英国人はウォーキングが大好き。田舎ののどかな風景をこよなく愛する彼らにとって、自然と一体になれるウォーキングは何よりのぜいたくなのだ。記録的猛暑となった今年の夏。森の木々の隙間から差し込む日光や鳥のさえずり、身も心も洗われるような清涼な水の流れを体全体で感じてみては?
※ 今回ご紹介したスポットの中には、本格的なトレッキング・コースも含まれています。実際に行かれる場合には、事前に詳細をお調べになることをお勧めします。
フットパスって何?
英国人にとってウォーキングとは、なくてはならない生活の一部。都市部でのお手軽な散歩から、本格的なトレッキングまで、 さまざまなウォーキングを楽しむ英国人の支えとなっているのがフットパス(歩道)だ。英国中を縦横無尽に走るこのフットパス、実は法律によってその定義が明確に定められている。
英国ではright of wayと呼ばれる歩道がある。これはイングランドとウエールズに見られるフットパスのうち、法律により保証されている、誰もが自由に出入りできる散歩道のこと。例え私有地であろうとも、道は国民のものという英国人の考えが反映されている。これこそがウォーキング天国、英国を支える大切な要素なのだ。このright of way、法律上は3つに大別されている。
1. Public Footpath:歩行者のみに認められている道
2. Public Bridleway:歩行者、馬に乗っている人、サイクリングしている人のみに認められている道
3. Byway Open to All Traffic(BOAT):自動車を含め、すべての交通手段に認められている道
right of wayとして認識されるには、法律上は所有者が自ら進んで公的使用のために「献上」するということになっている。しかし実際にこのような経緯でright of wayになるケースは非常に少ないのだとか。
何でも一般人が誰かの私有地内にある道を利用していて、ある一定の期間(法によると20年間) 何のおとがめもなく使えている場合には、所有者は自分の道をright of wayとして献上したのだと自動的にみなされてしまうらしい。
近年ではスコットランドのカントリー・ハウスを所有しているマドンナとガイ・リッチー夫妻が、自宅のすぐそばまで通っているパブリック・フットパスにパパラッチや観光客が群がり、写真を撮りまくるのに激怒。裁判所にフットパスのル ートを変えるよう訴えたが敗訴した。道はあくまで国民みんなのもの、という英国人の考え方が如実にうかがえる出来事だ。
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無数の海鳥の生息地として名高いウエールズ、スコマー島。ウエールズ南西部野生トラストが管理しているこの島は、4月1日から10月31日までの期間(月曜日休)のみ一般開放されている。主な島のルートは十字型に広がっていて、短い距離の散策から島の沿岸部のほとんどを踏破する周回コースまで選択の幅は様々。ヨーロッパ北西部でも屈指の海鳥観察スポットなので、是非とも珍しい野生動物を見てみよう。
ウォーキングのスタートは、ボートの停泊所から。停泊所から南に向かってWelsh Way(ウェルシュ・ウェイ)を歩いてみよう。ここの丘は島のカモメの生活を観察できるスポットとなっている。海岸沿いのHigh Cliff(ハイ・クリフ)一帯に群がるミツユビカモメやウミガラスの大群は圧巻の一言だ。
そのままフットパスを西に向かって歩いていくと、左手にThe Wick(ザ・ウィック)と呼ばれる海岸線が見えてくる。このポイントこそが島一番の目玉、パフィン観察のメッカ。ペンギンとオウムが合体したような派手な外見と、「モゥーモゥー」という牛のような 鳴き声が特徴的な、英国本島では観察できない珍しい鳥を思う存分堪能しよう。またこの切り立った崖はパフィンだけでなく、フルマカモメを始めとする幾千もの野鳥たちの生息地となっている。
そのまま西に向かって海岸沿いに歩き続けると、島で最も壮大な景色の広がるポイント、 Skomer Head(スコマー・ヘッド)にたどり着く。天気が良ければここからカツオドリの群生地として有名なGrassholm(グラスホルム)島の姿を眺められることも。
海鳥たちの宝庫として知られるスコマー島だが、見どころは鳥だけではない。アザラシを見たいのならば、9月は特にお勧めの季節。北端のGarland Stone(ガーランド・ストーン)では、白い毛皮に覆われたかわいらしい子アザラシの授乳シーンを観察できる。そして、島の中心にある農場は1800年代初頭に建てられたという歴史的なもの。情報集めのほか、宿泊施設としても利用できる。
車:ロンドン~M4~A48~ A40~A4076~A487~B4327 ~Haverfordwest(ハーバーフォードウエスト)。そこからB4327を南西へ、Marloes Roadを右折してそのまま進んでいけば駐車場が見つかる。ボートの発着場はMartin's Heaven(マーティンズ・ へブン)、Marloes Villege(マーロス・ビレッジ)のすぐ近くだ。所要時間はおよそ4時間30分(駐車場まで)
