新型コロナウイルス – 監査の問題点
新型コロナウイルスは、企業の決算書の監査にどのような影響を与えますか。
会計期間の期末が2019年で年度末の決算書の作成を完了し提出しようとする企業、あるいは期末が2020年で会計年度を締めて決算書を作成しようとする企業にとって、新型コロナウイルスはこうした決算書の監査に実際に影響を与えます。監査を受ける企業が念頭に置く必要がある分野は次の通りです。
- • 棚卸
- • ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)
- • 規約の遵守
- • 限定意見の監査
棚卸はどのような影響を受ける可能性がありますか。
年度末の棚卸に監査人が立ち会うことが、監査では重要な手順です。これにより、監査人は棚卸が適切に管理されていることを確認し、見本品を再集計できます。移動やソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)に関する物理的な制限のため、立ち会いが不可能な場合があります。ただし、こうした制限の解除が始まれば、監査人が立ち会えるようになる可能性があります。
監査に対するゴーイング・コンサーンの影響には、どのようなものがありますか。
ゴーイング・コンサーンとして、継続できる企業の能力を最初に判断するのは経営陣です。監査人は、経営陣に同意するかどうか結論を下す前に、この判断を批判的な視点で検討する必要があります。経営陣はゴーイング・コンサーンの前提が適切かどうかを評価する際に、財務
諸表が発行の承認を受けた日から少なくとも12カ月後の将来に関して、入手できる全ての情報を考慮に入れます。
今後の予算とキャッシュ・フロー予測は、企業が事業を継続する能力を裏付ける証拠として、通常は経営陣が使用します。監査人は、それ
らが現在の状況でも引き続き適用できることを確認するため、基本的な前提を慎重に検討します。
一般的な不確実性の増大や流動的で変化する状況、新型コロナウイルスが一部の企業に与えている大きな影響を考えると、監査人は示されている監査リスクを慎重に検討し、それに応じて監査業務を調整する必要があります。
規約の遵守が影響を受ける可能性はありますか。
ゴーイング・コンサーンと非常に密接に関わるのが規約の遵守です。監査人は、たとえば銀行やそのほかの金融機関などとの所定の規約と、その要件を満たす企業の能力を慎重に検討します。すでに違反がある場合には、是正措置の検討もゴーイング・コンサーンに関する監査人の業務の一部となります。
新型コロナウイルスにより、監査報告書を限定付き意見にできますか。
監査人が監査報告書を限定付き意見とすることは、通常では最終手段と見なされ、企業は回避することを強く望みます。上記で説明した点、特に経営陣や財務部門がすでに能力の限界にある時期であることを考えると、監査報告書の限定付き意見を現実的な可能性として検討することができます。監査人とクライアントの間で慎重に協議し、限定意見監査報告書の影響を明確に理解することが必要です。一部の企業では現在の状況において、これが最も経済的な解決策と考えられるかもしれません。
ジェフ・ジョンソン
パートナー
BDOに9年勤務。英国会計基準(UK GAAP)や国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US GAAP)の豊富な知識を基に、監査と財務会計を専門とする。勅許会計士(ACA)の資格を持つ。