を使ったベジタリアン用があります。最近ではバターで代用されることも多いのですが、三寒四温でまだまだ寒い日もあるこの季節には、スーイットを使ったローリー・ポーリーでお腹の中からエネルギーをチャージしてみてはいかがでしょう。

ジャム・ローリー・ポーリー(5人分)

材料

  • セルフ・レイジング・フラワー ... 170g
  • スーイット ... 75g
  • カスター・シュガー ... 50g
  • 塩 ... ひとつまみ
  • 牛乳 ... 100ml
  • ラズベリー・ジャム(または好みのジャム) ... 適量

作り方

  1. セルフ・レイジング・フラワー、スーイット、カスター・シュガー、塩をボウルに入れて混ぜる。
  2. ❶に牛乳を入れてよく混ぜる。
  3. 打ち粉をしたまな板の上で❷をよくこねる。
  4. 麺棒を使って❸を約1cmの厚さ、約20cmの正方形に伸ばす。
  5. ❹の上にジャムを塗る(両端約1cm程度は塗らずにそのまま)。
  6. ❺を端からくるくると巻いていく。
  7. クッキング・シートで巻き、その上からアルミフォイルで巻いて、端はねじってとめる。
  8. 200℃に予熱したオーブンの下の部分に、熱湯を入れた深めのオーブン皿を置き、その上段のオーブン・ラックに❼を載せて蒸す。
  9. 45分~1時間程度で出来上がり。温かいカスタード・ソースを添えて召し上がれ。
memo

スーイットを使ったお菓子は冷めると固くなって味も落ちてしまいます。できるだけ出来立てあつあつを食べるのがお勧めです。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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