電車:ロンドン・パディントン駅からFirst Great Western(ファースト・グレート・ウェスタン)線でSwansea(スウォンジー駅)まで約3時間。スウォンジー駅からはArrive Train Wales(アライバ・トレイン・ウエールズ)線に乗り換え、最寄り駅 Haverfordwest(ハーバーフォードウエスト)まで約1時間半。
島の貴重な自然を損なうことのないよう、指定されたフットパス以外は立ち入らないようにしよう。また島では水のボトル以外手に入らないので、食事、飲料などは各自で持参すること。
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清涼な空気に包まれたスコットランド北部の高地、ハイランド。「Loch」 (ロッホ)と呼ばれる湖や、「Beinn」と呼ばれる山々が、美しく壮大な景観をつくり出している英国でも有数のウォーキング・スポットだ。北部ハイラ ンドの山並みに一歩足を踏み入れれば、古代カレドニアの森の面影を垣間見ることができるはず。
ここBeinn Eighe地域では、2種類のウォーキング・コース、Mountain Trail (山岳探索コース)とWoodland Trail(森林探索コース)があるが、初心者向けなのは、森林探索コース。出発地点はLoch Maree(マリー湖)湖畔、Rhu Noa Bay(ルー・ノア・ベイ)近くの駐車場となる。インフォメーショ ン・ボードの地点から散策を開始しよう。すぐに木製の橋と分岐点にぶつかるので右に向かって橋を渡り、そのまま間道をたどっていく。松林の間の急坂を400メートル程登ると、最初のビュー・ポイントだ。
右方向へと間道を進んでいくと、また400メートル程で次のビュー・ポイ ントとなる。その後はケルン(石塚)まで進んでT字路で元の道へ戻り、再び 右折。A832にぶつかるまで800メートルの下り道だ。
A832を渡って右方向へと歩けば、マリー湖畔へ向かうことになる。Lochside(ロッホサイド)で右折し、木製の橋の地点へ。橋を渡って駐車場に戻ろう。
散策道に直通する公共交通機関はない。最寄り駅はA890南方向、 Achnashellach(アチナシェラッチ)駅。
車:Inverness(インバネス)から西へ向かい、A832をKinolochewe(キンロヒュー)方面 へ。キンロヒューを通過してから4キロ程で右手にマリー湖が見えてくる。駐車場は Lochside(ロッホサイド)、Beinn Eighe Trails(ベン・エイ散策道)の道標が目印。
ここの松林はすばしっこいマツテン(イタチ科の動物)の住処。マリー湖西部には他にもヤマネコやカワウソが生息している。また、湿地では多くのトンボが観察できる。その中には希少価値の高い種も。
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大人気の映画、ハリー・ポッター・シリーズでホグワーツ魔法魔術学校として登場し、その悠々たる姿には覚えがある人もいるだろうアニック城。本コースでは、この中世の城から出発し、13世紀の姿を今に残す小さな修道院跡や公園の静寂の中をゆっくりとたどっていく。また、カントリー・ライフを特集する雑誌の調査で「英国で一番住みやすい場所」に選ばれたこともある美しい街も見どころの1つだ。
まずはアニック城を背に、道が右に曲がって路地とつながっている地点まで歩いていこう。その路地に入ってからHulne Park(ハルン・パーク)の入り口までは800メートル ほど。アーチの下をくぐり、標識が見えてくるまでそのまま進む。
パスに沿って右に曲がり、小道へ。そのまままた右に曲がり、大きな木と岩が目印の二股の分岐点まで進む。そこを左折し、林を抜ける川沿いの道をたどっていこう。林を抜ける時には小道から外れないように。Monk's Bridge(モンクス・ブリッジ)までは1200メートルといったところだ。
橋からはさらに800メートルほど小道を進む。ゲートを過ぎ、木製の橋のかかったRiver Aln(アルン川)を渡ろう。川を左手に見ながら1200メートルばかり歩き、ゲートを抜けるとまた林が現れる。右手には井戸が、その背後にはベンチが見えるはずだ。500メートルほど歩くと道が2つに分かれる。
分岐地点を左へ進み、Hulne Priory(ハルン修道院跡)の下を通る。Iron Bridge(アイアン・ブリッジ)まではその道をさらに400メートル。橋を渡り、牧草地を歩いていくと、1200メートルほどで農道にぶつかる。そこを右に入れば、すぐに大きな通り、Farm Drive(ファーム・ドライブ)にたどり着くはずだ。
通りを左へ曲がって1200メートルも進めば、また他の農道がちらほら現れる。橋を渡ってまっすぐ歩いていくと、前に通過したアーチが再び見えてくるだろう。後は同じ道をたどってアニック城へ戻ろう。
車:ロンドン~M11~A14~A1(モー ターウェイ部分あり)~Anlwick(アニック)。後はA1からアニック城の標識を追っていけば良い。現地の駐車場には路上パーキングあり。所要時間およそ5時間45分。
列車:ロンドン、キングス・クロス駅から最寄り駅の Alnmouth(アルマス)駅まで直通電車で3時間半。駅からはシャトルバスが運行。
やはり、ハリー・ポッターがほうきに乗る練習をするシーンにも使われたというアニック 城の雄姿が一番の見どころだろう。また城に隣接している庭園内の巨大な人口滝「グラン・ カスケード」も必見。建設に何百万ポンドの費用が注ぎ込まれたこの滝、なんとピーク時には毎分7260ガロンもの水が流されるという。
