コドルド・エッグ
Coddled Eggs
英国に住んで、チャリティー・ショップの魅力にはまった、という方はいませんか。何を隠そう私がその一人です。
来英してすぐのころ、住んでいた街にはチャリティー・ショップが3軒ありました。洋服やバッグにはそれほど関心はなかったのですが、食器類は、語学学校からの帰り道に毎日チェックをしていた時期があります。というのも、ウェッジウッドのディナー・プレートが2ポンドとか、プールのカップ & ソーサーが3.5ポンドとか、ビンテージの器がお手ごろ価格で手に入るからです。
あるとき、使いみちは分からないけれど、形と柄がラブリーだという理由で、蓋付きの小さな器を2ポンドで買いました。その名前は「エッグ・コドラー」。今回ご紹介する「コドルド・エッグ」を作るための調理用品です。
器は高さ約9センチほど。蓋は銀色の金属製で、輪になった取っ手が付いています。磁器でできていて、裏には「メイド・イン・イングランド、ロイヤル・ウースター」の文字が。取り立ててアンティークに興味があるわけでもなかったので、器について詳しく調べはしませんでした。「小物入れにでもなりそう」と思って買ったものの、その器は結局、使うことなく置きっぱなしになっていました。
使い方を教えてくれたのは、夫の伯母であるヘーゼル。彼女の家で朝食を食べたときのことでした。日本人の私には珍しいだろうからと、わざわざガラスのキャビネットに飾ってあったエッグ・コドラーを使って卵を料理してくれたのです。見ていると、ヘーゼルは小さななべにお湯を沸騰させ、その中に器を入れました。日本でいう湯煎の要領です。
しばらくしてテーブルに置かれたのは半熟卵。といっても、黄身が相当柔らかいだけでなく、白身部分もややとろとろとしたもの。調理した器ごとテーブルに出てきて、ティー・スプーンですくって食べたので、ミニ・サイズの茶碗蒸しをいただいているような気がしたのを覚えています。
「コドル」という言葉について、オックスフォード辞典では「沸点以下のお湯で(卵を)調理すること」となっています。また、ゆで卵やポーチド・エッグとは違うもの、という表現がなされています。
コドルド・エッグという食べ方が流行ったのはビクトリア時代。王室ご用達の陶磁器メーカーとして有名なロイヤル・ウースター社が、1880年代からエッグ・コドラーの製造を始めました。ただし、最初に誰がエッグ・コドラーを考え出し、製造しだしたかについてのはっきりした記録は見つかっていないのだそうです。
アンティーク・マーケットなどでは、ロイヤル・ウースターやウェッジウッドといった高級陶磁器メーカーのエッグ・コドラーが人気のよう。特にロイヤル・ウースター社のものは、リトグラフや手描きなど100種類を超える図柄があるため、コレクター・アイテムになっているそうですよ。
コドルド・エッグの作り方(1人分)
材料
準備する器: エッグ・コドラー
- 卵 ... 1個
- バター ... 適量
- 塩・胡椒 ... 適量
作り方
- エッグ・コドラーの内側にバターを塗る。
- ❶の中に卵を割り入れる。
- 上から塩・胡椒を振りかける。
- なべでお湯(分量はコドラーの高さ半分辺りまで)を沸騰させ、蓋をしたコドラーを入れる。
- 7、8分ほど湯煎して出来上がり(調理時間は好みで調整する)。
memo
レシピによってはダブル・クリームを加えるものもあります。また、卵だけでなく、ハーブやハム、マッシュルーム、チーズなどを刻んで入れても良いです。具を多くする場合にはエッグ・コドラーの代わりにココットなどの器を使うと便利です。