当社では最近、顧客の接待にビジネス費用をかなり使いました。英国の法人税の申告で費用を計上できるように、関連する領収書を全て用意したほうがいいですね。それで何の問題もないと思いますが、大丈夫でしょうか。
いえ、それは違います。ビジネス・エンターテインメントの費用は、法人税では控除されません。つまり課税対象利益を圧縮できないのです。接待した相手が既存顧客、見込み客、または従業員ではない第三者かどうかは、関係ありません。
では、当社は付加価値税(VAT)の登録をしているので、こうした費用のVATの還付を受けることはできますか。
残念ながら、それもだめです。ビジネス・エンターテインメント費用のVATについては、還付を受けられません。
顧客を接待するためイベントに出席する必要があったスタッフにも税務上で問題がありますか。
顧客向けイベントの接待など、従業員が雇用の義務の一部としてビジネス・エンターテインメントの提供に関わる場合、費用はその個人にとっては課税対象の利益にはなりません。そのエンターテインメントの一部を従業員が楽しんだとしても、主たるビジネスの目的に付随すると見なされます。
顧客2人がイベントに参加できなかったため、技術チームのスタッフ2人に参加を依頼したことがあります。この場合は税務上で何か問題はありますか。
イベントに出席したのが非営業スタッフで、雇用の義務から出席したわけではないため、そのようなスタッフの税務処理は先に申し上げた場合とは異なる可能性があります。歳入関税庁(HMRC)は、こうしたスタッフに提供されたエンターテインメントは、スタッフ向けエンターテインメントと見なして、各従業員に税金と社会保険料を課す可能性があります。
それは、技術チームのスタッフにとっては非常に不公平に思えます。スタッフのために企業が税金と社会保険料を支払うことができますか。
はい、企業は源泉徴収清算契約(PAYE Settlement Agreement=PSA)により、支払うことを選択できます。
当社は12月に全スタッフのためにクリスマス・パーティーを開き、各スタッフに30ポンド分のクリスマス・プレゼントを贈りました。これは税務面で問題ないと思いますが。
そのパーティーが毎年恒例で全ての従業員が参加でき、1人当たりの費用がVATを含めて150ポンド以下なら大丈夫です。この場合、プレゼントの費用もそれぞれ50ポンド以下なので免除されます。
エンターテインメント費用の処理はかなり複雑なようですが、HMRCはこうした費用について現在どのような見解を持っているのですか。
エンターテインメント費用に関する雇用主と従業員の税務処理は、HMRCが常に精査しています。雇用主の記録で遵守状況をチェックする際に、この問題についても常時調べています。イベントの出席者のリストや飲食代の内訳を含めて、HMRCが詳細に調べることもよくあります。正しい税務処理を適用していないと、納税不足や社会保険料の未払い、利息や罰金が発生する可能性があります。不正確な申告が数年間続くと、こうした金額は膨れ上がる場合がありますので、企業はイベントが重要かどうかに関係なく、税務におけるエンターテインメントを慎重に検討することが必要です。
チー・ラム
税務・ダイレクター
DeloitteとPwCに15年以上勤務し、駐在員税務に関するアドバイスを多くの多国籍企業に提供。英国税務のコンプライアンス、HMRCへの対応、渡英前の個人・企業税務計画なども得意とする。