犬を連れて行く場合はフンの処理を忘れずに!違反者にはカウンシルによって罰金が科される場合もある。
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英国が誇る名作家、ブロンテ姉妹が過ごしたヨークシャー、ハワース。荒地がひたすら続くこの地は、彼女たちの存在なくしては知られることはなかったはず。風光明媚な景色とはちょっと違うけれども、「嵐が丘」や「ジェイン・エア」を生み出したこの地で、登場人物たちの心情に思いを馳せるのも一興かもしれない。
スタート地点はアン以外のブロンテ一族が眠るHaworth Parish Church(ハワース・パリッシュ教会)から。ここからBronte Way(ブロンテ・ウェイ)と言われるウォーキング・コースを歩こう。
平坦な道を4キロほど歩くと、Bronte Waterfalls(ブロンテ滝)が見えてくる。この滝はブロンテ姉妹もお気に入りだったとか。
滝からさらに2キロほど歩くと、「嵐が丘」の家のモデルと言われる Top Withins(トップ・ウィズンズ)が。現在では建物部分はほとんど残っておらず、廃墟を化しているものの、ブロンテ姉妹探訪のコースでは絶対に欠かすことの出来ないスポットだ。「Wuthering Heights」(嵐が丘)のWutheringとは、荒れ野を豪風が吹きすさぶ様を表している。 復讐と愛情という、人間の持つ生々しい感情を余すことなく伝えきった「嵐が丘」の本質を知るには、この地に立って肌で小説世界を感じるのが一番かもしれない。
思う存分「嵐が丘」の世界を堪能したら、今度はPennine Way(ペンナイン・ウェイ)をたど ってスタート地点に戻ろう。スタート地点には、Haworth Parsonage Museum(ブロンテ博物館)がある。ブロンテ姉妹が1820年から1861年まで住んでいた家を改築したもので、実際に使われていた家具などが展示されている。
車:ロンドン~M1~M62~ M606~A6177~A647~ A644~B6145~A629~B6144~Haworth(ハワース)。B6144から右に入ってBrow Road(ブロウ・ロード)、それからBridgehouse Lane(ブリッジハウス・レーン)(B6142)を左。また左に入ってButt Lane(バット・レーン)、そしてメイン・ストリートへと右に曲がれば目的地。所要時間4時間20分。
列車:キングス・クロス駅から約3時間。リーズ 駅でスキプトン経由モーカムかランカスター、またはカーライル行きに乗り換えて約30分ほどいったキースリー駅下車。そこからキースリー & ディストリクト社のバス663、664、665、720番に乗る。
何といってもここは「Wuthering Heights」。荒地に吹きすさぶ風、そしてぬかるんだ道が広がっているこのコースを歩くには、実用的なウォーキング・シューズが必須だ。
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南ウエールズに広がるブレコン・ビーコンズ国立公園。1800メートルの山脈が悠々と連なり、数多くの滝や渓流、鍾乳洞が点在している夏場にもってこいのウォーキング・ポイントだ。心洗われるような水音を聞きながら歩けば、日頃のストレスもいつのまにか解消されているはず。
スタート地点はPontneddfechan(ポンネーゼハン)の駐車場。そこから道路橋を渡って30メー トルほど歩いたら、右折して砂利道を行く。private accessと書いてあるが、これはあくまで車用の指標なので、気にしないで歩いて行こう。
そこからMellte(メルト)川に沿って歩くと火薬場の跡が見えてくる。跡地の逆側にある道路橋を渡って目印に沿っていくと、このコースの目玉、Sgwd yr Eira(スクイド・イル・エイラ) の滝に到着する。裏側をゆっくり通って、心ゆくまでマイナス・イオンを堪能しよう。
その後は道標5を進んでPenderyn(ペンダー リン)の町に向かってひたすら歩く。Penderyn にはThe Red Lionというパブが。おいしいビールとサンドイッチを味わうことができる。ちな みにパブ近くのTower Colliery(タワー炭鉱)はウエールズで現在唯一活動中の鉱山だ。お腹がいっぱいになったら、Moel Penderyn(モエル・ペンダーリン)の山腹を歩いてスタート地点に戻ろう。
車:ロンドン~M4~A449~A40~ A470~ブレコン・ビーコンズ国立公園ビジター・センター。A470でMerthy Tydfilを過ぎたら A465のPontneddfechan(ポンネーゼハン)方面に向かう。A4109を曲がり、信号を右折する。1.6キロほど走るとスタート地点のWaterfalls(ウォーターフォールズ)駐車場に到着。
バス:スウォンジー発、Hirwaun(ヘドウェイン)行きのバスX5で駐車場まで。
列車:カーディフからNational Railで約1時間。最寄り駅はTreherert(トレヘルベルト)。
何といっても目玉はSgwd yr Eiraの滝。何と滝の裏側を歩くことができる!

