セビル・オレンジ・マーマレード
Seville Orange Marmalade
毎年1月中旬から2月にかけて、英国人たちは新聞、雑誌やインターネット上で、スペイン産のセビル・オレンジで作るマーマレードがどれほどおいしいかを熱く語り、レシピを紹介しています。気になってはいながらも、私はこれまで作ったことはありませんでした。とはいえ、この国では朝の食卓に欠かせない一品。細めに切った皮入りのものや、皮厚切り、生姜入り、中にはウィスキー入りのものまで発売されているほど種類も豊富で、人気のほどは明らか。「英国の口福」ハンターとしては、やはり自分でも作ってみなければ! という使命感もあり、今年は初挑戦してみました。
マーマレードという呼び名は、ポルトガル語の「マルメロ(Marmelada)」からきていると言われます。15世紀後半には、このマルメロを蜂蜜で甘くしたペーストが英国に入ってきました。レモンやビター・オレンジなどの柑橘類も中世のころに輸入されるようになり、これらを含め、りんごや梨、桃など果物をつぶして甘みを加えたものはすべてマーマレードと呼ばれていました。当時はこれを型に入れ、固めてデザートなどとして食べていたようです。
18世紀になると、現在のように、薄く切った皮が入った透明なゼリー状のものとなりました。これについては、スコットランドのダンディーで、ケイラーという一家によって発売されたのが起源だと言われています。大量生産され、労働者階級にも手の届くダンディー・マーマレードは、大変な人気となったそうです。
ところで、肝心のマーマレード作りについて。材料のセビル・オレンジは、生食はできないほどの苦味が特徴で、それがマーマレードをおいしくする秘密だと聞いていました。中身を生でかじってみると、かなり酸っぱい。果肉は少なくその代わりに種が多くて、確かにそのままでは食べられたものではありません。でも、出来上がったマーマレードをトーストに塗って食べてみるとそのおいしさに感動。しっかり甘いゼリー状の部分と皮の苦味とのコントラストが絶妙で、トースト2枚、いや3枚は軽く食べられてしまいます。
英国内では2005年から「世界オリジナル・マーマレード賞(The World's Original Marmalade Awards)」というコンテストが、湖水地方のペンリスで開催されています。マーマレード人気復活の契機になったと言われるイベントで、世界各国からの応募があるそう。実は日本からの応募も多く、2016年にはいくつかの部門で日本人によるマーマレードが金賞を受賞しています。
入賞者の発表とともに当地で行われるマーマーレード・フェスティバルは3月18、19日に開催されます。今年は駐英国日本国大使もフェスティバルのゲストとして参加されるとのこと。マーマレード・ファンの方はぜひとも出掛けてみてはいかがでしょう。
マーマレードの作り方(370g用瓶 6~8個)
材料
- セビル・オレンジ(オーガニック) ... 1kg
- カスター・シュガー ... 1.8kg
- レモン ... 1個
- 水 ... 2.5ℓ
作り方
- オレンジを半分に切って、果汁を絞る。レモンも同様にして果汁を絞る。
- 絞った後のオレンジの種と中身をすべてガーゼの布で包んで、ひもで縛る。
- オレンジの皮を千切りにする(細さは好みで)。
- 大なべに❸を入れ、絞ったオレンジ果汁、レモン果汁と水、❷を加えて1.5~2時間煮込む。
- 一旦なべを火から下ろして砂糖を加え、すべて溶かす。
- 強火で沸騰させ、15分ほど焦げ付かないように注意しながら煮る。
- とろみがついてきたら火を止めて、熱いうちに煮沸消毒(またはオーブンで殺菌)した瓶に入れて出来上がり。
memo
くまのパディントンの好物としても知られるマーマレード。レシピは作る人の数だけあると言われます。何度か作って、自分の好みを見つけてください。そして自信作ができたら、来年はぜひ世界オリジナル・マーマレード賞(www.dalemain.com/marmalade-awards)に応募してみませんか。