第188回
関連会社投資の会計方針が決算と監査に与える影響
FRS102適用企業における原価法と持分法の実務的違い
英国でFRS102を採用する日系企業にとって、ジョイント・ベンチャーや関連会社への出資は経営戦略の一部として一般的です。会計処理上は、FRS102セクション14において主に、原価法と持分法の選択肢がありますが(公正価値評価はここでは割愛)、この選択は財務諸表の表示はもちろん、監査対応やグループ監査範囲にも大きな影響を及ぼします。
原価法を選択した場合、決算や監査対応の特徴を教えてください。
原価法では、関連会社への投資は原則として取得原価で計上され、その後の損益や純資産の変動は反映されません。貸借対照表上での評価は、減損テストによって適宜見直される形になります。この方法を選んだ場合、監査上は以下のような特徴があります。
- 投資先企業の詳細な財務情報までは監査対象とならない
- 減損の兆候がある場合は、追加的な分析や証拠が必要
- 投資先は、グループ監査の対象外となるのが一般的
したがって、実務面での負荷が比較的小さいことが特徴です。特に、投資先が未監査であったり、海外の少数持分先である場合に適したアプローチといえます。
持分法の場合の影響はどうでしょうか。
持分法を選択した場合は、投資先の損益や純資産変動の持分相当額を親会社の損益や純資産に反映させることになります。このため、監査における要件が高まります。
- 投資先の正確かつ詳細な財務情報の取得が必須
- 投資先の決算期
- 会計方針が一致していない場合は、調整作業が発生
- 監査人は、投資先の業績情報の信頼性を検証する責任を負うため、場合によっては投資先が監査済であることが求められる
- 持分比率や重要性によっては、投資先がグループ監査対象に含まれる可能性もある
特に投資先が海外の場合は、会計基準が異なったり、投資先または現地監査法人とのコミュニケーションが円滑にいかない場合も多々あり、英国側での決算や監査において大幅な作業増や日程の遅延に繋がります。
本社に提案してみる価値がありそうですね。
関連会社投資の会計処理は、数字の反映方法だけでなく、監査対応範囲やグループ監査への影響、投資先企業への波及など、広範囲にわたる負担に直結しています。日本側とも実務面の観点から十分に検討した上で方針を選定することを推奨します。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。

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