ウォーキングは田舎の自然の中を行くもの、と考えているあなた。 ウォーキングの醍醐味は、いつでも、どこでも気軽に楽しめるところにある。 もちろん、ここロンドンにも楽しいウォーキング・スポットはたくさん! 今回はロンドンの代表的なパス、テムズ・パスを紹介しよう。
テムズ・パスとは?
英国で最も有名な川として名高いテムズ川は、南イングランドを流れる全長346キロの広大な川。コッツウォルズ近くのケンブル村に源泉があり、オックスフォード市などを流れて、ロンドンに到着、最終的にノアと呼ばれる河口近くに流れ着く。テムズ・パスはロンドンのリッチモンド付近からグリニッジの辺りまでを流れるテムズ川に沿って造られた遊歩道のことを指す。


Hay's Galleria (ヘイズ・ギャレリア)
ロンドン・ブリッジ駅近くには、ウォーキング愛好家の憩いの場としてデザインされた心地良い一角がある。それがここHay's。ガラス張りの高い天井が特徴で、強い陽射しを遮りながらも明るさを提供してくれるのが嬉しい。両脇はカフェやレストランが並び、散歩 の途中に喉を潤すにも最高。

Butlers Wharf (バトラーズ・ワーフ)
埠頭の端から端までお洒落なレストランが軒を連ねている。ここからのタワー・ブリッジの眺めは壮観。コンラン卿がプロデュースするデザイン・ミュージアムもすぐそこだ。

New Concordia Wharf (ニュー・コンコーディア・ワーフ)
繊細なデザインがかわいらしい小さな橋を渡った先に見えるのは、小船の上に施された見事なガーデン。水と緑のコンビネーションが涼しい気分を倍増してくれる。ここから先へは、何と普通のビルの隙間を抜けていく。


Rotherhithe(1) (ロザーハイス)
レンガ造りの新しい家々が立ち並び、川沿いには緑豊かな公園もあちこちに設けられている上品なエリア。散歩に疲れたらベンチに腰掛けて、一息つきながら川の反対側の風景を楽しもう。

Rotherhithe(2) (ロザーハイス)
堂々とそびえ立つ赤い橋までたどり着けば、そのすぐ脇には大きなパブが。川に面 した広々としたテラスで疲れをいやしてくれる一杯はいかが? さわやかな風とテムズ川岸の眺めがたまらない。


Greenland Dock (グリーンランド・ドック)
Surrey Quays(サリー・キーズ)駅から徒歩2分程、赤い陸橋の下をくぐれば、目の前には爽やかな波止場の風景が広がっている。テムズ川を望む地点まで進んでいけば、たくさんの小さなボートが係留されているのが見えてくるはず。


East Parkside(イースト・パークサイド)
North Greenwich(ノース・グリニッジ)駅から一歩踏み出せば、一方にはミレニアム・ドーム、もう一方にはデービッド・ベッカム・アカデミーという大型建造物の姿を望むことができる。テムズ・パスに合流するには、アカデミーの白い建物の方向へ進もう。

Mudlarks Way (マドラークス・ウェイ)
散歩の途中、植物園に立ち寄るのもまた一興。鮮やかな色彩の集合住宅の前には、グリニッジ・ペニンシュラ・エコロジー・パークがある。19世紀後半から始まった工業化で、このエリアの自然はすっかり破壊されてしまったとか。美しい水と生態系の復活を目指すプロジェクトの一環として、その一部がエコロジー・パ ークとして公開されている。
Thames Path, John Harrison Way, Greenwich Peninsula London SE10 0QZ
入場無料 月・火休館

Anchor & Hope Lane
(アンカー・アンド・ホープ・レーン)
グリニッジ・エリアのテムズ・パス上にある数少ないパブの1つ。川に面したテラスで 地元の人に混ざって休憩するのもいい。

Hiroshima Prom (ヒロシマ・プロム)
ここからは、上流のロンドンを洪水から守り続けている堰、テムズ・バリアを眺めることができる。ちなみにこの道の続きはNagasaki Walk(ナガサキ・ ウォーク)と名付けられているが、ネーミングの由来は不明。

Visitor Centre (ビジター・センター)
テムズ・バリアの監視所近くには、カフェ、ラーニング・センター、インフォメーション・センターと様々な設備が揃っている。ここが全長180マイル(約300キロ)続くというテムズ・パスの終着地点だ。



在留届は提出しましたか?



英国ゴースト研究家
離婚して新しい妻を娶るために英国の宗教まで変えてしまったヘンリー8世の2番目の妻。取り立てて美人ではないが、きらきら輝く漆黒の魅力的な瞳にヘンリー8世が夢中になったと言われている。1533年ヘンリー8世と結婚し王妃の座に就くも、わずか3年後の1536年には不倫の濡れ衣を着せられロンドン塔に幽閉され、同年5月19日に斬首刑に処された。アンの幽霊は、処刑の翌日から目撃されるようになった。首のない4頭の馬に引かれた馬車の中には首から上のないアンが座っていたり、誰もいないはずの礼拝堂の明かりをつけ部屋を徘徊している姿が報告されている。約450年も前から、ロンドン塔の勤務簿にはアンの幽霊の出没記録が細かく記録されているのだが、特に斬首が行われたロンドン塔内のタワー・グリーンで目撃されることが多い。
アン・ブーリンの従姉妹で同じくヘンリー8世の妻(5番目)。1540年ヘンリー8世に見初められ結婚した後も、前の恋人との付き合いが終わることはなく、1542年、ついに王の怒りを買いロンドン塔に幽閉される。処刑の際、キャサリンは恐ろしいほどの力で処刑人たちの手を振りほどき、髪を振り乱し叫びながら処刑場の中を逃げ回ったそうだ。処刑人は大斧を振りかざして王妃の後をどこまでも追いかけ回したが、3 度大斧を振り下ろすも失敗に終わり、ようやく4度目にして王妃の首をたたき切ったと言われている。キャサリンの亡霊が頻繁に目撃されるのは、ヘンリー8世と暮らしていたハンプトン・コート・パレス。許しを請いながら、廊下を引きずられて行く姿や宮殿内ロイヤル・チャペルのドアをバンバンと叩く姿が目撃されている。






