第14回 英国で考えさせられた「真の学力」その2
読み書き・計算の基礎学力の低下がニュースになると全国学力テストの内容を変更したり、学力テストそのものの存在の意義が問われれば数年間は廃止したり、更には義務教育修了試験に当たるGCSEの試験制度を大きく変えようとするなど、英国の教育現場は実に目まぐるしく変動しています。
このような教育現場における度重なる変化は、日本との違いを感じますが、最も大きな違いは、その「教え方」と「学び方」でしょう。ここでは息子が経験した教育を基にお話したいと思います。
例えば日本の場合、算数の足し算では「1+1=○」と解答を求める教え方をしますが、英国では「1+○=2」といった具合に、解答ではなく、途中式を求めます。掛け算、割り算なども同様です。そのせいか分かりませんが、日本では小学2年生で暗記する「九九」ですが、息子たちは小学3、4年生になっても延々と掛け算や割り算を学んでいました。日本に比べて「なぜそうなるのか?」といった理論的な考え方を児童に求めているように思えます。
国語(英語)では、学齢に合わせた読み物を先生が各自に与え、一冊一冊読み込んでいきます。日本のような名作の一部分を抜粋して寄せ集めたような教科書はありません。一つの物語を読み、その感想文などを書き、また別の物語へと読み進んでいきます。学齢が上がっていくと、優れた詩や散文をクラス全員で読み、その後に児童一人一人が同じような形態の詩や散文を作り上げていくといった創作作業が増えていきました。
算数でも国語でも、決められた回答を導き出すのではなく、なぜそうなるのか、自分はどう思うのか、理論的な思考を徹底的に促すような教え方が、英国の初等教育では行われています。また、そうした教育方針によるためか、日本の通信簿のような成績表は存在しませんでした。学年末に学校から各保護者に渡される「スクール・レポート」という個別の評価報告書が通信簿代わりです。
「スクール・レポート」は、教科ごとに担当の先生からのコメントが数行書かれたもので、子供の習熟度と合わせて次年度の学習目標なども網羅されています。息子のレポートではどの教科も最後の一文は「Well Done!」といったようなお褒めの言葉で締めくくられていて、いかにも「褒めて育てる」英国らしいなと感じたものです。
もちろん、先生のコメント覧のほかに、ナショナル・カリキュラム(学習指導要領)によって定められている学科ごとの達成値も記されているので、自分の子供の進捗具合や、全国平均から見てどの辺りに我が子がいるかなどの成績も分かります。そして、学齢が上がり高学年になると、いよいよ英国式「中学受験」が始まります。
転校2年目にいただいた、その年に一番頑張った児童に贈られる 「学校賞」のカップを手にする息子