ライス・プディング
Rice Pudding
英国のデザートで好き嫌い(Love it or hate it.)がはっきり分かれるものといえば、「ライス・プディング」。周りの英国人の間でも意見はバラバラ。夫は見るのも嫌だというほど否定的です。一方で、義妹は特に今の季節、むしょうに食べたくなるコンフォート・フードだと言います。
名前の通り、これはお米を使ったデザートです。歴史は「ライス・ポタージュ」というレシピが残っている14世紀にまでさかのぼりますが、米が貴重だった当時は王族など富裕層のみが口にできたものでした。またレシピに砂糖が加わって甘いプディングになったのは15世紀。一般の人々の手が届くようになるのは18世紀からと言われています。
現在は、プディング用の短粒米に砂糖とバター、ミルクを混ぜ、なべで煮るか、あるいはオーブンで調理します。手軽に食べたい人には、スーパーで簡単に購入が可能。伝統的なタイプに加えて、イチゴ、ラズベリー、塩キャラメルやチョコレートなど、様々なフレーバーのものが売られているのには驚きます。というのも、最近このデザートの人気が復活。スーパー「ウェイトローズ」では前年比8%売り上げ増だと聞けば、そのバラエティーの多さにも納得です。
とはいえ、在英歴が長い方でも、食べたことがない、という人も多いのではないでしょうか。日本人にとっては、甘いミルクとお米の組み合わせというのは想像しただけで「うっ」となってしまうんですよね。
そんな未体験の方のご参考になればと、今回はライス・プディングの食べ比べをしてみました。
買ってきたのはミュラー(Müller)社のオリジナル版。本拠はドイツの同社ですが、英国内における乳製品系デザートの代表的なブランドです。もう一つは1937年に発売を開始したというアンブローシア(Ambrosia)の缶入りライス・プディング。そして最後はオーブンで2時間かけて調理した手作りプディングです。
まずは、電子レンジで1分間温めたミュラーのプディングを試食。色は白に近いクリーム色。中身はさらっとしたミルク味のスープの中にご飯粒が混ざっている、といった感じ。どろどろしていないせいか、のどごし滑らかで◯。
アンブローシアのものは、色とテクスチャーが「おじや」そのもの。なべで温めたせいか、よりおじや感が強調され、舌上の甘さと反発。結局、スプーン3杯が限界でした。
さて、次は2時間じっくり焼き上げた手作りプディング。表面にはところどころに焦げ目がついた薄皮が張っています。英国人によると、この皮が取り合いになったりするのだとか。確かに、このほんのり香ばしい皮と一緒に、いい具合にアルデンテになった甘いミルク味のお米を食べると……「あら、何だかおいしい?」
結論。ライス・プディングは手作りがお勧めです。時間はかかるけれど手間いらず。ぜひ一度お試しを。
ベイクド・ライス・プディングの作り方(4〜6人分)
材料
- プディング用ライス ... 115g
- 溶かしバター ... 大さじ1
- カスター・シュガー ... 50g
- 牛乳 ... 850ml
- 無塩バター ... 40g
- バニラ・エクストラクト ... 小さじ1/2
- ナツメグ ... 適量
作り方
- 耐熱皿に溶かしバターを塗り、プディング用ライスとカスター・シュガーを入れてよく混ぜる。
- 牛乳を沸騰直前まで温め、❶の上からかける。
- ❷にバニラ・エクストラクトを加え、砂糖が溶けるまで全 体によく混ぜる。
- バターをさいの目状に切り、❸の上に散らす。
- ナツメグを❹の上全体に振りかける(量は好みで)。
- ❺を150℃に予熱したオーブンに入れ、30分ほど経ったら一度取り出して全体をよくかき混ぜる。
- 1時間半~2時間半調理し、表面に茶色く焦げ目が付くく らいまで焼き上げたら出来上がり。
memo
プディング用ライスと言えば、来英したばかりのころ、日本米に一番近くて安いお米がこれだと教えてもらいました。当時は普通に炊いて白米代わりにしていましたが、プディングを作ったことはなかったです。