ライムハウス地区に出来た1955年当時のチャイナタウン(写真左)、

在英中国人にとっての心のよりどころに
早い、うまい、安いがウリ!
チャイニーズ・エルビスとはこれいかに

1955年生まれ。長崎県出身。東京大学在学時に劇団「夢の遊眠社」を結成。92年、劇団解散後に文化庁芸術家在外研修員として1年間のロンドン留学を果たす。翌年93年に帰国後は、企画・製作会社「NODA・MAP」を設立。以降、プロデュース公演形式で数々の作品を発表し続けている。


THE BEE
舞台は70年代の日本。平凡なサラリーマン、イドは自分の留守中、こともあろうか脱獄犯に妻子を人質に取られてしまう。途端に騒ぎ立てるマスコミや警察。彼らの高圧的な態度、欺瞞に満ちたその本質に触れたイドは、次第に常軌を逸していく……。




スタッグ・ナイトとは、結婚を間近に控えた男性が、友人たちと開く独身最後のパーティーのこと。一方のヘン・ナイトは女性のみのパーティーを指す。四六時中コッコとやかましいニワトリの名を取っていることからもわかる通り、時には警察沙汰になるほどの大騒ぎとなる。このパーティーの費用を出すのは友人たち。結婚後も変わらぬ友情と、男性の場合は今後奥さんに財布の紐を握られてしまう新郎への労わりを示しているんだそう。


婚約と婚約指輪の起源は中世英国にまでさかのぼる。先程も説明した通り、中世英国の一般家庭において、独身女性は大切な働き手だった。その貴重な人材を失ってしまう家族に対して、新郎は対価を支払わなければならなかった。その対価を支払う期間が「engagement」だったのである。当時、金の指輪は通貨として使われていたため、金の指輪が対価として新婦側の両親に送られたという。これが婚約指輪の始まりと言われている。
日本では常に悩みの種となるご祝儀。そんな風習のない英国では、その代わりに新郎新婦が欲しいものを自分たちでリスト・アップし、招待客にはその中から選んでプレゼントしてもらうという習慣がある。それが「ウェディング・リスト」。英国には専門店も数多くあり、お祝いを贈る人は指定されているお店へ出向き、リスト・アップされているものの中から自分の予算に合ったものを選ぶことができる。このウェディング・リスト、予算によってピンキリで、上流階級の人たちはハロッズやセルフリッジ、お金に余裕のない場合にはなんとテスコのトイレット・ペーパー1年分、なんていうのまであるらしい。
日本では天井まで届きそうな巨大なウェディング・ケーキを見かけることもあるけれど、ここ英国のケーキは極めてシンプル。基本は3段重ね。一番下は結婚式に出席した人が食べる用、真ん中は出席できなかった人に贈る用、そして一番上は最初の子供の洗礼式まで取っておく。子供が生まれるまでという長期計画だから、日持ちするようにスパイスたっぷりのフルーツ・ケーキを使うのが英国流。日本人にはちょっと甘すぎるくらいだけど、英国人はみんなこのケーキが大好きなんだそう。
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1. 教会での結婚式
戸籍制度のない英国では、重婚を避けるために、まずは自分が独身であるという証明を役所に提出する必要がある。その上で誰も異論がなければ婚姻許可証を受け取ることができるのだ。その後挙式するのが結婚に至るまでの基本パターン。もともとローマ・カトリックを信仰していた英国が、英国国教会という独自の宗派を立ち上げたのは、時の国王ヘンリー8世が王妃と離婚するため。こんな背景を持つお国柄だけあって、他のキリスト教国と比べると、日常生活におけるキリスト教の浸透度はそれほど高くはない。また多民族国家である英国では、インド風の結婚式や、新郎と新婦の手を固く縛り付ける、ハンドファスティングというケルト起源の結婚式もある。最近は海外挙式を行う人も増えるなど、結婚式の多様化が進んでいるが、その一方で、やはり結婚式は教会でと考える人も多い。挙式と入籍が別々の日本とは異なり、挙式の瞬間が入籍となる英国では、結婚式はやはり神聖なもの。神の前で愛する人と誓いを交わしたいと思うのももっともかもしれない。

クリブデン - Cliveden
◆Hiromi Cherryさんウェディング・プロデュース会社
ハートウェル・ハウス - Hartwell House
ハイクレア・カッスル - Highclere Castle











コンサベーション・エリア



パーム・ハウスを手掛けた建築家バートンによる設計のテンペラート・ハウス。1859年に着工、途中政府による資金援助が滞るなどトラブルに見舞われ、完成までに実に30年もの月日を費やした。パーム・ハウスの2倍の面積(4800平方メートル!)を誇り、温帯植物を中心に展示している。







