エイチピー・ソース
HP Sauce
「今夜、大事な投票があるよ」「また~ ?」我が家ではこんな会話が夜毎交わされていました。もちろん、ブレグジットについてです。この原稿を書いている4月初旬になっても、いまだ英国の態度ははっきりせず。何がどうなっているのか、訳が分からなくなってきました。ニュースダイジェスト1527号の特集「BREXITにまつわる10の疑問」を読んで頭の中が少し整理されましたが、それでもやはり、ブレグジットの行方が混沌としていることに変わりはありません。
さて、このブレグジットに関する討論の舞台となっているのが、英国会議事堂(ハウス・オブ・パーラメント)です。ロンドン観光名所のひとつであり、現在改修中の時計台ビッグ・ベンを含めたゴシック様式の建物は、英国に来たことがない方でも知っているはずです。
このところ「オーダー!」で一躍有名になった下院議長バーコウ氏の画像を含め、テレビや新聞で何度も英国議会の画像を目にしたせいか、朝食のテーブルに置いてあった「エイチピー・ソース」のパッケージに、この建物のイラストが描かれているのが気になって仕方ありません。一体、このソースと国会議事堂にはどんな関係があるのでしょうか。
ブラウン・ソースと呼ばれる、その名の通り濃い焦げ茶色の調味料は、グリーシー・スプーンと呼ばれる英国らしい雰囲気が味わえるカフェに行けば、塩・こしょうとケチャップと並んで、必ず置かれています。それほど英国の食卓に欠かせないものです。
スーパーにはさまざまなブランドが並んでいますが、その代表と言えるのがエイチピー・ソース。2005年に大手食品ブランド、ハインツの傘下に入りましたが、もとはといえば、1870年代に英北部ノッティンガムのフレデリック・ギブソン・ガートンによって販売が開始されたと言います。
一説には、このソースが英国下院のレストランで供されていることを知ったガートン氏が、1895年にエイチピー・ソースを商標登録し、パッケージにビック・ベンと国会議事堂のイラストを施したとか。
また、「ジェントルマンズ・レリッシュ」という書物によれば、ソースのレシピを考えたのがハリー・パーマー(Harry Palmer)という人物で、そのイニシャルをとってエイチピーと名付けられたという別の説も紹介されています。また、同書には、1960~70年代にかけて2度首相となったハロルド・ウィルソンはこのソースが大好きで、何にでもこれをかけていたところからエイチピー・ソースのことを「ウィルソンのグレービー」と呼ぶ人もいたという話も記されています。確かに我が家でも、ベーコン・サンドイッチ、スコッチ・エッグなど、色々なものにこのソースを添えています。
2007年以降、英国内ではなくオランダ工場で製造されているエイチピー・ソース。ブレグジット後に庶民の手に届かないものになってしまうことはないと願いたいです。
なんちゃってお好み焼きソースの作り方
材料
- ブラウン・ソース ... 大さじ6
- ケチャップ ... 大さじ4
- 醤油 ... 大さじ2
- カスター・シュガー ... 大さじ1
作り方
- 材料を全てボウルに入れて、泡立て器でよく混ぜ、電子レンジで20秒ほど加熱したら出来上がり。
memo
英国でお好み焼きを作る時、ケチャップとウスター・ソースをまぜてお好み焼きソース(もどき)にしていたのですが、あるとき、在英期間の長い友人から、ブラウン・ソースを混ぜると、日本のお好み焼きソースにより近くなると教えてもらいました。材料を調べると日本のお好み焼きソースにもブラウン・ソースにも、デーツが入っているのが意外な発見でした。日本のソースが手に入らない時には、ブラウン・ソースで作るお好み焼きソースを試してみてください。