第21回 宿題のない夏休み
英国は新学年が9月から始まるため、学年末後に当たる夏休みには基本的に「宿題」はありません。例えば小学生ならば、夏休み中の絵日記や工作課題などに悩まされることもなく、開放感あふれる休みを楽しむことができます。
また、日本であれば中学受験や高校受験のための「夏期講習」で忙しいかもしれません。英国にも全くない、ということはありませんが、GCSEやAレベルなどの試験が本格的に始まる前の学齢では、日本のような進学塾通いは稀です。
宿題も塾通いもない英国の夏休みは、子供たちにとってはうれしい限りですが、この長い期間、共働きのご両親は大変です。夏休みが始まる7月20日前後の週末には、地方の高速道路が渋滞します。それは夏休みを迎えた子供たちの面倒を見てもらうため、祖父母宅に子供を預けようと車で向かう両親たちが影響していると言われています。
その証拠ではありませんが、夏休み中のナショナル・トラストはおじいちゃんおばあちゃんと孫の組み合わせで賑わいます。子供の面倒を見るのは体力がなければなかなか難しいこと。それでもゲーム機やパソコンばかりに相手をさせていてはいけないと、子供を対象としたキャンペーンが数年前からイングランド、ウェールズ、北アイルランドのナショナル・トラストで展開されています。
孫とナショナル・トラスト内を散策するおじいちゃんたち
題して「あなたが11歳9カ月になる前にやるべき50の事柄」キャンペーン。中学に上がる前に、たくさん野外活動を行ったり、新しいスキルを身につけたり、身体を使ったアクティビティーに従事するよう促しています。
ナショナル・トラストのギフト・ショップで販売されているハンドブック
具体的には木登りや虫採り、バードウォッチングなど。自然の中で楽しむ方法を、アプリやガイド本を通して、子供たちに提示しています。こうした遊びは、頭では分かっていても、実際にはどうしたらいいか、大人も困ってしまう場合が多いのですが、300カ所以上あるナショナル・トラストのプロパティー(保護資産)には、そうした手段が具体的に用意されています。
こうした物事は、経験しなければしないで、その楽しさを感じることなく成長してしまうものです。夏休みだからこそ、爽やかな英国の夏だからこそ、子供たちに自然と戯れる体験をさせてあげる絶好のチャンスです。
*キャンペーン・サイト www.nationaltrust.org.uk/50-things-to-do