毎年7月の1週間だけ、ハンプトン・コート宮殿の敷地内を舞台に開催される「ハンプトン・コート・パレス・フラワー・ショー」。世界各国から参加申し込みが殺到し、700以上の出品者が自慢の花や植物を展示する。新人ガーデン・デザイナーによる展示を見たり、新種の苗を実際に買ったりするのも楽しみのひとつ。
毎年人気の部門
英国ならではの花といえば
花や植物を見るだけでなく、その背景にある英国のガーデニングの歴史に興味がある方には、「ガーデン・ミュージアム」がおすすめ。博物館自体はランベス・ブリッジ橋を南に渡ってすぐのところに建つ、セント・メアリー・アット・ランベス教会内にあり、そのいきさつがユニークだ。
英国人の庭は不思議がいっぱい
ガーデン・ノーム人形は元はドイツで発祥し、19世紀後半に英国に輸入されたもので、原型は粘土などで作られ彩色を施し、とんがり帽に白いあごひげをたくわえたおじいさんの形をしていた。しかし1960年代になると、プラスチック製で絵の具の塗りも粗雑な、質の悪いものが出回るように。それが原因でガーデン・ノーム人形は下品で趣味が悪いというイメージが付いてしまった。つい10年程前までは英国中の庭に500万体ものノーム達が見られたが、今となっては380万体に減少。売上げもブームの頃と比べて3分の1の年間300万ポンドに落ち込んでいる。現在ではデザインがハイテクであったりセクシーであったりとバラエティーに富んでいるが、よほどリバイバル・ブームでも起きない限り、売上げの減少傾向はさらに続くとのこと。 
ご存知英国の第73代首相。まだ若々しさを十分に残していた41歳の時に労働党党首に任命され、その3年後に政権を奪取。以来、9年間にわたって首相として君臨している。彼の特徴として、「神がかった」という表現が似合うほどのパフォーマンスの上手さが挙げられる。日本の政治家ではめったにお目にかかれない、凛々りりしくスマートないでたち。上品な言葉遣いと流暢な話し方に加えて、敵陣さえ笑いに誘う抜群のユーモアのセンス。そして何よりも、政策を訴える際に眩いばかりにキラキラと輝く両目。思わずうっとりして彼が何を言っても信じてしまいそうになる。
近年の英国経済の安定は、ブラウンの功績による部分が大きい。国債の発行を制限する緊縮財政で財政管理し、公定歩合を設定する権限を中央銀行に与えて市場の信頼を勝ち得た。さらにはアフリカ諸国への援助金捻出に奔走するなど、政治的貢献も果たしているのに、妖怪ぬりかべみたいなダミ声を出すものだから陰湿なイメージがまとわりついてヒーローになり切れない。
メディアからは「ブルドッグみたい」と形容される政界のお騒がせ男、ジョン・プレスコット。学生時代は落第したこともあり、政治家になる前は船乗りだったという異色の経歴を持つ。議員デビュー当時から破天荒な言動で物議を醸していたが、高齢になってもそのはみ出しぶりは衰えず、今でも国会の壇上に上れば文法一切無視の不明瞭な演説を行って、周りからの嘲笑の的となっている。ブレア首相が話している間も平気で居眠りこき、抗議目的で卵を投げつけた市民をグーで殴りつけて逆襲したこともある。こんな人が副首相なんていう肩書きを持てる英国の政治の世界って本当にすごい。そんな荒らくれ者のイメージばかりが強調されるが、実は分裂しがちな労働党を上手にまとめる親分として厚い信頼が寄せられているプレスコット。人災を起こすほど荒れたり、時には温かく党員を包み込んだり、ともかくとっても器の大きな海の男なのだ。
今、最も注目を浴びる女性政治家。イタリアのベルルスコーニ元首相の汚職事件に夫が関係していたとの報道で、一斉に脚光を浴びた。政治家としての立場も危うくなり「苦渋の選択」の末に、彼女は結局その夫と別れることを選んでひとまず解決。ああ、女にとって夫の存在ってそんなものか、と英国中の既婚男性に深い溜息をつかせた一件であった。メディアも汚職問題にかこつけて報道していたが、実際のところこの夫婦の愛憎劇の方に興味津々だったのだ。本業では2012年に開催されるオリンピックの開催地としてロンドンが選ばれたことで、オリンピック大臣にも任命されている。しかし競技場建設の深刻な遅れなどの問題が再三にわたって指摘されており、開催日が近付くにつれて今後猛烈に叩かれること間違いなし。その時に夫が再び現れて彼女を支える、なんて話も興味がある。
1997年に当選してからスピード出世を果たし、2004年暮れに教育相に任命され女性としては最年少で入閣を果たした。しかしその後まもなくして国内の学校に性犯罪の前科を持つ者が職員として多数採用されていた事実が発覚し、事態は急展開。憧れの内閣デビューを飾った途端に性犯罪者の対応に追われた。ここぞとばかりに野党やメディアは政府の管理責任を激しく追及。田舎臭さが漂うもっこりした髪に、バリトン並みの低い声を持つがゆえ不器用に映る彼女をここぞとばかりに叩きに出た。しかし彼女は毅然とした態度で記者会見に臨み、国民の理解を得ることに成功する。市民に卵を投げつけられても、ブレア首相が推進する教育改革で大忙しの毎日でも文句言わずにひたすら働く彼女。どんなにしごかれても明日へ向かって生きていく、そんな前向きな新入生を思い起こさせる。
インテリじみた話し方が少し気になる男。内相時代に犯罪者に対する厳重な取り締まりを掲げ、それまでの犯罪に甘い労働党、というイメージをうっちゃった。細身の体ながらも強気で威張っているストローだが、何せ明晰な頭脳を持つがゆえに市民の間ではすこぶる評判が良いという。イラク情勢やイランの核開発問題など、英国を悩ます中東問題が議題に上ると、ガサガサと昆虫みたいにしゃしゃり出てきては、記者会見上で顔の表情ひとつ崩さず対応する。それだけに、どうしても冷徹なイメージが付きまといやすいことも確かである。
剛毅な印象を与える北部独特の訛りと睨みを利かせた顔はやくざである。かつては共産党員だったこともあるほど豊富な経験を持つ彼には、保健相という意外な職歴がある。同ポストに任命された瞬間「保健相なんてやってられるか」と叫んだという逸話が残っており、きな臭い今のポストの方が似合うことは十分自覚しているのだろう。戦闘的なイメージばかりが際立つが、実は経済史の分野での博士号を持っている知性派。知識と風格、そしてファイティング・スピリットの3拍子揃った僧兵のような彼に集まる信頼は厚い。
雅で人畜無害なオバサマに見えて、実はかなりやり手の政界大ベテラン。かつてブレアそしてプレスコットと共に労働党党首の座を争ったこともあり、割と権力志向の強いタイプなのかもしれない。また大学時代には鉱石から金属を取り出して精製する過程を調べる冶金学者としての資格も取得しているという、根っからの地学オタクでもある。エネルギー源不足に悩む英国で再燃している原子力発電利用について論じる際に度々メディアに登場し、是非を問わない玉虫色の発言に終始してはお茶を濁している。
とっておきのいじめられキャラ。155センチの低身長に顔の面積の約3分の1を占める大きなメガネ。何を話しても必死で言い訳しているように聞こえる口調。挙げ句の果てに「無任所」なんて曖昧で中途半端な肩書きを持つ彼、もう一つのポストである労働党委員長なんて、他に誰もいないから無理やりやらされているという構図がはっきりと見て取れる。が、15歳でストライキを指揮したという実績を持つ彼を侮ってはいけない。決して人々の信頼を裏切らない彼がいるからこそ、現内閣を支援するという議員も多数いるのだ。
かつて家庭生活を優先したいがために議員デビューを遅らせたことがあるという、オヤジたちが泣いて喜びそうなエピソードを持つヒューイット。さらに保健相とくれば柔和なイメージばかりが膨らむが、実は札付きの剛腕フェミニストでもある。男性の部下をクビにして無能な女性を雇い、男女差別法に触れると訴えられて敗訴したこともあるくらいだ。また国家破壊活動に従事しているとの疑いで国内の諜報機関MI5に追跡されたこともある。現政権では吹けばほこりが飛び散る国家医療制度(NHS)について弾劾追及される毎日を過ごしている。
仙人のような白い口ひげが特徴の舌鋒家。テロ問題で揺れる英国の治安対策では、その強気な姿勢が功を奏している。というのも、2005年の同時多発テロ発生以降、IDカード導入や反テロ法成立など国家の管理強化に危機感を強めるリベラル知識人が数多くいる中、彼らを「害毒」呼ばわりして蹴散らしているからだ。かと思えば、国外追放の対象である外国人犯罪者が内務省の不手際で大量に釈放されていたことが判明し、各方面から糾弾されると結構しどろもどろだった彼。所詮は空威張りしていただけなのかもしれない。




ロンドン地下鉄駅などで配布している無料紙。1999年の創刊後、都市に住む若い人たちの間で人気を博し、今では12都市で170万部の部数を誇るようになった。地下鉄利用客が電車の中で楽しめるようにと、20分で全ページを読み通せるぐらいの平易な文章で記事が書くのがモットー。英国での出来事を浅く広く押さえるには最適の媒体。
書籍や雑誌の保存なら世界一を誇る大英図書館の一部であり、新聞に特化した資料館がここ。英国内にある新聞資料はとにかく何でも揃えてあって、調査活動には最適。館内には研究室のような暗い部屋で、マイクロフィルムに保存された過去の新聞を見つめる人たちがいっぱいいる。日曜日を除く日の10~17時開館。
金融街シティと劇場が立ち並ぶエンターテイメントの聖地コベント・ガーデンの間にある道。近年までこの通りに多くの大手新聞社がオフィスを構えていた。近くには「Printer's Devil」などという看板を持ったパブがあり、当時は飲んだくれ、かつ気骨のある新聞記者たちの溜まり場になっていたという。
プレゼントとしての新聞を扱うユニークな機関。異なる年代におけるそれぞれの日付を持った新聞をもれなく保存しているので、例えば友達の誕生日に発行された新聞をここで購入してプレゼントすることができる。自分が生まれた日に英国ではどんな出来事があったのか、誰が死んだのかなど、興味をそそられるはず。
スコットランド
スコットランド出身の有名人と言えばずばりこの人、ユアン・マクレガー。いまや英国を代表する人気俳優ユアンはスコットランド出身であることに誇りを持ち、映画のプレミアに民族衣装のキルト(お馴染みのタータンチェックのスカートである!)を着てくるほど。言葉の節々にスコットランド訛りも健在だ。一方、元祖スコットランド出身俳優と言えばショーン・コネリー。彼の場合はどんな役を演じていてもアイルランド訛りが残ってしまうということで、映画専門誌「エンパイア」の「訛りの下手な俳優」アンケートでは、栄えある1位に輝いている。
北西部
北西部にはリバプールが含まれている。こう言えば誰もが思い出すのがリバプール出身のビートルズだろう。意識的に訛りを取ろうと努力していたポール・マッカートニーに対し、ジョージ・ハリソンはかなり長い間リバプール訛りが抜けなかったようだ。ボーカルを取った時でも訛りは全開だったというから、北西部訛りを勉強したいならジョージの歌を聞いてみては?
北東部
英国内で爆発的人気となった映画「リトル・ダンサー」。この映画の主人公、ビリーを演じたのは、役柄同様北東部ビリンガム出身のジェイミー・ベル。現在は俳優の仕事で米国に滞在することも多く、かなり米語のアクセントも会話に混じるようになった。一方、先日オリビエ賞を受賞し、目下ウエスト・エンドで人気ナンバー・ワンとなっているミュージカル版では、現在も北東部訛りがしっかりと受け継がれている。映画の監督も務めた演出家のスティーブン・ダルドリーいわく、ビリーを演じる上で「完璧な北東部訛りは必須」。いかに訛りが北部の生活を描く上で大切な要素なのかがうかがえる。
北中部
上流階級臭をぷんぷん漂わせているサッチャー元首相。実は彼女、北中部リンカンシャーの労働者階級の出身だった。学生時代に徹底的に発音の特訓を受け、見事RPを話すようになったのだが、議会でも激昂するとつい本来の北部訛りが出てしまい、冷笑されていたとか。
ウェールズ
ご存知BBC1の大人気コメディ「リトル・ブリテン」。その中の人気エピソードに、自分が町で唯一のゲイであることを誇りに思い、他のゲイをどうしても認めようとしないダフィドという人気キャラがいる。このダフィドが住んでいるのがウエールズの「フランデュイ・ブリッフィ」(Llanddewi Brefi)という町なのだ(ちなみにこのllの発音はウエールズ語でも最も難しいらしい)。ウエールズ出身の有名人で、世界的に有名なのは、アンソニー・ホプキンスやキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。両者に共通しているのは、さまざまな訛りを使い分けて英国のみならず米国でも活躍していること。自分たちの訛りに誇りを持っているはずのウエールズ人が、華麗に訛りを使い分けるというのも面白い話だ。

英国サッカー界の貴公子、ご存知ベッカム。マンチェスター暮らしが長い彼だが、ロンドンの労働者階級出身のベッカムが話す英語はコックニーだ。独特の高音ボイスと相まって、実に味のある英語となっている。彼のインタビューを聞くと、確かに「three」が「free」、「another」が「anover」と聞こえる。米国映画「メリー・ポピンズ」では、コックニー を話す煙突掃除人バートの役を米国人のディック・バン・ダイクが演じた。演技自体は絶賛を浴びたのだが、訛りに関しては非難轟々。ショーン・コネリ-が1位だった「エンパイア」誌の「訛りの下手な俳優」アンケートでは、第2位に選ばれてしまった。
美しく正しい英語と認識されているだけに、テレビや映画で活躍する英国の有名人の多くがこの容認発音を使っている。昔ながらの美しい発音で言うならば、アカデミー賞女優のエマ・トンプソン。シェイクスピア作品にも数多く出演している彼女の発音は、まさに正統派クイーンズ・イングリッシュ。一方ポッシュな中にも現代的な雰囲気を漂わせているのはヒュー・グラント。もともと上流階級出身の彼はインタビューの際、皮肉たっぷりにスタッカートを聞かせて口撃してくるのでよく知られている。また米国人俳優が英国アクセントを話すことにあまり好意的でない英国人だが、「スライディング・ドア」のグイネス・パルトロー、「ブリジット・ジョーンズの日記」のレニー・ゼルヴィガーの発音は、なかなかというお墨付きをもらったようだ。
完全な河口域英語ではないが、言葉の端々にそのアクセントがみられたのが、故元ダイアナ妃。上流階級出身の彼女の英語は基本的にはRPだったのだが、「t」がなくなってしまう癖があったようで、エリザベス女王もそれにはお冠だったとか。また明晰な発音をすることで知られるブレア首相。彼はスコットランド出身だが、幼い頃から英才教育を受け、オックスフォード大学で学んだため標準的な英語を話す。通常なら完全なRP、と思いがちだが、一般市民の味方、労働党党首として会話のところどころに河口域英語を取り混ぜている。さすがは政治家、アクセントも選挙活動のうち!?














